友人Sは川にトラウマがあり、バーベキューやキャンプなどがあっても、会場が川沿いの場合絶対に参加しない、という奴で、その理由として教えてくれた話です。
Sが小学2年性の頃、よく遊んでいた近所の川に、一部流れが淀んでいて小魚やサワガニを捕まえやすいスポットがありました。
ある初夏の日の夕方にどうしても生き物を捕まえに行きたくなり、おじいちゃんについて来てもらってその川に遊びに行きました。
目的の生き物エリアは子供でもかろうじて足がつく深さで、流れも穏やかでしたが、数歩進んだ先の川の本流はまぁまぁ流れが早く危険でした。危ない流れの部分に入らないよう、監視役としておじいちゃんが土手から見張っていました。
魚とりに熱中してかなり辺りが暗くなってきたころに、
さっきまで誰もいなかったはずの川の真ん中あたりの中州に男の人が立っているのに気がつきました。
風が強めの日でしたが、その人はじっと立ち尽くしていて、置物やカカシのような印象でした。
体は川上の方、顔はSの方を向いていて、暗い中、目を凝らして観察すると口をパクパクさせて何か言っているようでしたが、
川の流れのザーーっという音にかき消されて何も聞こえません。
その口のパクパクを見ているとだんだん頭がフワフワして、うっとりしたような感覚になり、どうしてもその男の人がいる中州に行きたい気持ちになったそうです。
その時おじいちゃんが川の土手から大声で
「さぁ、良い子はもうおうちに帰りましょ！！悪いもんにイタズラされてもかなわんし！！」
と叫びました。
急な大声にびっくりしておじいちゃんの方を見て、また中州を確認すると
男の人は半分くらいの大きさに縮んでいて、体もSの方に向いていて、服装は同じでしたが、顔がさっきまでと全く別の顔に変わっていたそうです。
これは何かやばいモノだ、とわかり、大慌てで土手に上がると、おじいちゃんが抱きかかえてくれてそのまま走って家まで帰ったそうです。
おじいちゃんに中州の男について尋ねると、おじいちゃんは川についた時から中州にモヤモヤした黒い影のようなものがうごめいているのが見えていたそうで、
Sが突然ぼうっとしだしたのに気がついて呼びかけたが返事がなく、
孫に危害を加えるのは許さん、という気持ちで怒りの声をあげた、とのことでした。
おじいちゃんもSも霊感があるわけでなく、その類のものを見たのはそれ一度きりだそうです。
作者OD