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中編4
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クリスマスプレゼント

「でねクリスマスプレゼントは何がいい?って、亮太に聞いたの

そしたら、今流行りのアニメの『日輪刀』が欲しいって言われてね」

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そろそろ深夜になりかけの、駅前通りにある小さなガールズバー「ELLE 」。

白いドレスの麗美が、カウンターに座る常連客のアツシにしゃべっている。

隣には一見さんの男が座っている。

お客はもうこの二人だけになっていた。

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「だったら買ってあげたらいいじゃん」

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青い作業服姿のアツシがハイボールのグラスを片手に言う

もうかなり出来上がっているようだ。

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「それがさあ私、昼も働いていて最近いろいろと忙しくて、なかなかオモチャ屋とかに寄る暇なんかなくて」

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麗美が困ったような顔で言うと、

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「じゃあボクが買ってあげましょうか?」

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いきなり一見の男が割り込んできた。

紺のスーツの上下でご丁寧にストライプのネクタイをきちんと絞めている。

表情が乏しくてなんだか真面目の固まりみたいな印象で、年齢は50過ぎくらいだろうか。

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「ちょっと、それは、、、」

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一瞬の間の後麗美が答えあぐねていると、アツシが男を横目でにらみつけながら吐き捨てるように言った。

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「オッサンよぉ、初めて来た店でカッコつけてんじゃねえよ」

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アツシに睨まれた男は黙って下を向いた。

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麗美が店を終えて自宅のマンションにたどり着いたとき、既に2時になっていた。

5階でエレベーターを降りて502号室のドアを開ける。

母子二人が暮らすには十分な間取りだ。

暗い廊下を歩きリビングに入ると北側のサッシ戸を開けて、ベランダに出た。

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「うう、さむ!」

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呟きながら、てきぱきと洗濯物を取り入れ始める。

すると物干し竿の端に、何か赤いものがぶら下がっているのに気付いた。

それはかなり大きなサイズの赤い靴下だった。

サンタさんへ、と書いた紙が差し込まれている。

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─ふふ、、、亮太ね

イブは明日なのに、よほどプレゼントが欲しいのね。

明日の夜はお店だから、明後日一緒にショッピングモールにでも連れていって買ってあげようかな。

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麗美は靴下をそのままにしたまま、洗濯物を抱えてリビングに戻った。

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イブの夜。

ガールズバー「ELLE 」のカウンター席はほぼ満席で、賑わっていた。

スタッフの女性4人は皆、接客に追われている。

麗美も目の前に座る3人の男性と話していた。

一人は常連のアツシで、その隣にアツシの同僚のタツヤそしてもう一人は昨日初めて来店した紺のスーツの男性だ。

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「なあ麗美ちゃん、もし彼氏とかいたらイブの夜はどう過ごしたい?」

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青い作業服のタツヤが尋ねる。

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「そうねえ私ワインが好きだから、A 5ランクの和牛をあてに極上のワインを飲みたいな」

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「わおお、ぜいたく~

俺も彼女がいたら、そんなことしてみたいわ」

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アツシが興奮しながら言う。

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「豊後牛なんかどうですか?」

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スーツの男性が尋ねる。

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「わああ、私そんな良い肉食べたことないから、最高だろうなあ」

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麗美が目を輝かせながら言う。

アツシが男を横目でにらみ、舌打ちをした。

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麗美が店を終えた後帰宅し自宅マンションのリビングの電気を点けたとき、時間は3時になろうとしていた。

ふと見ると食卓テーブルの上に一枚の紙が置かれている。

椅子に座り手にとってみる。

字から察するに亮太が書いたもののようだ。

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─ママ、今日サンタさん、うちにも来たんだよ

ボクの赤い靴下の中にもプレゼントを入れてくれていたんだ

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─え!?

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麗美は慌てて立ち上がるとリビングを出て、廊下沿いの寝室のドアを開ける。

ダブルベッドの右端に亮太の小さな顔が見える。

そしてその横にはオモチャの「日輪刀」が置かれていた。

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翌朝テーブルに座りトーストを食べる亮太に、私は尋ねた

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「亮太、あの『日輪刀』は、靴下の中に入っていたの?」

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「そうだよ、サンタさんが入れてくれていたんだ」

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昨晩から麗美の頭の中は混乱していた。

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─誰かが玄関から忍び込んで、入れたんだろうか?

それとも、ベランダから、、、

いやいや、この部屋は5階だ。

それは無理だろう。

そもそも亮太が欲しがっているものを知っていたのは、私くらいしかいないはずなんだけど。

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じゃあ一体誰が、何のために?、、、

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その日麗美は結局外出せずに、亮太と一緒に家で過ごした

夜は昨日から買っておいたクリスマスケーキをテーブルの真ん中に置いて、家族二人のささやかなパーティーをした

夕食の後亮太は日輪刀を振り回しながらリビングのソファーの上で遊んでいたが、いつの間にか日輪刀を抱いてカーペットの上で眠っている。

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麗美はテーブルの上を片付けて、椅子に座りコーヒーを飲んでいた。

時刻はもう11時になろうとしている。

その時だった。

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─ピンポーン、、、

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突然呼び鈴が鳴った。

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─こんな時間に誰だろう?

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麗美は不審に思いながら、インターホンの受話器を外すと同時に液晶画面を見る。

次の瞬間、彼女の背中を冷たい何かが走った。

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そこには昨日店に来ていたあの男が映っていた。

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あの時と同じ紺のスーツにストライプのネクタイをし、無表情で、、、

麗美が震える声で受話器に呟く。

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「あの、、、何でしょう?」

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男は薄気味悪い微笑みを浮かべながら、無言でワインボトルとレジ袋を順番に掲げた後こう言った。

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「いや亮太くんもプレゼント喜んでくれたみたいだし、今からは二人きりで一緒にクリスマスパーティーでもどうかと思いましてね。

A 5ランクの豊後牛をあてに極上のワインで」

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Fin

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@ほえほえ 様
コメント、怖いポチありがとうございます

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@アンソニー 様
いつも怖いポチ、コメント 感謝、感謝です

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