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中編3
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真夜中の雑木林で

これは僕が小学四年生の時に体験した話。

毎年夏になると西伊豆に家族でキャンプに行っていた。そのキャンプ場は50代の夫婦が経営している、近くに海も山もある子供にとって最高のキャンプ場だった。そんなキャンプ場のメインイベントは、夜になると自販機や街灯に集まってくるカブトムシやクワガタ捕りだ。雨が多く虫の少ない日には経営者のおじちゃんがわざと自前のカブトムシなんかを目の前に出して見せたりして、子供達を喜ばせていた。

しかしこの年は虫が全然いないのか、お目当てのクワガタはおろかカブトムシすら現れなかった。

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キャンプ最終日の夕方。

お母さんに言われ、弟と離れにある洗濯所で洗濯物を取り込んでいる時、新キャンプ予定地の裏にある雑木林から、経営者のおじちゃんが出てくるのが見えた。

おじちゃんが自前で昆虫を持っていることは知っていたから、きっとあの雑木林で捕ってたんだ!と察した僕と弟は、虫が1番活発に動く夜中を見計らって雑木林に行ってみることにした。

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夜中の2時。

当たりはシーンと静まり返り、僕と弟の足音しか聞こえない。虫取り籠と懐中電灯を持って雑木林の入り口まで来た時、雑木林の中でゆらゆらとチラつくライトが見えた。

やられた!きっと他の利用者が虫を探しているのだろう。先に捕られてなるものか!と急いで雑木林に入った。

草をかき分けて進んでいると、急に弟が、

「ライト消して!伏せて!」

というので、指示通りにすると弟は小声で

「絶対喋っちゃダメ」

と言ってきた。そして暗闇でうごめく光の方を指差していたので目を凝らしてよく見ると、光の正体は懐中電灯を持った経営者のおじちゃんだった。

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見つかったら怒られると思った僕らは、その場でジッとおじちゃんが帰るのを待つことにした。

おじちゃんは木の幹をライトで照らしては何かモゾモゾしてから、また次の木へと移動。

そうこうしているうちに、だんだんと僕らが隠れている茂みに近づいてきていた。

心音すら止めたかった僕らは、謝りながらダッシュで帰ることも考えたが、暗闇の雑木林の中を走ることは危険すぎる。

shake

バリバリバリバリ

そんな音が林に広がる。

音はおじちゃんの方から聞こえてくる。

よく見るとおじちゃんは、何かを食べながら木々を探索しているようだ。

僕らが隠れている茂みのすぐ横の木まで来たとき、おじちゃんが何を食べているのかが分かった。

おじちゃんは木の幹をライトで照らすなり、照らされたカブトムシを鷲掴みにし、口の中へと放り込んだ。

shake

バキッ、ジャリジャリジャリ

悲鳴を上げることもなく、カブトムシは粉々になっていった。

その様子を見ていた弟が突然、ワーーーーと声を出して走り出した。僕もそれについて行き、2人で雑木林を飛び出した。

wallpaper:5324

後日父親にこんなことがあったと説明すると、最初は信じていなかったが、必死に説明する僕たちをみてなんとか信じてもらえた。

しかしその年が僕たちの最後のキャンプになってしまった。

なぜか毎年来ていた今年もいかがですか?という年賀状もピタッと止み、そのキャンプ場について家族で話すこともなくなった。親とおじちゃんに何があったのかは分からない。

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3年後。経営者のおじちゃんは雑木林で焼身自殺。おばちゃんは新キャンプ予定地で半狂乱になっている所を警察が保護、キャンプ場は現在も閉鎖されているという。

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