中編3
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デスノート

ひと昔前、「デスノート」という漫画が流行ったよな?

おれは今もその漫画が大好きでさ。おれは出来損ないの高校生だから、授業中とかも先生に隠れて漫画を読んだりしているんだ。

唯一おれが主人公と同じなのは、この日常に退屈してるっていう、それだけだった。

そんな日々の退屈を紛らわせるために、おれはいろんなやんちゃをしてきたけど、それにももう飽きてきたところだった。

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そんなある日、学校から帰ると、おれん家のポストに一通の封筒が入ってたんだ。その封筒には差出人の記名もなければ、おれん家の住所すら書かれていなかった。

怪しいとは思ったけど、おれは自分の部屋でそれを開けてみることにしたんだ。

そして実際開けてみると、おれは思わず声を出してしまったよ。

同時に思わず立ち上がってしまったため、あやうく机の上のコップのジュースがこぼれそうになったくらいに、おれは心底驚いちまったんだ。

封筒の中には、一葉の写真と、一冊のノートと、そして「デスノートのつかいかた」と書かれた紙が一枚入っていた。

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世の中には、随分とイカした奴もいるもんだと、さっきまでの怪しんでいた自分を忘れて、感心しちまった。もちろん、バカなおれでもそれはただの悪戯だとわかっていた。

黒色のノートはどうみてもコンビニで買えるようなありきたりなモノだし、「デスノートのつかいかた」の文字はWordで作成されているものの、そのフォントは明朝体だった。

「せめて古印体にしろよ!」とおれは誰もいない部屋でひとりでツッコんじまったよ。

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でも、おれはノートを開いてみるとき、内心びくびくしていたんだ。

というのも、もし「デスノート」と呼ばれるノートに自分の名前が書かれてたら、それは少なくともおれに対する殺意が読み取れるし、事実その心当たりがないわけでもないんだ。

さっきも言ったけど、おれは随分とやんちゃをしてきたからね。

でも、いざ開いてみると、ノートは真っ白だったし、おれはせっかくのこの状況を思いっきり楽しんでやることにしたんだ。

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おれは心を躍らせながら、「デスノートのつかいかた」を読んでみた。

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「デスノートのつかいかた

一.殺したい人に、ノートに名前を書いてもらうように頼む

二.その人がノートに名前を書いているあいだに、同封している写真をその人の正面に用意する

三.その人の名前を呼ぶか、その人が名前を書き終わるのを待つ。その人は、顔を上げたときに正面に用意された写真を見てしまう

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四.その写真は「呪われた写真」であり、それを見てしまったその人は死ぬ 」

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「手が込んでるな」

おれはまるで漫画の主人公のように、そうつぶやいて笑った。

たしかに、このような発想はおれには思いつかないが、だからといってこの発想が優れているかといえば、そうではないと思った。

ノートに名前を書いてなんて言われても、まず素直に書く奴なんていないだろうし、依頼する方に殺意があればなおさらだ。

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それに、写真を正面に用意したとしても、その人が必ずそれを見るとは限らないじゃないか。

これでは、せっかくこんなに不気味で見ただけで吐き気のするような写真を用意しても、計画は台無しになるんじゃないか。

「結局、ただの悪戯の域にすぎなかったな」

そういっておれは笑いながらも、少しの時間でもおれを楽しませてくれた、この封筒の主に感謝したかった。

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しかし、この悪戯には、ただひとつわからないことがあった。

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さっきからこちらをのぞいている、あの死神のようなものはなんだ?

二階の自室の窓の外で、あまりにもリアルな実体が、こちらを見て笑っていた。

この悪戯は、はたしてどうやっているんだろうか。最近の科学であれば、こんなことは朝飯前なのだろうか。

バカなおれには、なにひとつさっぱりわからなかった。

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「リュークまで用意してくれるとは、随分親切じゃないか」

とりあえず笑ってみたが、おれは尋常じゃなく喉が渇いていることに気づいた。

だからおれは、机に用意していたジュースのコップを手にしようと試みたが、それが成功することは二度となかった。

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