中編3
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留守番

友人のヒロシが小学生の頃に体験した話。

「ただいまー」とその日もいつものように学校から帰ってきたヒロシ。

その日ヒロシは夜まで一人で家にいなければならなかった。両親は共働きで夜遅くまで帰ってこない姉は友達の家に泊まりに行く予定だからである。

ヒロシは適当にテレビゲームをして作り置きのカレーを食べてから風呂に入った。

風呂から出たあともしばらくリビングでゲームをした。そのあとソファに寝そべり漫画を読んでいるといつのまにか眠ってしまった。

しばらく時間が経ち目を覚まし時計を見ると時刻は午前1時だった。

「お母さーん?帰ってないのー?」と呼んでみたが返事はなかった。しかし何やら二階から物音が聞こえる。

初めはズーっズーっと何かをひこずる音だった。そして急にガタッガタガタガタ!ガタガタガタガタ!と大きな音がしたかと思えば一気にシンと静かになった。

ヒロシは怖くてその場を動かずにいた。トゥルルルトゥルルルと固定電話が鳴った。ヒロシがその電話に出られるわけもなく、次第に電話は切れた。

「ただいま電話に出ることができません。ピーという発信音が鳴った後にお名前とご用件をお聞かせください」と電話のアナウンスが相手に告げた。

「ヒロシもうすぐ家に着くから夜更かしせずにちゃんと寝ておくのよ」

「お母さんの声だ」と思い、ヒロシはいくらか安心した。

少し時間が経ち玄関のチャイムが鳴った。「お母さんが帰ってきた」と思い玄関の鍵を開けに行った。その途中で何かにつまずき転びかけた。振り返って見たが何もいない。「ただいまー」とお母さんが家に入り玄関の明かりをつけた。

「きゃあ!!」とお母さんが悲鳴を出したのでびっくりして後ろを振り返ると真っ赤な目をして、手首から先の手と足首から先の足がない女が仰向けでずるずると這うようにして動いていた。

ヒロシとお母さんは家から出てその日の夜は24時間のファミレスで過ごしたと言う。ヒロシの父は家に一人取り残された。ヒロシの父はヒロシが寝ている間に帰ったが、酒に酔っていたのですぐに二階の寝室へ眠りに行っていた。

朝方、父から母へ電話があった。「二人ともいないけどどこいるの?」母は昨日あったことをヒロシから聞いたことも含めて父に言った。

「おれも朝起きてからおかしいと思ってたんだよ、顔がむず痒くて起きたんだけどな?顔をかいた髪の毛だった。おれよりも長い毛。なのにお前隣に居なかっただろ?あ、女を家に連れ込んだわけじゃないからな?」と父。

「わかってる。それが昨日お化けみたいなの見たのよ。ヒロシと私が同時に。ヒロシは二階から物音が聞こえた後、ガタガタと階段から降りてくるような音が聞こえたって言ってた。」

「借家だし家を変えたほうが良いかもな」

『そうして』

「!?」母が返答する前に別の女の声が聞こえた。「そうして」の声はヒロシの耳にそして父、母の耳にも届いた。

その後、ヒロシの家族は別の家に引っ越してからはお化けに会わなくなった。

Concrete
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