楓「なにか懐かしい感じがするね。」
舞「まぁ実際こうやってちゃんと記録するのは久しぶりだよなぁうん。」
咲「多分、上の興味がまたこっちにきたんでしょうね。いつまで続くか解らないけれど。」
この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。
いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓
少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞
オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。
この物語は、その3人による会話劇である。
舞「心機一転もかねてさ。なんかパッとした話ねえのかよ。こうなんかすげえやつ。」
楓「そんなこと言われても‥というか怖い話でパッとした話って何?」
咲「パッとした話かは解らないけれど、変わった話ならあるわよ。今回はそれにしようかしら。」
舞「お前は毎回なんか手の込んだ話持ってくるからなぁ‥あたしにも解る話にしてくれよ?」
咲「大丈夫よ。あんたみたいなバカにも解るように配慮はするつもり。あと話そのものは単純だから。話そのものはね。」
舞「なんか言い方気になるけどつっこまねえぞ。」
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咲「これはある男が体験したお話よ。その男はその日、都会から外れた田舎の別荘に来てたの。」
舞「別荘?今時そんな言葉聞かねえよ。そいつ大金持ちか?」
咲「それは重要じゃないからいいの。さて、男は久しぶりの自然に囲まれて、夜の星空でも見ようかとふらふら外に出るとね。こっちに向かって落ちてくる星を見つけたのよ。」
楓「ほ、星が落ちてくるの?!」
咲「まぁ実際、それは星ではなくてUFO だったのだけれどね。」
舞「おいお前このやりとりが久しぶりだからってむちゃくちゃやってないか?」
咲「これは導入みたいなものよ。因みにUFOの見た目はアダムスキー型‥わからなければみんなよく知ってる円盤形を思い浮かべてね。当然男は驚くのなんのって。しかも扉が空いて、自分と同じような人が降りてきたからもう混乱して。取り敢えず言葉は通じるのかな?とか怖いとか色んな事を考えるの。」
咲「そしたら宇宙人がね。「大丈夫ですよ。言葉は通じますから」って話しかけてくるのよ。これにも驚くのだけれど、よく考えたらUFO 作るようなやつは翻訳なんて簡単なのかなと思うわけよ。取り敢えず男は質問するのよね。まずはどこから来た?って。」
舞「そりゃそうだよな。」
咲「宇宙人は答えるの。「それが答えられないんですよね。そりゃあ、あそこのあれって嘘をつくことはできますけど、私は嘘が嫌いなんですよ」って。」
舞「‥なんか宇宙人らしくねえな。」
咲「続いて、やっぱり目的は侵略ですか?っていう男の質問に対しても、それは答えられないんですよって。じゃあ生活は?当然技術はすごいんでしょう?って質問は、それについては正解です。ですが、何がどうすごいかは答えられないんですよ。ってね。」
楓「不思議な宇宙人だね。なんかよくわからなくなってきたよ。」
咲「男はせっかくのチャンスを逃すまいと、じゃあUFOの中を見せてくれって頼むのよ。でもそれは出来ません。あれは見た目だけなんですって言われてね。」
舞「なぁ、そいつ本当に宇宙人なんか?質問の返し方がいやに人間臭いんだけどよ。」
咲「そうね。ついに男はしびれを切らしてきいたのよ。あなた本当に宇宙人なんですか?私の質問に何か答えられる事ないんですか?ってね。」
咲「宇宙人はそれに対してしばらく考えた後「あなたは神を信じますか?」って逆に男にきいたの。」
楓「か、神様?宇宙人が言う言葉じゃないような‥」
咲「男も面食らって、「まぁいるんじゃないですか?私はあんまり信じてないけど」って返したのよ。宇宙人は続けて「世界には神を信じる人がたくさんいます。でも神がその姿を現実世界に現した事はない。不思議じゃありませんか?」ってね。」
