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短編2
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件(くだん)

先日、娘との会話に件の話がでた。

件とは顔が人間で身体が牛の姿をした妖怪だ。

娘は中高生の頃、Twitterでその存在を知ったという。

娘は最初、Twitterでそれを見たとき、身体の奥がズンと凍りついていくような感覚に襲われたそうだ。

「今思い出しても震えがでる」

そう話す娘の顔からは血の気がひいている。それはいつか見た、隣の家の庭の異形のときと同じ表情だった。

ネットで件を検索すると、様々な姿形をした件がでてきた。本物かどうかの真偽は定かではないが、剥製というのもあった。中にはゾッとする様な女の顔をしたのもあるが、芯から凍りつくほどの凄みはない。

「ねぇ、あんたが見た件てどれ?」

訊ねると、娘は少し間をおいて自分の携帯を私によこした。娘は携帯から顔を背けている。

そ、そんなに怖いんかい!

私はドキドキ、ビクビクしながら画面を見た。

だが、

「……」

画面をみて私は唖然とした。

「…これ?」

その件はそれを見た人が、こんなのを見たとイラストにしてツイートしたものらしい。

確か件て人間の顔をしているんだよね。

垂れ耳の犬っぽく見えるそれは、なんていうか、可愛さが足りないゆるキャラのようで、凍りつくような恐怖とは無縁に感じた。

怖くも可愛くもない、不気味さもない。なんて中途半端なんだ。

「あんた、こんなん怖いん?」

「怖い…。その人がそれを見た頃、なんか色んなことあったらしい」

娘は高校生の頃にTwitter上でそれを見たが、ツイート自体はそれより前のものらしい。

それにしても、怖くない。実際に見たなら怖いのかもしれないが、あのイラストだけで恐怖を感じる娘のことが不思議でたまらない。

以前、隣の家の庭で見たという異形も、本当は見た目は大した事ないのかもしれない。私は見てないからわからないけど。

携帯を閉じて大分経つのに、娘の眼は涙目だ。私にとっては?な件のイラストも、娘にとっては恐怖以外のなにものでもないということなのだろう。

「憶えてないけど…多分この件、私も何処かで視てる…」

最後に娘はそう言った。

Concrete
コメント怖い
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