遠い遠い昔。
もうだれも覚えていないはなし。
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ほんのりと土のかおりがして、少しじっとりした体を風が優しく包んでくれる。
長い山道を手荒な運転でどんどん進むものだから、途中途中で気分が悪くなることを除けば、とっても楽しみな道中だった。
「落石注意」の看板を横目に、山を切り開いた川沿いの道をゆくと、ぽつぽつと民家が見えてきた。
あのガソリンスタンドを通りすぎれば、やっと私のおじいちゃんちである。
家族みんなで祖父との一通りの挨拶を終え、私は好奇心を満たすには十分すぎる山に向かうことにした。
でもまだほんのちょっと一人で行くには怖くって、両親と話し込んでいた祖父を誘い、一緒に行くことにした。
お気に入りの場所を一通り巡った私たちは小学校で遊んでいた。
途中トイレにいきたくなって、祖父に隠れて、学校の裏側でそそくさと済ませた。
帰りがけ、行きは急いで気にしてなかった看板が目に入った。
「事故多し、登山関係者以外立ち入り禁止」
あったっけ?南京錠がかけられていたが、ひょいと乗り越えられそうだった。
行ってみたい。
行ってみたい。
行く。
「戻れ!」
その声にびっくりした私が振り返ると、おじいちゃんが立っていた。普段温厚な祖父からは想像できない怒声に私はすっかり萎縮してしまい、
「ごめんなさい、なんか気になっちゃって」
とだけ謝った。
でも私は何かに呼ばれている気がしたし、なんならあの山道のあの奥の林にいた気がする。ヒト?動物?何か分からないけど何かが。
すっかり日が暮れたので、私たちは大冒険に満足しながらおうちに帰った。
遊び疲れた私はご飯を一杯食べてぐっすり寝てしまった。目覚めたときには、もう12時だったがなぜか家にはだれもいない。外がざわざわしている。
「沙也ちゃんが昨日の夕方からいないらしい」
「どこいったんだろなー、だいぶ探したけども」
捜索も虚しく、また日が暮れていた。
というのも私は窓辺の太陽にうつつを抜かし、すっかり寝てしまっていた。
また何やら外が騒がしくなってきた。
「これだけ探して見つからんってことは、、」
「そんなことを考えるな!第一あそこにはちゃんと。。」
「やったんだよな、根布さん?」
村人の視線は一斉に「根布」という女に注がれる。
「おまえんとこの娘はあれじゃったろ」
「村の掟じゃ、供えてきたんだろ?」
・
・
・
「ごめんなさい」
女は小さな声でそう言うと、泣き崩れてしまった。
しかし泣くことなど全く許されず、村人から罵られ、だれも止めることなく、ただただ殴る蹴るの暴行が加えられた。
「お前の娘をやらんかったから、沙也ちゃんが食われたんじゃ!」
「いっそお前も食われてしまえ!」
そのうちすっかり動かなくなってしまった肉塊を村の長老と若い衆3人ほどで山に担いでいくことになった。
村人はぞろぞろとそれについていった。口々にぶつぶつ何か言ってるが、よく聞き取れなかった。
その道は、なんとも見覚えがある道だと思ったら、だって昨日私たちが通った道。あまりに一緒で、何処に連れていくのか心臓をばくばくさせながらついてくと、小学校についた。
すると肩をぽんと叩かれ、
「もう帰ろう」
祖父は私にそう告げて、手を引っ張った。
あれが何処に行くのかすごく気になったけど、祖父の有無を言わせぬ迫力と手の力の入り具合に私は抗えず、家に帰ることになった。
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ガチャン
錠を外し、暗いじっとりした山道を進んでいくと、あいつはいた。
こちらを見ると、何とも気味悪くにやりと口一杯に笑った。
「沙也ちゃんを食ったのか」
何かは少し頷いた。
「これで勘弁してくれ、これからは欠かさず持ってくるから、村には来ないでくれ」
何かは黙って見つめていた。
「頼むぞ」
そう言って肉塊がどさっと地面におかれるとたちまち、
ゴキッブシャッ
シュッージュル
ムシャグチュ
バリバリボキッ
聞くに堪えない音が静かな山中にこだました。
だから抗えないのだ。
だから捧げるしかないじゃないか。
だったらどこから選ぶのか。
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いつにもなく静かな山あいの夜はいっそう更けようとしていた。
なんだか怖いこともあったけど、おじいちゃんとも楽しく遊べたし、今回も良い思い出ができた。
明日もまた沢山あそびたい。
バリン
ガラスが割れたみたい。
作者さかまる
こんにちは、またもや思い付きで書いてしまいました。
アイデアはそこまで悪くない気がするんですが、文章が稚拙すぎて自分でも頭を抱えてしまいます。
あそこにいたあいつは何だったのか。
選ばれたのは誰だったのか。
こんなこと昔の話ですよね。