中編6
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の ぞ い て、る?

なんかの条件が重なった。

そう感じるってだけなんだけど

まあ、それは置いといて

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僕の仕事はこの1週間くらいめちゃくちゃ忙しくなった。

まあぶっちゃけ広告系の仕事なんだけど

緊急事態宣言が20日に明けるから、明けた直後狙いの広告の仕事がけっこうきてるんだ。

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だから今日も仕事終わったのが0時手前くらいで、

そっから車で20分で自宅近くの駐車場まで帰った。

途中でコンビニ寄ったからもうちょっとかかってるかもだけどね。

そこからさらに家まではチャリで帰らないといけない。

というのも僕が住んでるのが家賃2万8千円の学生向けワンルームだからなんよ。駐車場なんてついてないから近くに借りるしかなかった。

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とにかく街灯もまばらな住宅街の中にぽつんとある駐車場に車を停めたら駐車スペースの車止めのとこに停めてるチャリで家に帰るのがいつものルーティーンだ。

駐車場とアパートは川を挟んだ立地になってて駐車場から住宅地を抜けて橋を渡ってすぐを左折すると川沿いに僕のアパートが建ってる。だいたい500mくらいかな。

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今日もコンビニで買った夕飯をチャリに積んでアパートに向かって走り出した。

そんで橋に差し掛かったときなんだけど、なんか変なおばちゃんがいたんよ。

もう夜中の12時過ぎてるし、こんな時間に散歩?と思ってちょっと凝視しちゃってた。

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おばちゃんは言っちゃなんだけど薄汚れたベージュか白の肌着を着て、下世話な想像だけどブラもしてねーんじゃねーのってくらい乳が垂れてた。

このご時世なのにマスクもしてなかったし、なんか違和感があったんよ。

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違和感は大きかったけどあんまり関わり合いにならん方がいい気がした。見るからにおばあちゃんが呆けて徘徊しとるとかやったら危ないから警察呼ぶとかしたろうけどね。

橋でおばちゃんすり抜けてアパートにチャリ停めたときにやっぱり気になるからおばちゃんの方向いてしまった。

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そしたらおばちゃんこっち向いて立ち尽くしてんの。

今さっきまでよろよろ歩いてたのにぴたっと止まってさ。

街灯の光がドブ川で反射してチラチラと姿形がチャリに乗ってるときよりはっきり見えたんだけど、髪の毛はゴワゴワに渦巻くようにボサボサになっててその隙間から片目が爛々とこっちを見てた。

肌着も首元が茶色でヨレヨレで、胸元にかけて食べこぼしみたいに点々と黒いような茶色のようなカスがこびりついてた。

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いや、何見とん。こわいわ。って思って出来るだけ無視するように目線を下げて2階の僕の部屋まで行った。

カギ開けて玄関の電気を付けた。そんでドアノブ掴んだまま頭だけ動かして、2階の通路の柵の隙間からおばちゃんが立ってたとこらへんを見てみた。

チラッと、ほんとにチラッと見ただけなんよ。

そしたらおばちゃんが道路の上に大の字に寝転がってた。

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仰向けに道路に寝てるんだけど頭だけクッと上げてこっちを見てるのが分かった。

やばい、やばい!

絶対おかしい人だ!

僕はすぐにドアを閉めてカギとチェーンをしっかり掛けた。

部屋の中の空気がむわっと暑かったけど、冷や汗が出て背中がゾッと寒いくらいだった。

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とりあえずテレビつけたらよくわからんドラマやってて、腹減ってたの思い出してローソンのカツカレー食べた。

そうやって落ち着いたからか、またあのおばちゃんが気になってきた。

あれって病気かなんかで倒れたんかな?だったら僕が救急車呼んであげんと最悪死んじゃうんじゃないか?

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でも、なんだか不吉な感じがして変な想像をした。

もしかして、今あのおばちゃん僕の部屋の前におるかもしれん。そんな想像。

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「いやいや、ないない」ってマジで声に出してた。動揺してた。

とりあえず玄関ドアののぞき穴(←なんて言うんかわからんけど)から外を伺ってみることにした。

自分でもすげービビってるのがわかる。

『着信アリ』ってホラー映画でドアののぞき穴から針が飛び出すシーンがあってそれが頭をよぎり、だいぶんおよび腰で覗き込んだ。いつでもスウェーでかわしてやるって心構えしながら

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ドアの外側は2階の通路でちょっと黄色っぽい蛍光灯の光で明るい。

通路の柵に背中をもたれさせるようにしておばちゃんがしゃがんでいた。

嘘だろ。と思うや否やおばちゃんの伏せていた顔がこちらを向いた。

「うわっ!」

スウェーもへったくれもない動きで僕は尻餅をついた。

やべーよ。やべーよ。まじで出川みたいな感想しか浮かばない。逆にまだこんなこと考える余裕があるのかな。

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もう恥も外聞もない。とりあえず通報!警察!現実のモノであってくれ!

