先に「取り憑かれ易い友人」を書いたが、今回はそれの続編である。
おれは佐藤の家で佐藤と一緒に心霊体験をしたためか男の霊を家に持ち込んだらしい。その霊は妹の体に乗り移ったようだったので、男が嫌がることをすれば除霊できると思いキスをしようとした。
そうすると見事に妹の体から抜け、寝るときも男が見たら嫌だろうと思うことを紙に書いて寝ると安眠できた。
しかし佐藤は家族そろって眠れぬ夜を過ごしたそうなので、佐藤と学校で会ったときにおれがした対策を教えた。
そしてさらに翌日のこと。学校で佐藤に昨夜は何事もなく眠れたかを聞いた。
佐藤「うちの家族は眠れてたよ。変な怪奇現象なかったし」
おれ「佐藤は眠れなかったん?」
佐藤「うん。風呂入ってたらシャワーの湯が水に変わるし、トイレ入れば蓋が勝手に閉まってションベン散ったし。極め付けは寝るときだったな」
おれ「何があった?」
佐藤「抱かれた」
おれ「え?は?なんで?おれがしたような対策してみた?」
佐藤「いや、せんかった。もし男の霊がゲイだったらさらに元気になりそうで怖かったから」
おれ「確かに。そう考えたらおれがしたのってかなり危なかったな(笑)」
佐藤「で、昨日寝れなかったのは怖かったからじゃなく興奮したから」
おれ「あー怖さが一周回って興奮に転じたか」
佐藤「いや、そうじゃなくてな。布団入って横向きで寝てたとき、腕みたいなのをぐるっと回された。柔らかいものが背中に当たった。」
おれ「いいな、それ。十中八九あれじゃん」
佐藤「いや、でもまだその段階じゃ分からんからしばらく起きてたら。良い匂いしてきてさ、それでちょっとずつ後ろ見たら女の子だった。」
おれ「でもお化けやん。」
佐藤「なんでおれに取り憑いたん?って聞いてみたら。好きだからって言われた」
おれ「それで眠れなかったと。でも好きなんならなんで怖がらせるようなことしてたんかな?」
佐藤「それおれも気になったから聞いたら私じゃないって言われた。じゃあ誰なん?って聞いたらゲイのおっさん。だってさー。でもそのおっさんがおれの家からいなくなったから女の子はおれに取り憑くことができたんだって。」
おれ「そのおっさんは今どこに?」
佐藤「知らんけどさ、でもお前がうちに来た日に怪奇現象が起こって。お前は自分の家に帰った後、妹に男の霊が取り憑いたと思ったんよな?」
おれ「あ、ヤバいな。まじで困る。キスしようとしたとき妹の体から出たのは除霊できたというよりおれの方に取り憑くためか。」
佐藤「かも知れんよな。しかも寝取りに来ても良いって書いて寝たらしいし危ないと思う」
おれ「あー寝れんやん。今日。終わったわ」
佐藤「いや、大丈夫だと思うよ」
おれ「なんで?」
佐藤「寝取りに来ても良いとまで言われて、何もしなかったってことはお前に需要はない!」
おれ「あーなんやろな。安心するし嬉しいけどなんかこのこう悔しいみたいな気持ちもある不思議。それならなんで妹の体から出たんだろ?」
佐藤「それは単にお前とキスしたくなかったんだろな」
おれ「じゃあそもそも妹の体に取り憑いたのは?」
佐藤「おれの推測だけど。お前の家の家族構成は両親、お前、妹。それでゲイの霊はお前のお父さんに目をつけた。そこで妹の体に入って妹の体を介して快感を得ようとした。」
おれ「こわ!キモ!そのゲイ殺さんといけんわ。」
佐藤「いや、もうすでに霊だから殺せんけど。とりあえずお前が家族を救ったんだよ。そのゲイの霊からしたらお前からキスをされそうになったことは相当の恐怖だったんだろな(笑)」
おれ「そっか。そういえば佐藤は女の子に取り憑かれたままで良いん?」
佐藤「うん、良いよ。」
おれ「嫌じゃねん?」
佐藤「むしろ嬉しい。彼女できたみたいで。悪させんといてなーって言ったらわかったって言ってたし。幽霊の特性上、いろんな人の目があるとこには出れないらしいし。」
おれ「それはなんで出て来れんの?」
佐藤「出て来れんよりは出て行きたくないんだってさ。街中だと人が多いからそれだけ幽霊の数も多いわけ。幽霊の中にもナンパとかレイプとかセクハラみたいなのあるんだってさー。だから浮遊してフラフラするよりか、地縛霊として決まったとこにいたり誰かに取り憑いてその人の中に身を隠した方が良いんだそう。」
おれ「一番怖いのって人間じゃね?霊になっても犯罪紛いのことするやつもおるなんて。」
佐藤「そうよな。生きてる人は取り憑かれるのは怖いし迷惑だろうけど。幽霊も命懸けで取り憑き先を選んでるんかもな。死んでるのに命懸けって変だけど(笑)それで、おれに取り憑いた子が言うには一人に取り憑かれてたら他の霊からは取り憑かれないんだって。だからおれはこの子に取り憑かれて幸運だったんかも知れん。」
おれ「霊から好かれるってのも案外良いんやろな。でも佐藤さ、もしその取り憑いた子がものすごいブスだったらお祓いしに行くだろ?」
佐藤「するよ。」
やはり一番怖いのは人間かも知れないと思ったおれであった。
作者やみぼー