高校の門の前をチャリで飛ばす
少し暑くなってきた
駅前の人混みを縫うように進む
ははっ、一風堂はいつも行列だな
とにかく帰路を急ぐ
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「はあ、はぁっ。」
一心不乱に自転車を漕いでいると細い歩道の向こうから一台の自転車がやってくる
やばい、ぶつかる。こんなところでトラブルは困る。そう思って向こうを避けるように 植栽に食い込むように自転車を停めた
そのとき、すれ違い様に、自分を見た
…気がした
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急がなきゃいけないのに、足を止め、二度見してしまう
すごいスピードで遠ざかってまるで豆くらいの小ささになってしまった
…いけない、急がなきゃ
再びチャリを漕ぎだす
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もうあと少しだ
あと少しで家に着く
でも、どんなに急いでいても赤信号は守らなきゃいけない
4車線が交わる大きな交差点で赤信号を見ながら、息を整える。
間に合うかな、うん、たぶん大丈夫
右手の腕時計をチラとみた
キィィ、隣に自転車が止まる音がした
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息を呑んだ
まだ呼吸が整わない、むしろ息が上がる
右側に停まった自転車を下からゆっくり見上げる
靴、制服のズボン、学校指定のバック、バックについてるキーホルダーまで、彼、マサルと同じものだった
驚愕のまま顔をみると、いきなり前に動いた
ハッと信号機を見るとすでに青に変わっていた
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今度は逆だ。追う方になった。変に冷静になってそんなことを考えた。
少し放心して、すぐに追いかける。
目的地は同じ、自分の家、それは確信していた。
あせるわりに前に進まない
やっと家に着いたとき、玄関の引き戸が ガシャンと閉まる音、「ただいまー」という高校生くらいの声が聞こえたところだった
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同じアイツはウチで何をするのだろう
そう考えたとき、『ドッペルゲンガー』という単語を思い出した
恐怖で家のドアに手をかけるのもためらわれる
いやだ、いるのか、同じ姿形の、ヤツが
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怖さを拭うように声を張り上げた
「ただいまー!」
乱暴にドアを開けドタドタと家に入る。
ウチは玄関を入ったらすぐにリビングダイニングに直通している。
入ってすぐにダイニングのテーブルと奥に壁に向かったキッチンが見える
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「マサル、何どたばたして帰ってきてるの!?」
キッチンで母親のような人物がまな板で野菜を切っていた
まだ動悸が止まらない。冷静になり切れていないのが自分でわかる
「別にオレ、なんもしてねえよ。」
お気に入りの、いつも座っている、オレのソファにそいつは座っていた
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交差点で見たのと同じ、同じ制服、同じ髪型、同じバックだった。
母親?はどうみてもそいつに話しかけている
なんでこっちを見ないんだ!
でも、そいつはコッチを見た
ニヤッとした粘着質な笑いを浮かべながら。
そしておもむろに右手を自らのあごの下にあてがうと
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ベリッ!
顔面をめくり上げた!
そして一言、
「パパだよ!びっくりしたかな、ははっ」
その顔は完全にパパのものだった
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自分もなんだか安心してしまって
「パパかぁ〜、パパなのぉ〜?びっくりしたよ〜、帰る途中であったでしょー、言ってよ〜もう♡」
へんな言葉づかいになってしまった
すると、トントンと背後から肩を叩かれた。
そこには母?がいて
「私も…」と言うと、おもむろに右手を自らのあごの下に掛けた!
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ベリベリィ!
右手でラバーマスクをまくり上げるとそこには…
「えーと、どちら様ですか?」
知らない顔だった
すると、
マサルに化けていたパパが
「ははっ、私の愛人だよ。マサル。どうだ、美人だろう。」
などと言い出した
マサルに大事な話があるから早く帰ってこいと言っていたのはこのことなのだろう
でも、ダメだ
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「じゃあ私も…」
私はそう言うと右手でおもむろにラバーマスクをまくり上げた!
「アナタ、どういうつもりなの?覚悟はよくって?」
私の顔を見た2人は同じように青ざめた
まったく、わたしから逃れると思うなんて
身の程を教えてあげなくっちゃ♡
作者春原 計都
ギャグです