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中編6
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殺人罪

男「さて。始めるとするか」

咲「その男は、人通りの多い通りでぽつりと呟き、鞄の中から大きめの包丁をとりだしました。」

舞「待て待て待て」

咲「?」

舞「確かに最近そっち方面の怖い話はご無沙汰だけどよ。だからって胸くそわりい話はごめんだぜ?」

咲「大丈夫よ。聞いていて不愉快な描写は極力するつもりはないけれど‥でも最初は話を続ける上で必要な部分なのよ」

舞「まぁ‥なんだ。一応お手やわらかにな」

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咲「はいはい。男は包丁を取りだし、歩いている人に手当たり次第襲いかかったの。勿論、それを見ていた誰かが警察をすぐに呼んだものの、5人の死者と6人の重傷者が出てしまった。現場についた警察は男を取り囲んで告げたわ」

警察「さぁ!もう逃げられないぞ!大人しくしろ!」

男「はいはい。あー終わりか。ってか俺の目的は殺人じゃねえし。ほら。なにもしないから捕まえてみろよ」

楓「こういう話に出てくる犯人って、警察が来るとその場から逃げたり、悪あがきするものじゃないのかな?あと目的が殺人じゃないってどういう‥」

咲「それがこの話の肝ね。男は「死人」だったのよ。男は警察に捕まって、取り調べを受けながら話出したのよ」

舞「死人だ?!」

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取調室にて

男「あー。俺、死人なんですわ。死人?ってか死んでる。だからお前らは俺を有罪に出来ないってわけ。わかる?」

刑事A「ふざけるな!今お前は生きてるじゃないか。身分証持ってないからっていい気になるなよ。今戸籍を調べてるから、お前がどこの誰かなんてすぐに特定‥」

刑事B「Aさん!ちょっと‥」

男「ほらきた。そろそろだろうと思ったよ。いいぜ。行ってきな」

場所変わって

刑事A「あいつが誰かわかったのか」

刑事B「それが‥あの‥」

刑事A「早く言え。これであいつを裁ける」

刑事B「あの男‥確かに死人なんです」

刑事A 「何だと!?」

刑事B「あいつは10年前に死亡届けが出てるんですよ‥心臓発作で突然死。搬送された病院にも確認を取り、確かに記録が残っていました。それどころか火葬した葬儀会社にも記録が‥」

刑事A「あり得ん!他人の空似ってやつだろう!?」

刑事B「実は本人の毛髪を提出してもらって、当時死んだ奴のとDNA 鑑定をしたんですよ‥そしたら一致‥わけがわかりません。確かにあいつは死人なんです」

刑事A「目の前で生きてるじゃないか!」

刑事B「ですが、確かに戸籍上は死人なんですよ!我々にはどうする事も出来ないんです!」

刑事A「こんな馬鹿な話があるか!人を殺した証拠があり、精神もまともだ!なのに裁けないのか!」

刑事B「今、本当に昔死んだのがあの男なのか確認を徹底的にしています。また、兄弟とかならばDNA が一致するかもしれません。ですがあの男に兄弟はいません。また、親に確認してもらう方法も両親とも亡くなっていて不可能で‥」

刑事A「畜生!」

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場所は戻って

男「あ、刑事さん。わかったでしょう?俺は戸籍上は死んでる。だからお前らは俺を裁けない。甦りなんてオカルトな話は信じちゃいねーが、俺はなんか生き返った。いい気分だぜまったくよ」

刑事A「お前、兄弟とか親はいないのか?」

男「親はとっくの昔に両方とも死んだし、兄弟もいねえよ。残念だったな。あ、ついでに死因も教えてやるよ。心臓発作だ。あの日はやけ酒をして、めっちゃ胸が痛かったんだよ。そしたら急に意識なくなってな。多分そんなとこだろ」

刑事A「なぁ。なんであんな事件起こした?他人を巻き込まなくたっていいじゃねえかよ?」

男「あー。一応理由がいるのか?そうだな。死んだ人間から見たら生きてる人間がうらやましかった。こんなんでどうだ?」

刑事A 「てめぇふざけんな!」

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舞「胸くそ悪い話だな本当に」

咲「結局、どうすることもできずに警察は男を持てあましたのよ。でも殺人の証拠は残っているし、単純に無罪にするわけにもいかずに形だけ裁判を起こす事にして男を送検したわ。もっとも、これも男の想定だったのだけど」

