中編3
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白の鳥居

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私の住んでるところは最近になって駅前辺りの開発が進み、だいぶ賑やかになってきた。

でも、駅から車で十数分も移動すれば昔ながらの田園風景に山林も多くあるとこで、あの体験もそんな開発が進んでいない山林で起きたことでした。

地元の商店街に夕飯のおかずを買いに来たのですが、通い慣れた道の途中に記憶にない路地を見つけたのです。

幼い頃から通い慣れてる商店街です、隅の隅まで知ってると思ってたのですが、自分の知らない道があったなんて…

私は好奇心にかられてその路地を進みました。

路地を進んでいくといつの間にか山道のようなところに出てしまいました。

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確かにこの辺りは山もありますが、商店街のある一帯はほぼ平地なので、なんでいきなり山道に?と疑問に思いましたが、山道を進んで行くと開けた場所に出ました。

目の前には4つの鳥居があり、その先には神社らしき建物が見えるのですが…奇妙な事に鳥居が真っ白なのです。

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私の知ってる限りだと、鳥居というのか赤です。

白い鳥居というのもどこかにはあるのかも知れませんが、少なくとも私の地元に白い鳥居の神社なんて知りません。

私は怖さよりも地元に知らない神社があった事の驚きが勝り、奇妙な白い鳥居の1つ目ををくぐりました。 

鳥居をくぐった瞬間、何か寒気を感じました。

何か…とても危ない場所に足を踏み入れたような感覚で、足は小刻みに震えて冷や汗が背中を伝っていました。

引き返そうとした時でした、神社の境内に人の姿が見えたのです。

神主さんかな?あの人に聞けばここがどんな神社かわかるかも知れない、神社への興味が強まっていたのもあり、神社へ近づくため2つ目の白い鳥居をくぐりました。

今度は寒気なんてものではなく、全身の神経が警鐘を鳴らしているように思えました。

この先に行ってはいけない行ったら戻れなくなる、何故かそう考えはじめていました。

その時点で興味や好奇心よりも恐怖が勝っていたので、そのまま3つ目の白い鳥居はくぐらず来た道を引き返しました。

不思議な事に、行きは20分くらい歩いたはずなのに、帰りは1分もしないうちに商店街に着きました。

不思議な体験だったなと思いながら夕飯のおかずを買い家に帰りました。

家に帰るとちょうど祖母が居間で本を読んでいたので、さっきの神社と白い鳥居について何か知らないか訪ねました。

すると祖母は大変驚いた様子で『引き返してよかったよ、4つ目の鳥居をくぐったらあの世へ引き込まれるよ』と言われました。

なんでも、戦国時代にはこの辺りは度々戦火に巻き込まれた事があった。

そして、戦や病気などで死んだ人を弔っていた神社があったそうなのだが、その神社は鳥居が赤ではなく白だった。

本来死者はお寺で引取り弔うのだが、この一帯の集落にはお寺がなく、この神社が代わりを務めていたそうだ。

だが、戦国時代も終わり間際の頃、この神社は敵対勢力の手によって焼き払われた。

鳥居も神社の境内も神社の神主家族も…

そして、鳥居が何故白かったのかというと、シロは色のことではなく『死路』の鳥居というのが正しい呼び名であり、四つの死への路(ミチ)という意味合いから鳥居を白に塗ったと伝えられていたそうだ。

戦国時代に焼失したあの世への路となる神社と鳥居が何故私の前に現れたのか?

なんとも不思議だったので翌日また商店街の同じところに行った。

だが、そこには路地はなく、小さなお地蔵様が置かれているだけだった…

そして、それ以来私があの路地を見ることはなかった。

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