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短編2
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ヤモリの鳴き声

とある知人に聞いた話。

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彼は代々続く農家の五代目だった。高齢化と過疎化の進む田舎で、耕せなくなった田畑を借り上げたり買い取ったりし、米麦大豆と手広くやっていた。

家は田舎の豪農らしく広い敷地内に古い蔵や納屋があり、彼が結婚してからは若夫婦のために建てた今風の新居まであった。

そんな知人の家では昔から、夜になると不思議な音が聞こえていたという。笛のようななにかの鳴き声のようなその音を、彼の祖父母や両親は「ヤモリの鳴き声だ」と彼に説明していた。

ヤモリといえば、夏になるとよく窓ガラスの向こう側や天井や玄関先の明かりの下に張り付いて、虫を狙っている。あのヤモリは鳴くのだと、知人は長年信じて疑わなかったそうだ。

ただ、ヤモリの姿を見かけなくなっている冬でも、その鳴き声がするのは不思議に思っていたという。

知人が結婚してしばらく経った頃、妻が「変な音がする」と言い出した。

「トトロに出てくる、オカリナみたいな音」

それは聞き知ったヤモリの鳴き声だったため、彼はそう説明した。すると妻は怪訝そうな顔で、

「ヤモリって、あのヤモリ? 暑いところには鳴くヤモリもいるらしいけど、この辺のヤモリが鳴くなんて聞いたことがないんだけど。大体、今は冬なんだからヤモリは冬眠しているはずよ」

と首をかしげた。

冬に聞こえる声については知人も不思議に思っていたため、妻の説明は腑に落ちた。

しかしそれでは、長年聞いていて当たり前にヤモリだと思っていたあの声は、いったいなんなのだろう。

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「まぁ、おそらく昔から言われているように、やっぱりヤモリなんでしょうね。ありがたいことです」

知人は笑ってそう言った。

羨ましいことだと、私も微笑んだ。

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