検事A「お前は殺人を犯した。これは認めるんだな?しかもこれだけ人を殺せば我々はお前を死刑にできるんだぞ?反省とかないのか?」

男「なぁ検事さんよ。本当に俺を有罪にできるのかい?書類上、戸籍上は俺は死んでるんだぜ?俺を有罪にするってーことはよ、その書類の判断が全部違ってたって認める事になるんだぜ?診断下した医者は生きてる人間殺した事にしたのか?葬儀会社は生きてる人間燃やしたのか?お前らはそれをちゃんと確認しなかった申し訳ございませんでしたって認められるのかよ?」

男「そもそも俺が生き返ったのは何でだよ?俺自身にもわかんねーのによ。俺を有罪にするために生き返った理由をどうやって説明するつもりか?黒魔術とでもいうか?はっ笑わせらぁw」

男「俺を有罪にする方法はあるぜ?身元不明ってことにして新しい戸籍でっち上げればいいってよ。でもそんなことやっちまったら善良な一般人の戸籍を変えることになるよなぁ。つまり、誰でも殺人犯にしちまえるってことだ。これがバレたらどうなる?国民からの信頼は地に落ちる。そんな手お前らがとれるはずがないってわけ。おわかり?」

検事A「今回は逃げおおせたとしても、いずれ新しい戸籍は与えられる。そうしたら、普通に罰する事が出来るようになる。もう殺人はできないぞ!」

男「だとしても、今回の殺人は罪に問えないよな?だってその戸籍ができる前なんだから。それに、それでいいんだよ。俺別に殺人が目的じゃねえし」

検事A 「なんだと?!」

男「いずれ新しい戸籍ができる。そしたらよ。テレビ出演するんだ。ネット配信でもいい。甦った殺人鬼としてな。今はこんな世の中だから、俺に注目してるやつはごまんといる。今回の裁判で、俺の顔と名前は売れるに売れた。あの事件はいわばお膳立てよ。後はてきとーに話せばタレントとして十分やっていけるさ。金稼ぎ放題だ。全部金儲けよ。だから、どんどん盛り上げてくれよ?あ、それとも殺人犯に戸籍を与えず野放しにするか?戸籍を貰うにはあと何人殺せばいい?」

検事A「ふざけるな!」

男「あ、あんたには今のうちにサインしてやるよ。その内高くなるぜw」

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楓「ひどい‥」

舞「よくもまぁそんな方法思い付くよなぁ」

咲「裁判は前から事件が有名だった事もあり、当日は裁判所の前に記者が大勢つめかけたわ。皆が見守るなか、堂々と弁護士は出てきて「無罪」の二文字をかかげたの。現在の男は定義上、書類上死人であるため、やはり男を有罪にできず、数日後に新たな戸籍を与える事で、これからの犯罪を抑制する、との判決が出てしまったのよ。勿論、これは大々的に公表されたわ。」

男「というわけでよ。記者の皆さん。おれがあの事件の犯人にして、死人の殺人者よ。俺はもう死んでるから、有罪に出来なかったんだと。これがその顔だぜ。ほらほら。だれも今の俺を裁く事なんてできねえんだよ!」

??「ならば僕が裁く!死ね!」

咲「その時、大勢の記者の中から一人の青年が飛び出し、カッターナイフを男に突き立て喉を引き裂き、心臓をさしつづけたのよ。男はしばらく呻いた後、絶命したわ。」

??「記者の皆さん!聞いてください!僕はあの事件で妻を失いました!裁判で裁かれると何とか自分を押さえていましたが、無罪!?こんなことがあって良いのでしょうか!僕は妻の仇を打ちました!後悔はありません!」

楓「わぁ‥」

刑事A「気持ちはわかるが、君がしたのは犯罪だ。君を殺人罪で逮捕しなくてはならない」

青年「ちょっと待ってください。僕がいつ人を殺しましたか?これは死人です。死体がここにあるだけじゃないですか」

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舞「なるほど。そーいうオチかよ」

咲「いずれにしろ、万が一甦ることができた場合には、大人しく元の生活に戻るのが良さそうね」

楓「ほんとに。平凡な毎日が一番だよ」

Concrete
コメント怖い
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@むぅ

その言葉、うれしいです。次回もぜひ読んでくださいね

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@さかまる
コメントありがとう!この話から察したかと思いますが、私あんまり文書書くのが得意じゃないんですよね‥思い付いた事を勢いで書いてしまう悪い癖です。これからもがんばります

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発想は面白いと思いますが、所々日本語が読みづらく物語に集中しきれませんでした。
次回の投稿楽しみにしてます!

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