なんかこうアレ、お化け的なものじゃないことを祈って警察に連絡した。

警察は思ったより早く来てくれたけど

「そのような人は居りませんねえ」

「はあ、すいません。ご迷惑お掛けしました」

「一応、周辺をパトロールして帰りますんで、またなにかあったらお知らせください」

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どっちだったんだよ!僕は内心で叫んだ。

ただのおかしな人だったのかお化け的存在なのかわからなかった。

警察官さんが来てくれたときにドアを開けて周りもぐるっとみたけど確かに誰もいないようだった。

もう、おかしな人だったということにしておこう。

だって明日も仕事だし、お風呂入らなきゃだし

でも、すぐにこれが間違いだったとわかった。

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会社にすっごいかわいい同年代の子がいるから、臭い男とは絶対に思われたくない。

頭の中から今さっきのおばちゃんを追い出して、かわいいあの子をただただ考える。そうやって意を決してシャワーを浴びた。

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シャンプー、一番こわい。だって目が見えなくなるし

僕のワンルームはユニットバス室の窓が2階の通路側に空いている。つまり今さっきおばちゃんが居たとこと繋がっている。

しっかり窓にカギ掛けて、なにかあっても手で押しのけられるように壁を背にして窓に体の正面が向くようにしてシャワーを浴びた。

こわいけどシャンプーもする。目を瞑り視界が真っ暗になる。

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ごぼっ、ごぼぼっ

シャンプーの泡を流すと排水口が音を出す。

あと少しで頭を洗い終わるという時にその音に異音が混じった。

『の、ぞ、い、て、る?』

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熱いシャワーを浴びているのに背筋に冷感がぞっと走った。

いやいや、聞き間違い、聞き間違い。

排水口の音に違いない。

そう思い込もうとするのだが

頭の中で

『の、ぞ、い、て、る?』がリフレインする。

こわい!こわい、こわい!

目を開けるのかこわい!

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身体から先に洗ったのは正解だった。僕は泡を全て洗い流すと手探りでシャワーを止めて目を瞑ったまま浴室を出た。

バタン!

浴室のドアが閉まる音。

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バタン?ん?

僕は違和感を感じた。

外に繋がる小窓を閉めた浴室は密室だ。

今までの経験上、小窓を閉めて浴室の出入り口のドアを閉めると空気圧でゆっくり閉まってバタンなんて音にならない。

空気の逃げ道があるとすればそれは……

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裸のまま、恐る恐る浴室のドアを開ける。

見るべきは浴室の小窓だ。

ドアを少しだけ開いてその隙間から角度をつけて小窓を見る。

すると小窓が、すこし空いていた。

しっかり閉めたはずなのに、ロックまでしたはずなのに

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小窓の向こうは真っ暗、いや、まっくろ?

視線を小窓の空いた隙間に集中させる。

すると、カッと斜めに大きな目玉がまっくろな隙間から現れた。

「うわあああ!」

バタバタと後ずさった。

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冷静に考えれば外が真っ暗なはずないのだ。通路の蛍光灯は夜間ずっと点いているのだから。

だったらあの女が窓に顔を密着させていたとしか考えられない。

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浴室のドアに外からカギは掛けられない。ビニールロープで同じ壁面にあるトイレのドアノブと浴室のドアノブをグルグルにくくりつけた。

カギに意味がない相手には効果はないかもしれないが……

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そうやってバタバタとしてたら今だ。もう2時。

話変わるけど怖話で下書きすると真っ暗な背景にタイトルの画面になるよね。

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今も頭の中で『の、ぞ、い、て、る?』と声が聞こえる。

「のぞいてる?じゃねーよ。お前がのぞいてんだろ」

この話、今、なんだよね。

下書きに切り替えたときスマホの画面の黒にあの目が反射して映ったから

だから、お前に言ってんの。後ろで見てるお前

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なにが条件だったんかな。

はあ、なんじゃらほい

Concrete
コメント怖い
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