中編5
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イエデン

”プルルルル”  ”プルルルル”  ”プルルルル”  ”プルルルル”

「来た、、、、」

ここんところ俺んちの家電(いえでん)に毎晩電話がかかってくる。

今どき家電なんて珍しいと思うかもしれないが、大学生でアルバイトしかしてない俺は古いアパートを借りるのが精一杯だった。

値段はそこそこ安くて、その点でいえば良かった。でもやっぱり古いというだけあって 家電はあるけど壊れてるし床も少しきしむし。色々不便なことがあった。

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だけどそれなりにちゃんと生活できるぐらいの広さはあったからしばらくはここで住もうと思った。

だけど1週間ぐらいしてちょっとした異変が起き始めた。

壊れているはずの家電が夜、鳴るようになったんだ。

深夜2時ぐらい、決まって鳴る家電に俺は起こされるたびに苛立ちを覚えた。

だけどふと思ったんだこの家電は壊れている。ではなぜ鳴るのか。

俺はいつしか少しの恐怖を抱くようになった。

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家電が鳴り初めて1週間ぐらいしたとき。

変わらずかかってくる電話に俺は何故か出てしまった。

なぜ出る気になったのかは知らないが、なにかに吸い寄せられるように出てしまった。

「カチャ、、、、」電話に耳をつける、、、何が聞こえてくるんだろうと思ったのだが聞こえてくるのは”ぴーーー”という雑音だけ。

やっぱり壊れているのか、と思いつつ電話を切ろうとしたその時。

「こんばんは、、」

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少し、聞き取りづらかったが確かに聞こえた。

「こんばんは」、、と

そこで電話は切れた。

俺は得体のしれない恐怖に襲われた、それとともに明日はかかってくるのか、、、という疑問が生まれた。もし明日も同じことが起きたら俺は多分このアパートから出ていく。

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そして次の夜、、、変わらず電話はかかってきた。

俺は出ないど決めていたのにまたフラフラと電話に出てしまった。

そしてしばらくの沈黙のあとにまた聞こえた

「こんばんわ、、」

昨日よりはっきり聞き取れる。俺は怖くなり電話を切ってすぐベッドに潜り込んだ。

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次の日、俺は大家さんにアパートから出ていくと告げた。

しかし、すぐには出ていけないそうで契約した今月まではいなければならないと言われた。

俺は諦めてあと2週間ぐらいはこのアパートで住むことにした。

変わらず夜の電話はかかってきた。

そして俺はあることに気がついた。毎日電話に出るごとに声がはっきり聞こえるようになっている、ということに。これが何を意味するかはこのときは分からなかったがこの事に気がついたときはとても怖かった。

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そして今日に至る。

今、目の前で電話がなっている。

時刻は夜中の2時。

俺は明日でこのアパートを出る。俺はどうせならと思い、今日は自分から電話に出た。そして。

「どちら様でしょうか?」と聞いた。すると

「こんばんわ!!」とうるさいぐらいの音量で返事が帰ってきた。

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「ん?」

俺はここで変な違和感を覚えた。

電話から聞こえてきた声にしてはとても響いたというか。

今までは声が小さかったからわからなかったが、なにか不自然だ。

そして俺はもう一度「どちら様でしょうか?」と訪ねた。

またしても帰ってきたのは「こんばんわ!!」という返事。

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俺はこの瞬間生きている中で一番の恐怖を覚えた。

声は、電話からではなく、、、、俺の背後から聞こえていたのだ。

「こ、、、ん、、、ば、、ん、、、、わーーーー」

部屋中に響く声、、、、

俺は恐怖でどうにかなりそうだった。

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そうだ、俺はこの家に来てから家電の着信音なんて一回も聞いちゃいない。

だから家電の着信音なんて知らないはずだ。

この電話に出たときも俺が勝手に勘違いしていただけ、、、

すべての出来事が一つの線で結ばれた。

そう、最初からこの部屋に「やつ」はいたのだ。

そして俺に気付いてもらえないからか毎日声を大きくしていたのか。

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毎日出る時間も決まっていた、その時間以外は出られないのかもしれない。

だからその時間内に俺に気付いてもらうように必死に呼びかけていたに違いない。

今俺の部屋にいる「やつ」はこんばんわと話しかけてきただけで、なにか危害を加えたわけではない、存在を必死に伝えたいのならば普通は無理矢理でも伝えに来るはず、、、

毎日少しずつ声を大きくして伝えてきたのだから悪いやつではないのかもしれない。

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俺は勇気を出して振り返った、、、

いた、、たしかにそこには人らしきものがいた、、、人、「らしき」、、、ものが。

目が片方なく口は明らかに耳元まで裂けており、全身血だらけだった。

そして「やつ」は、「やっと、、、、、気付いて、、、くれた、、」

と言って俺に手を伸ばしてきた。

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俺は声にならない悲鳴を上げ必死に抵抗しようとした。

しかし「やつ」のほうが俺より力が強く、あっという間に顔を手で掴まれてしまった。

やばい、、、

「やつ」は明らかに俺の目を取ろうとしていた。

痛みが走る、まぶたを「やつ」の手が握っている。

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「やっと、、、終われる、、」

「やつ」はそう言って手に力を込めた。

俺はもう無理だと思い抵抗するのをやめて目を閉じた、、、右目に激痛が走った。

「ん、?」激痛が走った、、、?

いつの間にか目から手は離されており、目を開けると「やつ」の姿もなかった。

時計を見るといつも決まって「やつ」からのこんばんわが消える時間。

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そうか、、、時間になったんだ。

た、助かった、、。

俺はまだ少し痛む右目をおさえつつ立ち上がった。

するとどこからか生ぬるい風が通り抜け、それとともに

「あと、、少しだったのに」

と聞こえてきた。

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俺はその後、このアパートを出て、普通の生活に戻った。

後でこのアパートのことについて調べてみたが、実はあのアパートの俺の部屋。

事故物件だったらしい、死んだのは30代の女性。

死んだときは腕がなかったり片目がなかったりでひどかったらしい。

その女性が死んでからそこの部屋に住む人に重症を負わせるような事故が多発したらしい。

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一人は40代男性で、腕を片方なくしたらしい。

もう一人は20代女性で足を片方なくしてしまったらしい。

あのことを体験したあとだから言えるのだが、多分全て「やつ」の仕業だと思う。

「やつ」は自分のなくした体の部位を他の人から取ったに違いない。

そのせいで手はかなりゴツくていかにも男性の腕だったのに、足はすらりとしていた。

おそらく俺の目を取ったら最後だったのだろう。

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全部集めたら社会復帰でもするつもりだったのかなあ笑。

なんて言ってるけどあのときはかなり怖かった。

冗談じゃなく、、、

まあこのことは俺だけの秘密にしとく。

みんなもよる家電に電話がかかってきたらまず部屋の中を見回してみるといい。

そこには「やつ」がいるかもしれない。。。

Concrete
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かがりさま怖ポチandコメントありがとうございます!!
私はあまり怖い話を書くのが得意ではないだけにちゃんとかけているか心配です
今後ともペースは遅いですが怖い話を書いていきますのでよろしくお願いします!!

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