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中編4
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猫の鳴き声

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これは男子高校生の田中君、鈴木君、佐藤君が体験した話

この3人はとても仲がよく、学校はもちろん放課後や休みの日も決まって3人でつるんでいた。

そんな3人は夏休みも半分が過ぎた8月の初旬、鈴木君の家に集まって漫画を読んだりゲームをして遊んでいたのだがどうも飽きがきてしまっていた。

ダラダラと時間をもて余していたところ、鈴木君がある事を思い出した。

それは一個上の井上先輩が肝試しに行った時の話だった。

自転車で30分ほどのところに山があるのだが、その山の中に心霊スポットの廃墟があり、そこに仲間数人と行ってかなり怖い思いをしたと聞いていたのだ。

このまま家でダラダラしててもつまらないと思った鈴木君は田中君と佐藤君に、その山の廃墟に肝試しに行こうと誘った。

時刻はまだお昼を少し過ぎたくらいなので、山の廃墟に行っても夕方には帰れそうだったこともあり2人とも乗り気で誘いに乗ってきた。

3人は漫画やゲームを片付け、山に向かい自転車を漕ぎ出した。

「そこってどんな廃墟なの?」と田中君が聞いた。

「ああ、なんでも山のハイキングコースの途中にすげー古いお地蔵さんみたいなのがあるらしくてさ、そこの脇道を行った先って聞いたぜ」と鈴木君が返す。

「なんか出たらどうするよ?俺はお前ら置いて逃げるからな!」と佐藤君が笑い飛ばした。

途中休憩を挟んだのもあり、3人が山に着いたのは午後2時前くらいだった。

自転車を麓の空き地に停め、3人はハイキングコースを歩き始めた。

20分ほど歩いたところで道中に鈴木君が話していた古びたお地蔵さんが見つかり、その傍らには脇道というよりは獣道というべき細い道があった。

「あ、この道じゃねえか?行ってみようぜ!」といい鈴木君が先頭を切って獣道へ入ったので、田中君が真ん中、佐藤君が最後尾という並びで進んだ。

手で草や枝を振り分けながら進んでいると15分ほどで開けた場所に出た。

目の前には川が流れており、対岸に件の廃墟と思われる建物が見える。

「どこかに橋ないかな?」と3人が辺りを見回すと、200mほど離れたところに小さく粗末ではあるが橋があったのでそれを渡ることにした。

橋を目指して川沿いを歩いているとどこからか「ニャーオ…ニャーオ…」と猫の鳴き声が聞こえてくる。

「お?猫の鳴き声だ!近くにいるのかな?」と鈴木君が周りを見渡すが猫の姿は見えなかった

「野良猫が住み着いてんだろ?早く行こうぜ」と田中君が急かすのでそのまま橋に向かい歩く。

川沿いを歩いている最中ずっと猫の鳴き声が聞こえていたので「猫にあったら撫でたいなー人懐っこい猫だといいな」と鈴木君が笑う。

そして、橋を渡りようやく廃墟に行くぞ!と意気込んでいる鈴木君だが、真ん中を歩いていた田中君が後ろを歩いている佐藤君の様子がおかしいことに気付いた。

川沿いを歩き始めたくらいから佐藤君がほとんど喋らず暗い顔して俯き震えているのだ。

「佐藤どうした?気分悪いのか?」と田中君が声をかける

「なんだよお前ビビってんの?」と鈴木君も声をかけたが明らかに様子がおかしい。

ついに完全に足を止めてしまった佐藤君が恐る恐る

「なぁ…さっきから聞こえる鳴き声…あれ…猫…だよな?」と2人に問いかけた。

「え?ああ、そういやさっきからしてるよな。それがどうした?」と聞き返す。

だが次の瞬間、鈴木君が何か違和感に気が付いたようで「あれ?え?これ…猫か?」と言った。

田中君も耳を澄ませてよーく鳴き声が聞いた

そして、佐藤君が震えている理由がわかってしまった。

ニャーオ…ニャーオ…ニャーオ…

オニャア…オンニャア…オギャア…

オンギャア!オンギャア!オンギャア!オンギャア!

彼らの耳に聞こえているのは、どう聞いても猫の鳴き声ではなく人間の赤ちゃんの鳴き声だった。

まだ明るい時間とはいえ、ここは山道を30分以上歩いた先の心霊スポットの廃墟だ。

こんなところで赤ん坊の鳴き声がするなんてどう考えてもおかしい。

みるみるうちに3人から血の気が失せていったが、その鳴き声は廃墟の方向から聞こえており、こちらに近づいていた

あまりの恐怖に足がガクガクと震えて動けなくなってしまった3人に赤ん坊の鳴き声はどんどん近づいてくる。

「ヤバイよ!もう帰ろう!」佐藤君がそういうと田中君と鈴木君もハッと我に返りすぐに来た道を全速力で駆け出した。

来るときは草や枝を手で払いながら歩いて来たが、今は草や枝で手足に切り傷を負いながら全速力で走った。

全速力で走る彼らの後ろ、距離にしておそらく3m~4mくらいを赤ん坊の鳴き声はずっと同じ距離感を保ちながら聞こえている。

もし、後ろを振り返ったり足がもつれて転んだりしたら確実に追い付かれる。

獣道を抜けてハイキングコースに出てからも3人は速度を緩めることなく麓に向かい走り続けた。

自転車の停めてあるところに着いた時には、もう背後の気配も赤ん坊の鳴き声もなくなっていたので一目散にそれぞれの家へと逃げ帰った。

その後、夏休みが終わり登校した鈴木君は例の廃墟に行った井上先輩に会ったので、あの廃墟でどんな怖いことがあったのか聞いたのだが井上先輩は

「は?俺そんなとこ行ってねえぞ?誰かと勘違いしてねえか?そもそも俺が幽霊とかマジでダメなの知ってるだろ?金もらったってそんなとこ行かねえよ!」

と言われてしまったのだ。

では、鈴木君は一体誰から廃墟の事を聞いたのか?

そして、もしあの時猫の鳴き声だと気にもとめずに廃墟に行ってたらどうなっていたか

3人は今でも時々思い出すそうです…

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