風呂に関する短い話 十三

短編1
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風呂に関する短い話 十三

《十二》を、実際に試した人の話である。

ある夏、勇樹さんは自宅の風呂場で盆に余ったロウソクを使い四隅に灯した。

部屋で待機し、十分ほどで風呂場へ。

四本のロウソクすべてが、浴槽のなかに沈んでいたそうだ。

火を灯して間もなく落下したのか、ほぼ着火前と同様で燃え進んだ形跡がない。

簡易的なものではあるが燭台を用意し、ガムテープで固定してあったというのに。

風が入り込んだり、建物が揺れた訳でもない。

そもそも勇樹さんは注意深く耳を済ませていたが、物音ひとつしなかったのである。

念のために、と撮影した写真を見せてもらったが、ただロウソクが水の底に沈んでいるだけの画であった。

《つぎはカメラを設置し、動画で撮影する》

と息巻いている。

Concrete
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