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中編6
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心霊番組

よく心霊番組で科学者などが心霊写真を科学的に解明するコーナーがあった。某大学の教授もある地方の心霊番組に呼ばれて出演した。僕は夜家族とその番組を見た。ローカルな番組であったため心霊写真を解明するコーナーで、その教授は全国放送に出たときよりいくらか横柄な態度に見えた。

番組は意外にも盛り上がった。その理由は番組側の計らいで、科学的なもの言いをする教授と心霊現象を信じているある宗教の教祖を討論させる形になっていたからだ。

教授が光の加減がどうの物理的な法則がどうのと言えば、教祖は「そう見させるように霊が仕向けているのです。あなたはちゃんと霊の敷いたレールの上を歩いてくれてますね」と煽り、番組は大きく盛り上がった。

ヒートアップしたところでCMに入り、CMが終わるとなんと教授は帰ってしまっていた。

司会「いやぁ、参りました。先生はお怒りになり帰られてしまいました。」

教祖「やれやれ。いろいろな見方ができぬと研究にも支障をきたすこともありますのに」

と言っていたから教授が帰ったのは真実なのだろう。やがてその後しばらく何かしらのコーナーをして司会の挨拶で番組は終了した。

次の日の朝テレビで「教授が失踪した」との報道があった。続いて教授の居場所が分かる人が名乗り出たとキャスターから伝えられ、その人が記者会見している様子が映し出された。昨日の教授と共演した教祖であった。面白くなってきたと家族一同テレビに釘付けになりながらその会見を見た。

記者「いなくなった教授の居場所が分かるとはどういうことですか?」

教祖「その言葉の通りです。私には分かります。」

記者「では、その証拠は?」

教祖「霊に聞きました。私が昨日番組を終えた後、帰りのタクシーで私の隣に乗った霊が教えてくれたのです。」

「バカバカしい。」とどこかの記者が言った。

教祖「今、バカバカしいとおっしゃったのはどなたですか?悪いことは言いません、早く霊に謝りなさい。」

記者「私ですが。どうしてですか?」

一人の記者が手を挙げながら発言した。カメラは一気にその記者の方へ向いた。

教祖「さあ?ご自分でお考えなさい。私は忠告したまでです。」

煽りの天才かと思うほどの返答で僕や父は思わず笑ってしまった。

記者「なんて嫌なやつだ。帰る!」

今回は生放送だったためバッチリ帰るところまで映っていた。

父「あれ?このパターン見た気がする」

僕「昨日あったな(笑)」

母「でもなんであの記者あのくらい言われただけで帰るんかな」

僕「霊の仕業なんやね(笑)」

兄「そうそうw霊やろな」

また別の記者が質問をした。

記者「帰りのタクシーで聞いたと言われましたが、霊はどこへ教授を連れて行ったのですか?」

教祖「〇〇町〇〇番〇〇です」

記者「あなたが連れ去ったということはありませんか?」

教祖「私が。ですか?それはあり得ません。昨日私はご覧になった方もいらっしゃると思いますが、テレビに出演しておりました。彼が途中退場した後も引き続き番組終了までスタジオにいましたので。」

記者「番組が終わってからの犯行という可能性もあると思いますが」

教祖「先に帰られてしまった人であり、どこに住んでどこに向かうのかも知らぬ相手である彼を追跡などどうやってできるのですか?」

記者「確かにそうですね。失礼しました。」

視聴率が相当良いのだろう、記者会見の特番まで設定された。人が一人消えたことで盛り上がる、それがテレビそれが人間なのだろう。

父「もう行く時間じゃないか、急がんとな」

兄「おれらも行かんとなー学校だりーけど」

僕「帰ってから続きどうなったか見よ。」

父は仕事。兄は大学、僕は高校へそれぞれ向かった。高校でも昨日の心霊番組を見た人あるいは今朝のニュースで知った人と「教授はどこに行ったか」「教祖はどうなのか」などで話題は持ちきりだった。

