夜、BGMを聴きながら寝ることを習慣にしていたことがある。イヤホンでだ。
環境音やクラシックなどのBGMが好きで、現実から遮断され、安眠できる気がしていたし、実際そうだったと思う。
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ある日、水中の環境音を聴きながら眠りについた。
悪夢を見た気がする。苦しかった。起きると、イヤホンが首に巻きついていた。
これか、と、苦笑した。寝返りしたときに巻きついたのだろう。まったく、実に爽やかな朝だ。
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次の日、森の中の環境音を聴きながら眠りについた。
悪夢をみた。誰かに首を絞められている。
起きると、イヤホンが首に巻きついていた。
まあまあ、嫌な気分だ。皮肉も出てこない。
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その次の日、イヤホンをつけて寝るのをやめた。BGMを流していたタブレットも電源を落とし、イヤホンもそこに巻きつけておいた。ベッドサイドの机に置いてある。
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久しぶりに無音で寝た。安眠できたと思う。
悪夢も見なかった。
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朝、首にイヤホンが巻きついていた。
作者植田良平