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中編3
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ろくろ首

とある友人に聞いた話。

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彼女は数年前、とある学習塾に務めていた。

小中学生対象の、進学塾というよりは苦手補強のための塾だ。田舎だったこともありのんびりとした雰囲気で、夏には肝試し大会、冬にはクリスマス会が催されるような、家庭的な塾だった。

職員は、塾長を含めた女性ばかりの四人。女性同士の付き合いにありがちな面倒臭さも多少はあったが、和気藹々とした雰囲気で友人は気に入っていたという。

あるとき、その塾に五人目となる職員が入ってきた。やはり女性で友人より少し年上だったのだが、この新入りがなかなかに曲者だった。

新入りは悪い人ではないことはすぐにわかったが、頓珍漢というか間が抜けているというか、やることなすことがどこかズレており、それゆえの失敗も多かった。なんでそこをそうするの? と首をかしげることが多々あったそうだ。

しかしそれ以上に他の職員が頭を悩ませたのは、とにかくなんでも知りたがり首を突っ込んでくる、という悪癖だった。受け持ちでない授業や生徒のことだけでなく、塾で過去に起こったこと、生徒や職員の家庭の事情、職員同士のたわいもない雑談の中身まで、新入りの耳に届く範囲の話題には、呼ばれもしないのにすべて首を突っ込んできて、求められてもいない、しかもどこかズレたアドバイスをするのだった。

他の職員がどんなに眉を顰めても、「ちょっと、この話はあなたは遠慮して」とはっきり言われるまでは決して引き下がらなかった。いつしか新入りは煙たがられ白い目で見られるようになったが、本人はまるでそんなこと意に介さず、あいかわらずどんな話題にも首を突っ込み、わかっているのかどうかもわからない相槌を打っていた。

そんな新入りだったが、半年ほどで塾を去ることになった。なんでも夫の転勤で引っ越すのだという。おおっぴらには言わないが、友人を含めた職員全員が、ホッと胸をなでおろした。

「短い間でしたが、お世話になりました」

新入りはそう言って、職員一人ひとりに別れの品をくれた。それは定番のハンカチだったが、包装紙の中には小さなメッセージカードも入っていた。

仕事終わりに同僚と二人で、何気なくそのメッセージカードを開こうとしたときだ。

「ひっ」

同僚が小さな悲鳴を上げ、カードを取り落とした。友人は自分の足元に落ちたカードを拾おうとして、目を疑った。

「彼とのデート、○○モールはやめたほうがいいですよ。保護者もたくさん来てるんだから」

そう、カードには書かれていた。

ありがちな話だが、同僚は生徒の保護者と浮気をしていた。友人はそのことを本人から相談されて知っていたが、他は誰も浮気のことは知らないはずだった。

秘密のデートを、新入りはどこかでこっそり見ていたのだろうか。偶然に? それとも──

友人は恐る恐る、自分のメッセージカードを読んだ。そして、先ほどの同僚と同じような悲鳴を上げたという。

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「カードには、職場はもちろん家族にも話したことのない秘密について、アドバイスめいたことが書いてあったの。ゾッとしたわ」

友人はそのときのことを思い出したのか、恐怖と嫌悪感から眉を寄せた。

「新入りさんは、どうしてみんなの秘密を知っていたのかな?」

「そんなの知らないわよ。でも他の職員のカードにも、同じようなことが書かれていたみたい。そのあとは、もう大変。みんな疑心暗鬼でギスギスして、結局半年後には職員が総入れ替えになってたわ。もちろん私も辞めたわ」

それはそうだろう。私は頷いた。

「ところで、暴かれた秘密ってなに?」

「言うわけないでしょ」

私の問いかけを一蹴した後、「でも」と友人は続けた。

「あのとき書かれてたアドバイス。あれはびっくりするくらい的確だったわ。後になって、正直助かった。仕事はぜんぜんできなかったくせに、そういうところが余計気持ち悪いんだけどね」

友人はそう言って身震いした。

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なるほど。ろくろ首のタイトルに納得しました。こんな人が近くにいたら怖いです😱

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