うちに帰ると兄はすでに帰っていた。夕飯前で父の帰りを待つばかりだ。やがて父が帰った。急遽放送が決まった例の教祖が出る番組を家族で見ることにした。

父「教祖は白だと思うけどな」

母「えー、そう?霊のせいにして教団を使って拉致したってのもあるんじゃない?」

僕「まぁとりあえず教祖が今朝の会見で言った場所を調査したらわかるんじゃね?」

兄「そこに教授がいたところで霊の仕業だと装った場合もあるよな」

と色々と家族で推理しながら番組が始まるのを待った。

司会「さあ、お待たせしました!今朝から話題になってSNSでも盛り上がりを見せた教授の失踪!本日は特番でしかも生中継でその真相に迫りたいと思います。最後までご覧ください」

と司会の挨拶から番組はスタートした。スタジオには教祖や霊能者、ジャーナリスト、今人気の女優や俳優。芸人などが揃った。

(本題に必要なものだけを抜き取ります。)

番組内では教祖が記者会見で言った場所を生中継で突撃取材している様子が流れた。そこは意外にも人が多くいる町だった。そこから山や森にでも入っていくのかと思ったが、そんなこともなく町の広場でカメラは止まった。

取材班「ここですね。」

(取材班をAとします)

聞き込みを開始して間もなくなんと教授が見つかった。

A「教授!教授ですよね?」

と声をかけた。

教授「ああ、そうだとも。」

A「なぜここにいるのですか?」

教授「霊に連れて来られたからさ」

教祖がさらったわけではなかったのだ。しかしまだ脅されている可能性があるためAは続けて質問した。

A「それに教祖は関わっていないのですか?」 

教授「彼か。彼は関わってないさ。」

A「では、どういった経緯でここに連れて来られたのか教えていただけませんか?」

教授「いいとも。僕の大切な妻や子どもがここに来ないためにも話すよ。」

教授「昨日の番組を見てたら分かると思うが、そもそも霊を信じていない私と霊を信じている彼とではいくら議論しても拉致が開かない。だから時間の無駄だと思い帰ったのだ。駅まで徒歩で行くのが面倒であったため途中でタクシーを拾った。」

A「そのタクシーに何か問題が?」

教授「そうだよ。困ったことに駅の方向に向かってくれなかったんだ。だから駅に連れてけと言ったが運転手は「私幽霊でございますので」馬鹿にしてるのかと思って怒鳴ってもみたが、「私幽霊でございますので」この一点張りだ。」

A「それでは赤信号で止まった隙に逃げたら良かったのでは?」

教授「できぬさ。僕は助手席に乗っていたのだが、後ろの座席にいる誰かに両腕を引っ張られ、僕のシートの下には青年がいた。その青年は下からじーっと僕の方を見ながら僕の両足を手で掴んで離さなかった。そんなわけでこの町に来るしか無かったのだ。」

A「それでは家族も心配していることですし、送りますので帰りましょう」

教授「それはできない」

A「なぜです?」

教授「ここの町の人たちは何かしらの霊を怒らせて連れて来られた人たちだ。それは町民から聞いて知ることができた。みんなどっかから変な手段で連れて来られてた」

A「いつになれば帰れるのですか?」

教授「明日だね。君と変わるから」

教授は言った通り次の日に帰還した。そもそも僕や他の家族はおかしいと思っていた。教祖が以前言った、教授の居場所はGoogleマップで見ても存在しないのだから。

ではどうして取材班は向かうことができたかって?さあ?幽霊が敷いたレールの上を走ったのではないでしょうか?

ではなぜ生中継できたかって?それは幽霊を馬鹿にしてはいけないという幽霊からの警告ではないでしょうか?

そういえば記者会見で教祖から忠告を受けた後、退場した記者の彼もまたあの町に連れ去られたのかも知れません。

Concrete
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