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中編7
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Mおじちゃん

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父親には、仲の良い友人がいました。

名前の頭文字から、Mさんとします。

父親とは、随分と歳が離れてましたが、

ゴルフ仲間であり、

更には、

父親にとっては、心底、仲の良い友人でした。

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Mさんが突然、入院しました。

過労で、体調を崩されたそうです。

Mさんには、私も幼い頃から、可愛がってもらっていて、

「 Mおじちゃん!」

と、私も慕っていました。

Mおじちゃんには、子供がおらず、

尚更に、私の事を可愛がってくれたんでしょう。

父が、Mおじちゃんのお見舞いに行く時も、

私は強情を張り、

「 私も、Mおじちゃんに会いに行くんやー 」

と、大騒ぎをし、

結局、父と一緒に、お見舞いに行きました。

私がまだ、小学生の頃です。

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病室に入り、父は、

「 おう!元気そうやな!」

と、話していました。

私は、何だか入りにくくて、

病室の部屋の入口に、ポツンと立っていました。

すると、Mおじちゃんが、

「 ありゃ?

Kちゃん (私の事です) も、

来てくれたんかぁー!!」

と、嬉しそうな顔で言ってくれたので、

「 うん!!」

と、私は、Mおじちゃんに駆け寄りました。

その後、

しばらく、父がおじちゃんと話しをしていて、

私は病室の中を探検してました。

と言っても、病院の部屋になんか、

面白い物など有りませんでしたが。

すると、廊下の方で、子供の声が聞こえました。

( この病院の子なんかな、、、)

私は、すこーしだけ、病室から顔を覗かせました。

しかし、誰も居ません。

不思議に思い、帰り際、おじちゃんに聞きました。

「 Mおじちゃん、子供も入院しとるん?」

すると、

「 この病棟は、大人だけや。

子供は、別の病棟やわ。どしたん?」

私が、子供の声を聞いたと言うと、

誰かのお見舞いに来た子じゃないんか?

と言う事で、その場は終わりました。

帰り道、私が、

「 Mおじちゃん、元気そうやったね!」

と、父親に言うと、

「 あぁ、そうやな 」

と、意外にもそっけない返事が帰って来ました。

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その後、しばらくして、

Mおじちゃんは、退院しました。

そして、お見舞いのお礼にと、

私の家にお土産を持って、遊びに来てくれました。

父と母が出迎え、

私は、おじちゃんが来てくれたのが嬉しくて、

はしゃいでいましたが、

おじちゃんが家に入る時、パタパタっと人が走る音が聞こえました。

私は、何気無く聞きました。

「 ねぇ、Mおじちゃん、

一緒に、誰か連れてきたん?

もしかして、A君?」

A君とは、おじちゃんの甥っ子です。

もう中学生くらいの歳だった気がします。

以前、何度か会った事があるので、

何となく、名前を言ってみました。

「 うん? おじちゃんだけやよ?

他に誰かおったか?」

私は、何となく言ってはいけない気がして、

ううん、と首を振りました。

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その後、しばらくして、

Mおじちゃんは、帰りました。

私は、さっきの事が気になり、

母に聞きました。

「 ねぇ、おかん、

さっき、おじちゃんが来た時に、

誰かおったよね? 子供か、誰か、、、」

そう言うと、母は、

「 あー、誰かおったかもしれん 」

と、意外な返事をしてきました。

「 ねぇ、誰なん?」と、しつこく聞いても、

母にも分からないようでした。

でも、何故だか、

「 おとんには、あんまり聞かん方が良いよ」

と、念を押されました。

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それから、しばらくして、

また、Mおじちゃんは入院しました。

ある晩、

私は、両親の話を盗み聞きしてしまいました。

おじちゃんは、

あまり良くない病気みたいでした。

そして、前の入院も、ただの過労では無かった事を、

父は知っていたんです。

( あ、、、だから前に、

おじちゃんのお見舞いに行った時、

おとんは、

そっけない返事やったんかな 、、、)

盗み聞きしたものの、私は悲しくなり、

翌日、母に言いました。

「 Mおじちゃんに、会いに行きたい 」

母は、

父も居ないのに、ダメだと言いました。

ごもっともです。

しかし、言い出したら聞かない私を、知ってるので、

仕方ないわ、、、と、病院に連れて行ってくれました。

お見舞いのお花と、変なお饅頭を持って、

Mおじちゃんの病室の前まで行きました。

” コンッ、コンッ ”

母が、病室のドアをノックしました。

「 はい 」

中から返事が聞こえたので、母はドアを開け、

「 すみません、Mさん、お邪魔します。

お加減は、いかがですか?

