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短編2
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におい

ひとくちに霊感といっても色々ある。

霊そのものが見えるという人もいれば、なんとなく気配を感じる、あるいは姿は見えないけれど声が聞えるという人まで様々だ。

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私の場合は、においだった。

近しい人が亡くなると、そのにおいを嗅ぎ取ることができるのだ。

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ピアノの先生が事故で亡くなったときは、一日じゅう彼女の香水のにおいがしていた。

学生食堂でカレーライスを食べながら「なんだか機械油みたいなにおいがするねえ」なんて話していたら、町工場を経営する祖父が心臓発作で倒れたと報せがあった。

徳島に住む従弟が火事で焼け死んだときには、あまりの悪臭にしばらくご飯が喉を通らなかった。

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とにかく場にそぐわない不自然なにおいを嗅ぎ取ったら、それは虫の知らせに違いないのだった。

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その日は、穏やかな小春日和だった。

授業中うとうとしていると、なにやら良いにおいが漂ってくる。

ふんわりと甘い、お菓子のようなにおいだ。

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調理実習でケーキでも焼いているのかな?

それとも裏のパン屋から風に乗って運ばれてくるのだろうか?

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なんだか得した気分になり、大きく息を吸い込んだ。

とたんに涙がこぼれてきた。

なぜだろう、無性に懐かしいような、優しいような、それでいて少し切ないような。

おそらくそれは、私のよく知るにおいに違いなかった……。

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授業を終えて帰宅すると、なんだか家の中がバタバタしていた。

見ると、母は目を真っ赤に泣き腫らしているし、

父もどうやら会社を早退したらしく、険しい表情でどこかへ電話をかけていた。

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なにごとかと尋ねると、先年嫁いだ姉の生後まもない娘が亡くなったのだという。

育児疲れのため乳をやりながらつい居眠りしてしまい、窒息死させたのだった。

Concrete
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