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父親には、仲の良い友人がいました。
名前の頭文字から、Mさんとします。
父親とは、随分と歳が離れてましたが、
ゴルフ仲間であり、
更には、
父親にとっては、心底、仲の良い友人でした。
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Mさんが突然、入院しました。
過労で、体調を崩されたそうです。
Mさんには、私も幼い頃から、可愛がってもらっていて、
「 Mおじちゃん!」
と、私も慕っていました。
Mおじちゃんには、子供がおらず、
尚更に、私の事を可愛がってくれたんでしょう。
父が、Mおじちゃんのお見舞いに行く時も、
私は強情を張り、
「 私も、Mおじちゃんに会いに行くんやー 」
と、大騒ぎをし、
結局、父と一緒に、お見舞いに行きました。
私がまだ、小学生の頃です。
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病室に入り、父は、
「 おう!元気そうやな!」
と、話していました。
私は、何だか入りにくくて、
病室の部屋の入口に、ポツンと立っていました。
すると、Mおじちゃんが、
「 ありゃ?
Kちゃん (私の事です) も、
来てくれたんかぁー!!」
と、嬉しそうな顔で言ってくれたので、
「 うん!!」
と、私は、Mおじちゃんに駆け寄りました。
その後、
しばらく、父がおじちゃんと話しをしていて、
私は病室の中を探検してました。
と言っても、病院の部屋になんか、
面白い物など有りませんでしたが。
すると、廊下の方で、子供の声が聞こえました。
( この病院の子なんかな、、、)
私は、すこーしだけ、病室から顔を覗かせました。
しかし、誰も居ません。
不思議に思い、帰り際、おじちゃんに聞きました。
「 Mおじちゃん、子供も入院しとるん?」
すると、
「 この病棟は、大人だけや。
子供は、別の病棟やわ。どしたん?」
私が、子供の声を聞いたと言うと、
誰かのお見舞いに来た子じゃないんか?
と言う事で、その場は終わりました。
帰り道、私が、
「 Mおじちゃん、元気そうやったね!」
と、父親に言うと、
「 あぁ、そうやな 」
と、意外にもそっけない返事が帰って来ました。
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その後、しばらくして、
Mおじちゃんは、退院しました。
そして、お見舞いのお礼にと、
私の家にお土産を持って、遊びに来てくれました。
父と母が出迎え、
私は、おじちゃんが来てくれたのが嬉しくて、
はしゃいでいましたが、
おじちゃんが家に入る時、パタパタっと人が走る音が聞こえました。
私は、何気無く聞きました。
「 ねぇ、Mおじちゃん、
一緒に、誰か連れてきたん?
もしかして、A君?」
A君とは、おじちゃんの甥っ子です。
もう中学生くらいの歳だった気がします。
以前、何度か会った事があるので、
何となく、名前を言ってみました。
「 うん? おじちゃんだけやよ?
他に誰かおったか?」
私は、何となく言ってはいけない気がして、
ううん、と首を振りました。
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その後、しばらくして、
Mおじちゃんは、帰りました。
私は、さっきの事が気になり、
母に聞きました。
「 ねぇ、おかん、
さっき、おじちゃんが来た時に、
誰かおったよね? 子供か、誰か、、、」
そう言うと、母は、
「 あー、誰かおったかもしれん 」
と、意外な返事をしてきました。
「 ねぇ、誰なん?」と、しつこく聞いても、
母にも分からないようでした。
でも、何故だか、
「 おとんには、あんまり聞かん方が良いよ」
と、念を押されました。
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それから、しばらくして、
また、Mおじちゃんは入院しました。
ある晩、
私は、両親の話を盗み聞きしてしまいました。
おじちゃんは、
あまり良くない病気みたいでした。
そして、前の入院も、ただの過労では無かった事を、
父は知っていたんです。
( あ、、、だから前に、
おじちゃんのお見舞いに行った時、
おとんは、
そっけない返事やったんかな 、、、)
盗み聞きしたものの、私は悲しくなり、
翌日、母に言いました。
「 Mおじちゃんに、会いに行きたい 」
母は、
父も居ないのに、ダメだと言いました。
ごもっともです。
しかし、言い出したら聞かない私を、知ってるので、
仕方ないわ、、、と、病院に連れて行ってくれました。
お見舞いのお花と、変なお饅頭を持って、
Mおじちゃんの病室の前まで行きました。
” コンッ、コンッ ”
母が、病室のドアをノックしました。
「 はい 」
中から返事が聞こえたので、母はドアを開け、
「 すみません、Mさん、お邪魔します。
お加減は、いかがですか?