楓「確かに‥神様って私たちの前に実際に現れたこと無いよね。あれだけ信じられてるのに。」
咲「宇宙人は続けて、「理由は簡単です。イメージが統一化されてないんですよ。世界には色々な宗教があって、みんな違う姿、違う力を想像します。共通しているのは偉大である事くらい。だから、大勢の意志が統一されないと、形が定まらないんですよ。」ってね。」
舞「おい、話がむずかしくなって来たんだけど。もっと解りやすくしろよ。」
咲「宇宙人は続たの。「飛行機ってありますよね。あれはまず、大勢の人が空を飛びたいと願いましたよね。そのためには空を飛ぶための形を統一させる必要があります。細かい違いはあれど、飛行機の外観はほぼ同じ。つまり大勢の意志が飛行機を出現させたのです。」ってね。」
舞「うーん。まぁ確かに飛行機の形ってあれ以外に想像しようがねえよな。」
宇宙人「あとは電車や車。あれも大勢の人間が移動を快適にしたいという意志が結晶化したものですし、自ずと形が決まってくるのです。形があれば、それは出現するのです。さて、ここで法則が解りましたね。この世に存在するもの。それは必ず何かしらの目的があって産み出されたもの。いわば需要と供給が必ず成り立つのですよ。一方で神は需要があるものの、大勢の意志、というかイメージが統一化されていない。だから出現できないのです。この点、幽霊はまだイメージが統一化されています。だから出現しやすいのですよ。」
舞「確かに幽霊の目撃は結構聞くけど、そんな理由があったなんてなぁ‥」
咲「私はかなり筋が通っていると思うわ。とにかく、宇宙人は続けて「これで、私があなたの質問に答えられなかった理由がおわかりでしょう。科学技術が進歩して、宇宙人に対するイメージは確かに固まりかけて来ました。UFOも外観に関してはかなり固まりかけています。その意思に答えて私は出現しました。ですが、目的や技術に関してはばらばら。みんなそこまで統一できないんです。漠然となんかすごい。世界を変えそうって思うだけ。だからUFOの中にも入れないんです。ありませんからね。」ってね。」
楓「普通そんなことまで考えないよね。宇宙人って見た目くらいかな。わたしも考えたことあるの。」
咲「男は「まさか、人が宇宙人を作り出していたとは‥なんてことだ。」ってね。
宇宙人は最後に、「これで更なる問題ができます。人は需要と供給で様々なものを産み出してきました。私もそうです。ですが、宇宙人には役目がない。漠然としすぎている。こんなことがあって良いはずがない。出現したからには、なにかはっきりした役目を果たさなくてはならないのですよ。だから、私は勝手に役目を考えて動く事にしました。これは人類の意志がそうさせているのです。良いですね?」ってね。」
舞「なんか宇宙人ヤバくね?」
咲「察しが良いわね。男は納得して、何を改善するんですか?って質問するの。宇宙人は「人類の大きな問題は、世界的な人工爆発による資源の奪い合い、それと道徳レベルの低下じゃないかと思う。これを改善すれば、未来はずいぶん良くなるはずだと。」
楓「あっ‥」
咲「男は、それはすごい!で、具体的にはどうするんです?って質問するのよ。宇宙人は「このレーザー銃さ。これは命中したやつの道徳レベルが平均以下なら跡形もなく蒸発する。そうじゃなかったら、この会話をすべて忘れて無事に戻れる。な、簡単だろ?」ってね。話は以上よ。」
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舞「なんかすげえ話だったな。怖い話かはわかんねえけど。」
楓「わたしたちにも、出現した目的ってあるのかな?」
咲「まぁ。それは多分過去の話で終わってるのではないかしら?今はボーナスステージみたいなものよ。目的のない幽霊なんて。」
舞「また変なやつがこないといいけどな。」
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??「へっくし。どこかであっしの噂話が」
??「なにをしてるの?次は私のターンよ。」
作者嘘猫
お久しぶりです。熱意が復活したので投下します。書くと楽しいんですが疲れますね。楽しんでくれたら幸いです。