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俺は大学進学を機に人生で初めての一人暮らしをする事にしたんだ。
実家にいるのが嫌だったわけじゃないけど、一人暮らしをするのに憧れてたから両親の許可を得てアパート探しに近所の不動産屋へ行ってきた。
俺の希望条件と家賃、どちらもクリアする物件は中々見つからなかったが、2時間ほど不動産屋で店員さんと一緒に探していると、ようやく見つけることができたのだ。
大学まで電車で7駅、途中乗り換えがあるものの周辺の環境や部屋の間取りに家賃の安さ、どれをとっても俺の希望条件を満たしていたので早速賃貸契約を結び、二週間後には実家から荷物を運んで新生活がスタートした。
初めての一人暮らしは毎日充実していて、大学でも気の合う仲間が出来て順風満帆な生活に俺は本当に楽しい日々を送れていた。
だが、一人暮らしを始めてから2ヶ月が過ぎた頃に異変が起こり始めた。
毎晩決まって21:35になると隣の部屋から壁を叩く音が聞こえてくるのだ。
そういえば隣に誰が住んでるか知らなかったが、俺の生活音がうるさいのかな?と思ってなるべく静かに過ごすようにしていたのだが、
毎日必ず21:35に壁を ゴンッ…ゴンッ…ドドン…ドンドン…と叩かれるので、ついに我慢しきれなくなった俺は隣の部屋に行きインターホンを鳴らした。
少ししてから出てきたのは、俺と同じ年くらいのメガネをかけてておとなしそうな男性だった。
俺は怒気を含んで「あのさ、毎晩毎晩壁叩くのやめてくれません?俺そんなうるさくしてないでしょ!」と言うと
『何言ってるんですか、毎晩壁叩いてるのはそちらでしょう?うるさくてかないませんよ!』と言ってきた。
俺はもちろん毎晩壁など叩いていないが、この隣人が嘘を言ってるようにも見えなかったので、隣人に頼んで俺が部屋に戻ったら壁を叩いてもらったんだ。
確かに音は聞こえるのだが毎晩聞いていた音とは違う、今聞こえてる音は明らかに位置が遠いのだ。
俺の勘違いであったと隣人に謝罪し部屋に戻ろうとした時だった、隣人が俺を呼び止めてこう言った。
『貴方の部屋、住人が入ってもすぐ出ていくんですよね、僕がここに住んでから貴方で4人目です。』と…
俺はすぐに高校時代の友人Sに連絡をとった。
Sは仲間内でも有名な霊感少年で、心霊スポットなどのヤバいとこには必ず来てもらっていたくらい霊感が強かった。
俺はSに壁を叩く音の事は何も言わず、一人暮らし始めたから泊まりに来るよう誘った。
Sも喜んで遊びに行くと言ってくれたのだが、当日になってSが俺の部屋に入った瞬間 『お前よくここに何ヶ月も住んでられるなー!毎晩変な音とかしてるだろ?』と言われたのだ。
俺は頭から足の先まで冷たい何かが這いずるような感覚になった…
とりあえず外に出ようというSの提案で、俺とSは近くのファーストフード店に入った。
青ざめてる俺を見てSが口を開いた…
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『俺を呼んだのは何か変な事があるからだろ?
結論から言うと…お前の部屋に背中から血を流した女が這いつくばってて、苦しそうな顔しながら壁叩いてたよ』と言うのだ。
俺はすぐに部屋を引き払って実家に戻った。
そして休みの日に市の図書館であの部屋について調べたらわかったんだが、あの部屋では6年ほど前に、男が部屋で恋人を刺殺したって事件があった。
背中数ヶ所を刺された女は隣人に助けを求めて壁を叩いたが力尽きて亡くなったのが…21:35だったそうだ。
もうしばらくは一人暮らしなんてしたくない…
作者死堂 鄭和(しどう ていわ)