実は、娘がどうしても、
Mさんに会いたいと言うもので、、、。
主人も居ないのに、お顔を見に、、、
母の言葉が終わる前に、
私は、おじちゃんに抱きつきに行ったそうです。
( 私は覚えてはいないのですが )
そして、
「 おじちゃん、イヤやー!
どこにも行かんといてー!」
と、泣きついたそうです。
Mおじちゃんが、
私を安心させるかのように、
「 大丈夫や、Kちゃん、
おじちゃんは、何処にも行かんよ 」
その後しばらく、
おじちゃんに抱きつき、泣いていたらしいですが、
しばらくして少し落ち着き、
母にもなだめれて、帰ろうとした時でした。
何となく思いました。
( あ、子供がおる。
また、誰かのお見舞いに来た子か?)
そう思い、Mおじちゃんの方を振り返りました。
( あれ 、、、?)
おじちゃんのベッドの向こうの、窓際の方に、
小学生くらいの子供が、何人かいます。
男の子、女の子、
自分より年上っぽい子、年下っぽい子。
私にしたら、理解不能、思考停止です。
( 何や、この子ら。
今まで、この部屋におらんだよね、、、。
あんたら、、、誰や?)
咄嗟に私は、
「 あんたら、出てってぇー!
私の大事なおじちゃんに、何かしたら、
絶対、許さんしね!!」
と、物凄い剣幕で、おじちゃんのベッドに向かって、叫んでいたそうです。
渡しそびれた、お花とお饅頭も、
ぶつけまくってたそうです。
母も、Mおじちゃんも、びっくりしたそうで、
私は覚えていませんが、
その後、何とか私を落ち着かせて、
母と帰ったそうです。
「 Kちゃん、急にどうしたん?
おじちゃんも、おかんも、びっくりしたわ 」
それだけ言うと、
母はその後、何も言いませんでした。
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それから、Mおじちゃんは、手術が上手く行き、
今度こそ、無事に退院できました。
それからも、父との付き合いはありましたし、
私も可愛がってもらいました。
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ある時、Mおじちゃんが言いました。
「 Kちゃん、あんやとな」
私は、
( 何で、ありがとうなんて、言うんやろ?)
って、思いましたが、
「 うん!」と言いました。
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大分経って、私が大人になった時ですかね。
母と、昔の話をしていて、
Mおじちゃんの話になりました。
Mおじちゃんは、もう、他界されているのですが、
その後、大病もせずに、長生きされました。
母が、
「 あんたが、Mさんのお見舞いに行った時に、
急に怒鳴り始めて、
おかん、どうしようかと思ったわ 」
「 そんな事、あったっけ?」
すると、母が、
「 あんたが、Mさんのベッドの方に向かって、
怒鳴り散らした後、
本当は、おかん、聞こえとってん。
病室から、パタパタって、誰かが出てく音が。」
私は、何とも言えず、黙ってると、
「 そん時、おかん思ったわ。
あ、Mさんは死なんな、って 」
ま、そんな話や、と言いながら、母は台所に
行ってしまいました。
( うーむ、、、訳が分からん。
おとんと、おかんは、
何か、知っとったんか、、、?)
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とりあえず、
昔の記憶を頼りに書いてみましたが、
いざ、書いてみると、
胡散臭え話だな、と思いましたが。
私が、小さい頃の話ですし。
でも、事実、
「 ありがとう 」と、
私に、言って下さった方が、いらっしゃったので。
それだけは、本当なんだろう、と。
その声は、今でも耳に覚えています。
真剣な、でも、優しい声です。
もう1度、Mおじちゃんに、
抱っこして欲しいなぁ、なんて懐かしく思います。
でも、私が今、思うのは、
あの日、Mおじちゃんの病室で、
私が怒鳴り散らしたのが、
良かったのかな、と。
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これは余談ですが、
今、大人になって、私が思う事です。
あの時、何故、
Mおじちゃんの周りに子供がいたのか、、、。
当時の私も、今の私も、よくは分かりませんが、
ただ、Mおじちゃんは、
すごく子供を欲しがってたそうです。
もしかしたら、
何かに執着するのは、
時には、良くない事なのかも知れません。
作者退会会員
長文すみません。
実際を思い出し、方言がかなり出てしまっていて、
もし、読んで下さった方には、
読みにくくて、分かりにくいかと思います。
申し訳ありません。