我が家には時々、夫の真似をするモノが現れる。
ゴールデンウィーク前の深夜、携帯をいじっていると二階で寝ている夫が降りてきた。(私の寝室は一階の和室)
夜、寝ないで携帯をいじるのを夫はよく思わないので、私は寝たふりをした。
夫はリビングの電気をつけるとキッチンで水を飲み、テレビをつけた。
それから…
夫は私のいる和室へやってきた。
物音をたてることなく、気配だけを漂わせて。
枕元に夫の気配を感じる。
リビングからはテレビの音が聞こえてくる。そして、夫の咳払いも…。
夫はリビングだ。
では私の枕元にいるのは誰なのだろうか。
確かめたい。
ぞわりと全身の皮膚が粟立つ。
確かめたい。でもそんな勇気はない。
やがて枕元の気配がすうっと消えた。
程なくして夫はテレビと電気を消して二階へと上がった。
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ゴールデンウィーク只中の5月2日深夜。
これは娘の話。
夜、灯を消して床に就いて間もなくのこと。
父親がやってきたそうだ。(父親=私の夫。念のため)
だが娘はすぐにそれが自分の父親ではないと気づいたらしい。
父親もどきは娘に喋りかけながら、顔を近づけてきた。
娘は恐怖で身動きがとれなかった。
父親もどきの気配が顔スレスレまで迫ってきて、恐怖がピークに達した時、娘は自分の顔がグニャリと崩れていくのを感じたそうだ。同時に崩れた顔の表面に、自分ではない別な何かが現れ、そして父親もどきの気配が消えた。
「本当に顔が崩れるのを感じた」
それは言葉では言い表せない程に不気味な感覚だったらしい。
グニャリ。
娘の崩れた顔面に現れたのは何だったのだろうか。
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翌日の深夜1時を過ぎた頃、突然携帯が鳴った。
二階で寝ているはずの娘からだった。
私は携帯を取ることなく着信を切り、そのまま娘の部屋に向かった。
「どうしたん?」
尋ねると布団の中から
「そこ、誰もいない?」
と弱々しい娘の声が返ってきた。そことは私が立っている処のことか…?
「何もおらんよ。今、電話してきたよね」
私が言うと、娘は布団をはいで上半身を起こした。
「またお父さんが来た。さすがに今のは夢だと思うけど…でも電話繋がったんだよね…」
説明するとこうだ。
布団に入ってウトウトしていると、また、父親もどきの気配がしたそうだ。昨夜のことを思い出した娘は、顔が崩れる前に自分自身の眼で、父親もどきを確認しようと思ったそうだ。
眼を開けて部屋を見廻すと、部屋のドアの前にそれはいた。
普段私の夫はシャツの中に肌着として紺の丸首のシャツを着ていることが多い。
その紺のシャツを着た上半身だけの父親もどきがドアの前にいた。
父親もどきは出入り口にいるので、部屋からでることができない娘は、携帯で一階にいる私を呼んだということだった。
夢だと思いたい。でも携帯が繋がったということは、現実なんだ。ということらしい。
私が娘の部屋に行った時には、もどきの気配はもうなかった。
取り敢えずその日は娘は部屋の灯りをつけて眠った。
この夜の父親もどき。何より娘が一番怖かったのは、上半身が右胸から左側の腹まで紺のシャツごと斜めに裂けていたことだった。
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我が家の怪異を解決するべく動いていた頃、(今は諦めてる。というかどう付き合っていくか道を探っているという感じ)舅の伯母が稲荷を祀っていたが、その稲荷が今どうなっているかわからない。ということがわかった。
御上人に勧められて、とある稲荷神社にお参りに行った。そこで、昔お祀りして、今はどこにいらっしゃるかわからなくなった稲荷様の代わりに御挨拶に参ったことを、心の中で伝えるということをしている。
これは投稿済みなので詳細は省くが、この神社の狐がたまに娘の処に来る様で、娘の顔がグニャリと崩れたと聞いた時、私はその狐のことが頭に浮かんだ。娘がどう感じたのかは聞いてないのでわからないが…。
作者國丸
我が家で起こる怪異を、このサイトに投稿して一年が経つ。投稿はあくまでも一部だけなので、私も何をどこまで伝えているのかわからなかったりする。なので説明が不充分だったら申し訳ない。
我が家でおこる怪異の解決を求めて、これまで色々試してきた。
一番の原因は隣家。隣家に集まるモノが、二階のトイレの窓から我が家にやってくる。霊能者の助言で二階のトイレに盛り塩を置いているけど、正直効果ない。
今、家の怪異は、とあるお寺の御上人に相談している。でもやっぱり解決には至らない。
多分、我が家の怪異の原因は一つだけじゃない。
最初の一つが呼水になって、土地だったり家系の因縁だったりが表に出てきてるのかなって思っている。
家でおこる怪異。引っ越しても今更というか、引っ越した先に道筋をつくるだけの様な気がして、無駄な気がする。大切なのはおこる怪異に振り回されないこと。
散々振り回された私が言うのも変な話ですが…。
隣家はこの怪異に気づいているのだろうか…?
子供の内の一人が学校で
「俺のお母さん、おかしい」
とこぼしていたそうなので、思うことはあるのかもしれない。私には、隣家は家族の絆が断ち切れたように見える。今、隣家にいるのは奥さんだけだ。
気の毒に思うが、私にできることは何もない。
唯一の救いは、この怪異が生命を奪うものではないことだろうか。
隣家の奥さんヤバいけど、元気そうだし。我が家も生命を蝕まれてるような感じないし。
訳の分からないモノに真似されてる夫もそこそこ元気だしね。
作品中後半の稲荷神社の狐は下記のきつねのはなしの
《其の七》にあります。
https://kowabana.jp/stories/33352