暇つぶしに近所を散歩していたら、鳥居の上にいた一羽のカラスと目があった。
なぜか一目見た瞬間、このカラスはひどく弱っていて、もう間もなく死んでしまうだろうと直感でわかった。
カラスは俺の気を察したのか、グアアと小さく鳴き、弱々しく黒い羽を広げて空に飛び立った。
と、次の瞬間。突如、空の一部が大きく裂けて、カラスがそこに呑み込まれていった。
グエエエ!!という断末魔が消えていく切れ目から響いた次の瞬間、少し離れた何もない空間から今のカラスよりも一回り小さなカラスが飛び出してきた。
カラスは空を2、3回旋回したあと、目の前の鳥居の上にちょこんと脚をついた。
カラスはジッと俺をにらみつけると、グアア!!と元気に鳴いて飛び去っていった。
俺はしばらくそこから動けずにいたが、カラスににらまれた瞬間、頭の中に響いてきた言葉「今見た事は忘れろ」に従って、これから先、何があっても、たとえ酔っぱらったとしても、決してこの事は誰にも言わないでおこうと決めた。
了
作者ロビンⓂ︎
綿貫一様作
カラス2
http://kowabana.jp/stories/33359