兄ちゃん、怖い話集めてるんやって?
そうさなあ、怖いかどうかわからんけど
一つ妙な体験なら俺もしたことあるぜ
nextpage
俺がまだホントちっちゃいころ『鋼鉄ジーク』ってアニメやっててな、ヒーローがジークに変身するときにな。
こう、拳と拳を合わせてガッキーンって効果音出して変身するわけよ。
それに憧れてたんかと思うんやけど
爺ちゃんと一緒にテレビでのど自慢かなんか見てたとき、上手い人が歌ったときは爺ちゃんが拍手するもんだから
俺は拳と拳で拍手してたんよ
nextpage
でも、やってみるとわかると思うんやけど、なんか違和感あるんよね。当たり前か
だからか自然とそのままクルッと手を回して手の表同士で拍手するかっこうに変わっていったんよ。
いや、無意識、無意識、なーんもかんがえんとそうなってたんやな。
でもそれ見て爺ちゃんに「こら!裏拍するな!」って怒られたんや
nextpage
俺はよくわからんかったけど、爺ちゃんに怒られたってことだけでビビっちゃって、多分大泣きしたんやと思う。
nextpage
そのあと「清めんといけん…」とかなんとか言われながら爺ちゃんに抱えられて台所でめっちゃ手洗われたのを覚えとる。
ガシガシ、ガシガシ洗われていてえけどなん
か自分が失敗したんはわかってその時には泣き止んでたと思う。
nextpage
前置きよ前置き、そっからだいぶ時間が飛ぶけど俺が大学行ったったとき
確か、ミスチルとか流行ったったな
俺は大学生の仲間内でカラオケ行っとって、
それこそ『名もなき詩』歌った気がするわ
nextpage
俺こう見えてもけっこう歌上手いんやで
偽桜井って言われとったわ
だからか、皆んなノってくれて手拍子してくれるわけよ
その中に1人俺に向かって裏拍手しとったやつがおってな
多分おんなじゼミってだけであんま話もしてなかったヤツなんやけど
nextpage
爺ちゃんのこともあるから、なーんか嫌な感じがしてな
でも、あんま話もせんヤツにいきなり裏拍手やめーや、っていえんじゃろ
しゃーなしにふざけたフリして近くの友達と肩組んで歌いながら、ソイツとの間で盾にしたんよ
nextpage
そんで妙やったんわここからなんよ。
盾にしとったヤツとはそこそこ仲良かったから大学行くたびに会って話すくらいはあったんじゃけど、そいつカラオケの後から背中がいてえいてえ言うてな。
日を追うごとにだんだん痛みが強くなってきたっていうんよ。
nextpage
最初はしょーもないことで痛めたんやろ、って気休め言ってたんやけど
やっぱりなんか気になってなあ
爺ちゃんに電話して聞いて見たんよ
nextpage
そうすると、爺ちゃんは
「神様にする拍手は"かしわで“言うてな普通の拍手じゃ、裏拍手は神様と反対に向けて拍手しとるからようないことが起こるにきまっとるわ。」
ゆーて、どないしょ
「とにかく清めんと、逆ならその逆じゃ、神様にすがれ、お前のせいなんやからちゃんと面倒見いよ。」
nextpage
まあ確かにそいつの知らん内に盾にしてもうたし、ちょーっと罪悪感あったから
大学の民族学の先生とかに強そうな神様教えて言うて、近くじゃったら香川にあるから
そいつにはうどん食べに行こ!言うてレンタカーでその神社まで行ってきたんよ。
nextpage
けっこう雰囲気のある神社やったわ、近くに湧き水みたいなんあるし山やし
なんやかんや言いくるめてそいつとついでに俺もお払いしてもらった
nextpage
そっからスッと背中の痛みが消えたみたいで
そいつは俺にすげえ感謝すんのよ
「わざわざ俺のためにありがとう」ってな
なんかいたたまれんけど、わざわざ盾にしたこと言う意味もないやん
そいつは今でもちょいちょい会うくらいには仲良いけどな
nextpage
…ん?カラオケで裏拍手してきたヤツ?
そうよ!それよ!
わすれとったわ、
ソイツ俺らが香川から帰ってきたときには自殺しとったんよ。
nextpage
今となってはソイツが故意にしとったんか、なんとなくやってしもうたんか、もうわからんけど
とりあえず、裏拍手はしたらいかん。
それだけはハッキリしたわ
どや、参考になったやろうか?先生
作者春原 計都