怖い話をしたせいで命を落とした者がいる。
1950年ごろのイギリス、ケント州の酒場において不意に訪れた五十代くらいの白人男性。
彼はカーニーと名乗り、店主や常連客たちに《話を聞いた者を殺しにくる、呪いの老婆》の怪談を披露した。
さすがに本気にする者はいなかったが、何日かが経過し再び酒場を訪れたカーニーに、常連客たちが詰め寄った。
話を聞いた者のなかに一人だけ、数日のあいだに心臓発作で亡くなってしまった者が居たからである。
彼らはそれを《老婆のせいだ》と考えていた。
カーニーが《次は、名前がaから始まる者のところへ来るだろう》と言ったことで、とうとうパニックに。
本気で怯える者や怒り出す者が現れ、酒が入っていることもあり集団でのケンカに発展。警察がやってきたころには、カーニーは頭から血を流し意識を失っており、病院へ搬送されるも死亡した。
何人かの逮捕者を出し不幸な事件で終わるはずだったのだが、もう一転がりするのは、死んだカーニーと名乗った男は国内すべての役所に顔と一致する名簿がなく、仕事場や住所も発見されなかったことだ。
彼がどこからやってきて、なぜ身分を偽り、よりによって怪談話をしたのかは不明だが、現存するその酒場では店主が代々伝えている話だという。
作者退会会員