中編3
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原城跡の洞穴

母方の実家の近くに原城跡という城跡がある。

ここは島原の乱の舞台となった全国的にも有名な場所で、最近世界遺産登録もされた事で多くの観光客が訪れるようになった。

一見ただの土手のような所で本丸跡には天草四郎の像や十字架が立ち、春には花見客で賑わうが、一方多くの人が亡くなった事で心霊スポットとしても有名であり、今でも近くの畑から人骨が出たりするという。

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近くに住む母方の祖父が子供の頃の話である。

昭和始めのその当時はまだ原城跡はそれほど有名ではなく、整備もあまりされていなかった。

周りに遊び場といっては原城跡かそのすぐ下の海岸くらいしかなかったため、よくそこで遊んでいたという。

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ある日、友人から「原城の崖のところの洞穴を見に行こう」と誘われた。

その穴の存在は少なからず認知されていたが詳細はわからないようで、天草四郎の財宝が眠っているとか隠れキリシタンの礼拝所があるとかいう噂が囁かれていた。

祖父を含め子供達は大人から「危ないから行くな」と言われて止められていたが、好奇心に負けてこっそり行く事になった。

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海岸を進むと、城跡の小高い崖が見えてきた。そして、崖の下の草の生えているところに1メートル程度の穴があり、木の格子を立てかけて塞がれているのが確認できた。

友人はそこによじ登り格子を外して、ついてくるよう指図した。

こうして友人の持つ懐中電灯を頼りに2人は穴へと入って行ったが、3メートルほどで終わるという噂があった割に結構長かった。

5メートルほど進むにつれ天井が徐々に高くなっていき、そして道がカーブしだした。

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2人がカーブを曲がった時、奥の方から何やら人が談笑しているような声が聞こえた。

2人は大人がいると思い、見つかってはまずいと元来た道を引き返そうとした。

その時、背後のカーブの先の声が急に大きくなったと同時に、何かが迫ってきている感覚が伝わってきた。

2人は驚いて一目散に駆け出した。

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なんとか穴を抜け出し、即座に格子をはめて身構えたが何も変化はなかったので、恐る恐る懐中電灯で中を照らしてみた。

穴の奥のカーブの所から黒っぽい男女3人らしき顔がこっちをじっと覗いているのが見えた。

2人はそれを見てすぐ逃げ出し、近くの寺に駆け込んだ。

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庭木の剪定をしていた住職に事の説明をするとゲンコツを喰らわされ、すぐに本堂で祓ってもらう事になった。

その後、こんな話を聞かされた。

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「あの穴は聞いたところによると原城ができた頃からあり、元々は城の抜け穴になっていたらしいが、今では殆どが落盤して塞がっている。そして島原の乱の時、ある農民が逃げようと抜け穴に入った際味方のキリシタンに見つかり、信仰を捨てるとは何事だと暴行を受け、血塗れで殺されてしまったという。その後遺体は片付けられる事もなく穴が落盤し、今でもそのまま埋まっているそうだ。」

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祖父達が見たのは恐らくその殺された農民の霊だったのだろうという事になり、住職と一緒にその穴に線香をあげに行った。

「味方に殺された上に弔われる事もなく長い間ここに縛られていたのだろう」と住職は言い、3人で手を合わせた。

その後いつの間にか落盤が起きて穴は塞がれ、入口もほとんど埋まってしまったいう。

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その後も祖父は定期的に原城の石碑に線香を手向けていたが、去年に亡くなった。

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