これは作り話です。
僕の住んでる村は、とても小さな村で、ほとんどの人が知り合いだ。
村の人の中でも、特に仲のいいタクシィおじさんと呼ばれている60代前半のおじさんがいる。僕は村の中の小さな中学校に通っているのだが、下校中、時々そのタクシィおじさんが「タクシィしてくかい?」と道端に止めてある軽トラの窓から話しかけてくる。仲がいいし、みかんやレモンもくれるし、色々な母親から「優しい」や「親切」など評判も良かったので「不審者」とは思っていなかった。
そのため、タクシィおじさんがいるときにはいつも家まで送ってもらっていた。実際、タクシィおじさんは不審者ではない。
ある日、いつものように下校していると、道端に軽トラが止まっており、窓から「タクシィしてくかい?」といつもと違った、少しかすれ気味の声で話しかけてきた。
しかも額には冷えピッタンがあり、マスクをしていた。僕はいつもと違ったタクシィおじさんに少し驚いて冷えピッタンとマスクのことについて聞いてみた。風邪ひいて熱がでたのだが、症状がそんなに重くないから外の空気を吸おうと外に出ていたとのこと。
僕はおじさんに「お願いします。あとお大事に」と一言いうと軽トラの助手席に乗車した。
しばらくして、家が近づいてきたので降ろしてもらうようにおじさんに言ったのだが、返事はない。
僕は聞こえなかったのかと思い、もう一回降ろしてもらうように言ったがまた返事はなかった。その繰り返しを4、5回くらい繰り返したとこで僕は焦ってきた。タクシィおじさんの顔を覗き込んでも真顔。
僕はここでタクシィおじさんは不審者なのではないかと思った。
でもそんなはずない。
そう信じたくない。
今まであんなに優しかったタクシィおじさんが不審者だなんて.........
僕の頭を悲しみという感情が暴れている。涙が頬を伝ってポロポロと溢れてきた。
大好きだったのに......... 不審者なのかな........
そうしている間にも、とっくに家は過ぎており、山道に差し掛かっていた。
そして、おじさんは何を考えているのか、急カーブに突進し、そのまま軽トラは
shake
「ガシャん!」
という音を響かせて大破した。僕はなんとか助かったが、ここは夕方の山道。もうじき夜がくるだろう。
ここからが問題だ。
体力はかなり消耗しており怪我も負っている。
もうおじさんのことなんか頭になかった。
頭の中で家族の顔や近所のおばさん、学校の友達の姿...........を思い描きながらひたすら山道をもと来た方向へ走った。
そして、家の前の道まで来たのだが、人影が見える。どうやら僕の名前を呼んでいるようだ。その人影だけではなく、村のあちこちから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
行方不明になった僕を探していたのだ。
その時、心から安堵した。
僕はその人影の胸へと飛び込んだ。
「見つけたぞー!大丈夫かい?」
聞き覚えのある声でそう話しかけられた。
それは間違いなく
タクシィおじさんの声だった。
次の瞬間、僕はタクシィおじさんを突き飛ばし、自宅に駆け込むとピシャリ!と引き戸を閉め、鍵をかけた。
僕が見つかったという話を聞いて母親と父親が涙を流して帰ってきた。そこからはすぐ寝てしまった。
次の日、近所で会うおばさんやおじさん、学校の先生などに感謝を伝えた。
やがて下校時刻となり、通学路を歩いていた。
「タクシィしてくかい?」
急に声が聞こえた。背筋に冷たいものが走る。急いで帰宅し、昨日のタクシィおじさんのことを母親に全て話した。
しかし、話がかみ合わない。
タクシィおじさんは昨日の夕方、家でテレビを見ていたらしい。まだカーテンを閉めておらず、画面に集中しているタクシィおじさんが見えたという。
そこで僕は母親に冷えピッタンはしていたのか聞くと、していなかったとのこと。
あの時のおじさんはタクシィおじさんではなかったことに気づき、ある日僕はタクシィおじさんに謝った。
しかし未だに「タクシィしてくかい?」という言葉が聞こえると、トラウマとなったあの日を思い出し、一瞬寒くなる。
長文失礼しました。
作者ミライ
中学生なりに頑張って作った話です。文章も下手です。