短編2
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ししまい様

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俺の祖父の家は東北の山間にある田舎で、周りは山と川とで自然に囲まれており、祖父の家自体も築100年になる大きな屋敷みたいな家だった。

東京で暮らしている俺にとって祖父の家は格好の遊び場だったので、子供の頃は夏休みや冬休みの度に両親と一緒に遊びに行ってた。

小学6年の夏休みにも例年と同じく祖父の家に泊まりに行き、大自然に囲まれた環境で俺は大興奮で遊びまくっていた。

だが、1つだけ気になっていることがあった。

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祖父から「御山の神社には近づいてはいけない」と言われていたのだ。

なんでも古くから伝わる神社で、ししまい様という悪い神を封じているとか…

今までは怖いのもあって山に入っても神社には行かなかったのだが、6年生になって気が強くなっていた俺はついに禁忌を破って山の神社に行ったんだ。

その神社はすっかり荒れ果てており、かつては綺麗な赤色をしていたであろう鳥居はすっかり茶色になり、境内はもちろん参道すら手入れがされておらず、俺は膝上まである草木をかき分けて境内に向かった。

境内に着くと本来はあるはずの賽銭箱や鈴と縄などもなく、建物の扉も半壊していて中は荒れ放題だった。

俺はせっかく来たんだからと境内の中を覗いた時に見つけた古い本?のようなものを持って帰った。

夕方になり辺りが暗くなるころに俺は祖父の家に着き、お風呂に入って両親と祖父と晩ごはんを食べた。

祖父は昔の色んな話をしてくれるのが好きで、祖父の家に来た時は必ず祖父と一緒の部屋で寝ていた。

そして、その夜も祖父の話を聞くうちに眠りについた…

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翌朝目が覚めると部屋に祖父はいなかった。

まだ眠い目をこすりながら居間に行くと珍しく機嫌の悪そうな祖父と慌てている両親がいた。

俺の姿を見るなり祖父が詰め寄り

「お前、昨日山の神社に行ったか?!」と問い詰められた。

いつもの優しい祖父じゃない気がして怖くなり、神社に行った事も境内から古い本を持ってきた事も打ち明けた。

祖父はひどく怒った様子でその本を取り上げると、両親と俺に今すぐ帰れと言ってきた。

本来なら3泊する予定だったが、祖父のあまりの剣幕に朝食もとらず帰路についた。

帰りの電車の中で俺は祖父を怒らせてしまった事を悔やみ続けていた。

でも、なんであんなに怒ってたのか…

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それから1ヶ月後…東北に住んでる親戚から祖父が亡くなったと知らされた。

普段はほとんど車も通らない道でトラックにはねられ即死、しかも祖父の身体ははねられた衝撃で四肢がちぎれたと…

これは俺が高校生になってから調べたのだが、俺が行った山の神社に祀られていたのは確かに[ししまい様]という神様だった。

ただし…獅子舞ではなく…[四肢舞い様]という神様なのだ…

四肢とは手足のこと…それが舞う…

この時全てがわかった気がした、何故祖父があんな死に方をしてしまったのか…どうして俺と両親をすぐに帰らせたのか…

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