実は、娘がどうしても、

Mさんに会いたいと言うもので、、、。

主人も居ないのに、お顔を見に、、、

母の言葉が終わる前に、

私は、おじちゃんに抱きつきに行ったそうです。

( 私は覚えてはいないのですが )

そして、

「 おじちゃん、イヤやー!

どこにも行かんといてー!」

と、泣きついたそうです。

Mおじちゃんが、

私を安心させるかのように、

「 大丈夫や、Kちゃん、

おじちゃんは、何処にも行かんよ 」

その後しばらく、

おじちゃんに抱きつき、泣いていたらしいですが、

しばらくして少し落ち着き、

母にもなだめれて、帰ろうとした時でした。

何となく思いました。

( あ、子供がおる。

また、誰かのお見舞いに来た子か?)

そう思い、Mおじちゃんの方を振り返りました。

( あれ 、、、?)

おじちゃんのベッドの向こうの、窓際の方に、

小学生くらいの子供が、何人かいます。

男の子、女の子、

自分より年上っぽい子、年下っぽい子。

私にしたら、理解不能、思考停止です。

( 何や、この子ら。

今まで、この部屋におらんだよね、、、。

あんたら、、、誰や?)

咄嗟に私は、

「 あんたら、出てってぇー!

私の大事なおじちゃんに、何かしたら、

絶対、許さんしね!!」

と、物凄い剣幕で、おじちゃんのベッドに向かって、叫んでいたそうです。

渡しそびれた、お花とお饅頭も、

ぶつけまくってたそうです。

母も、Mおじちゃんも、びっくりしたそうで、

私は覚えていませんが、

その後、何とか私を落ち着かせて、

母と帰ったそうです。

「 Kちゃん、急にどうしたん?

おじちゃんも、おかんも、びっくりしたわ 」

それだけ言うと、

母はその後、何も言いませんでした。

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それから、Mおじちゃんは、手術が上手く行き、

今度こそ、無事に退院できました。

それからも、父との付き合いはありましたし、

私も可愛がってもらいました。

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ある時、Mおじちゃんが言いました。

「 Kちゃん、あんやとな」

私は、

( 何で、ありがとうなんて、言うんやろ?)

って、思いましたが、

「 うん!」と言いました。

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大分経って、私が大人になった時ですかね。

母と、昔の話をしていて、

Mおじちゃんの話になりました。

Mおじちゃんは、もう、他界されているのですが、

その後、大病もせずに、長生きされました。

母が、

「 あんたが、Mさんのお見舞いに行った時に、

急に怒鳴り始めて、

おかん、どうしようかと思ったわ 」

「 そんな事、あったっけ?」

すると、母が、

「 あんたが、Mさんのベッドの方に向かって、

怒鳴り散らした後、

本当は、おかん、聞こえとってん。

病室から、パタパタって、誰かが出てく音が。」

私は、何とも言えず、黙ってると、

「 そん時、おかん思ったわ。

あ、Mさんは死なんな、って 」

ま、そんな話や、と言いながら、母は台所に

行ってしまいました。

( うーむ、、、訳が分からん。

おとんと、おかんは、

何か、知っとったんか、、、?)

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とりあえず、

昔の記憶を頼りに書いてみましたが、

いざ、書いてみると、

胡散臭え話だな、と思いましたが。

私が、小さい頃の話ですし。

でも、事実、

「 ありがとう 」と、

私に、言って下さった方が、いらっしゃったので。

それだけは、本当なんだろう、と。

その声は、今でも耳に覚えています。

真剣な、でも、優しい声です。

もう1度、Mおじちゃんに、

抱っこして欲しいなぁ、なんて懐かしく思います。

でも、私が今、思うのは、

あの日、Mおじちゃんの病室で、

私が怒鳴り散らしたのが、

良かったのかな、と。

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これは余談ですが、

今、大人になって、私が思う事です。

あの時、何故、

Mおじちゃんの周りに子供がいたのか、、、。

当時の私も、今の私も、よくは分かりませんが、

ただ、Mおじちゃんは、

すごく子供を欲しがってたそうです。

もしかしたら、

何かに執着するのは、

時には、良くない事なのかも知れません。

Concrete
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ほっこりする感想のところすみませんが、私は怖いなと思いました。
というのも、Mが子供に執着してたという一文から悪いMおじさんを妄想してしまいました。
そして、Mに恨みを抱く子供たちがなんとか自分達の世界に連れ込もうとしていたときに作者さんがいらっしゃったのではないかと。
お父さんがいないとお見舞いにいっちゃダメってところからも、Mおじさんは単なる子供好きのおじさんではないんじゃないかなと。。
怖かったです。

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