中編3
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機械室

これはこの間体験したお話。

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私はフォトグラファーを名乗っては居るものの、写真では食えていない、故に普通の仕事をして過ごしている。これはその今の本業の現場で起きた出来事。

私の仕事は色々な施設の機械室に出向き、メンテナンス作業を行ったり新しく機会を敷設したりを行う仕事でその日も先輩社員と一緒に作業をしていたんだ。

仕事もひと段落してほかの社員さんは皆上へタバコを吸いに行ったんですよね、私は煙草は吸わないので一人で機械室に残される形になる。こうなると20分位は暇になるので私はイヤホンで怪談を聞く。

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こうすると機械室の喧しい冷却器の音も聞こえなくなり怪談の世界に落ちれる…仕事中数少ない一人の時間…今日はやけに静かだ。

いくらイヤホンをしてるからってここまで無音なのはおかしい、イヤホンを外してみると音が無かった、あの爆音の冷却ファンの音が全くしないのだ。

こうなると考えられることはただ一つ、機器のトラブルだ。

新人の私にはとてもじゃないが手に負えない、急いで先輩に社用携帯で電話を掛けようとするが圏外、地下だし仕方ない。それならと言う事で機械室から出て電話するかと考えドアノブを回すが開かない。鍵でも掛けられたみたいに動かない、そしてドアに近い場所に移動しても電波は回復しない。

それならと自分のスマホを取り出す、これならさっきまでYouTubeを開いてた訳だ、つながるはず。

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が、そんな願いを打ち砕くかのようにプライベートのスマホも「ネットワークガバレッジ無し」と無機質な文字で示していた。機器はトラブル、連絡は付かない、オマケに扉は開かない。流石に不味いと思い扉を叩いて呼びかける。

すみませーん!誰か外に居ませんか!?

shake

shake

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が返事は無かった、返事はね。静寂に包まれた機械室の外からピタッ…ピタッ…と足音が聞こえて来た。

作業靴…?では無い…コンクリートの上を裸足で歩くような音、靴下になる事は有り得ても裸足なんて現場で有り得ない。確実に先輩や上司、お客様や警備員でないことは確かだ。得体の知れない音は確実に近づいて来る。

ピタッ…

ピタッ…

ピタッ…

ピタッ…

ペチョ…

音が変わった。

この扉の前にある金属製の短い階段に足をかけたのだろう、そんな音の変化が分かってしまう程憎たらしい静寂に包まれた部屋に音が響く。

ペチョ…

ペチョ…

階段を上り終えた、ドアノブがゆっくり回る、もう見てるだけしか出来なかった。

さっきまで開かなかった扉がキィィという音と共に開く…。

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何かが居た、何かが居たことは覚えてる。

次の瞬間先輩にゆすり起された、慣れない作業で疲れたか?仕事の続きするぞ。と言われた、時計を見ると丁度休憩から20分位立っていた、機械室もいつものようにけたたましく冷却ファンが唸っている。

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夢だったのかな、帰りの電車でYouTubeを開きながら考えてた、今思うと何で開いたんだろう。履歴には静寂の機械室で聞いてた怪談が残ってた。あの機械室はあの足音は何だったのだろう。

もっとも、今となっては調べようも有りませんが。

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