中編5
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幽霊になった友人

これは僕の友達の友達に起きたことだが、危険が含まれている話であることを先に忠告しておく。

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大学の友達と飲みに行った時に聞いた話である。

夏休みであったのでお互いに持っている怪談を話すことになった。

僕の話はテレビや本で知った話であったが、友達は実際にあったことを話した。

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「この話で出てくることはやっちゃいけないからな」

そう僕に忠告してから友達は話し始めた。

「中学生のころの友人に起きた話。その頃はクラスで怪談が流行っていた。クラス一怖い話ができるSってやつがいて、そいつはいつも昼休憩になると、女子に囲まれながら怖い話をしていた。」

「おれの友人のTはいつも Sを妬んでいた。負けじとTも何人かに声をかけて怖い話をしたのだけれど、Tの話はテレビや本で見たことのあるような話ばかりでウケは良くなかった。その点、Sがする怖い話はオリジナリティがある新鮮な話ばかりで大ウケしていた。」

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「悔しくてたまらなかったTは自分もオリジナルの怖い話ができるようになろうと考え、降霊術やら心霊スポットやらを調べるようになった。」

「Tはその調べたことをみんなに話して回ったけど、みんな興味を示さなかった。実際に降霊術をしたい人も心霊スポットに行きたい人もいなかったのだ。話として怖い話を聞きたいだけで、実際に怖い目に遭いたいわけではないというのがみんなの意見だった」

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「Tはオリジナルの怖い話をするためには霊体験を自身でするしかないと考え、降霊術を片っ端から試していた。有名なもので言えばコックリさんやひとりかくれんぼをしていた」

「そういった降霊術をやってみたという話はみんなのウケが良く、Tは徐々に人気になっていた。同時にSの人気は減っていった。Sの話は面白い作り話だけど、Tは実際にやったことを話しているからリアリティがあり面白い」

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「そうしてTは多くの降霊術を試していき、次の日の学校でそれを話した。毎日、新しくてリアリティのあるTの話は高く評価されいつの間にかTの周りにたくさん人が集まっていた」

「それを離れた位置から見ていたSはTに激しく嫉妬した。SはTよりも怖い話ができるように考えた。次の日からSの様子がおかしくなった」

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「Sは学校で誰とも話さなくなり、いつも一人で行動するようになった。奇妙なことがあり、Sはクラスの人とは話さないが誰もいない空間に向かって話したり笑ったりしていた。移動教室で廊下を歩いているときも、誰かと話しているようにしながら歩いていた」

「そうした、気味の悪い行動からSは孤独になっていた。反対にTはクラスの中心人物となり毎日多くの人に囲まれて生活をしていた」

「やがてSは不登校になり、完全に学校から姿を消した。Tはそんなことは気にせず、学校生活を満喫していた。不思議なことにみんな一時期Sというクラスメイトを忘れてしまっていた」

「クラス一人気があったSだったが、不登校になってから誰もSのことを話さなかった。奇妙だったのが記憶からSが消えていたようだったこと」

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「Sが不登校になってから3ヶ月ほど経った頃、Tの机の中に手紙が入っていた。それはSからだった」

Tは「Sからの手紙があったんだけどー!気になるやついるー?」と教卓に立ちみんなに向けて言った。」

みんなは一斉にTの方に注目した。Tが人気者であったことも注目した理由だが、それ以上にみんな「S」というワードに反応したのだと思う。Tはみんなの注目を浴びながら手紙を開き読み始めた

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「Tくんへ。残念ながら君はこの世を去ることになります。今、この手紙が君の元に届き君が僕の文章を読めていることが何よりの理由です。僕の怖い話がオリジナルなものだった理由を知っていますか?

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それは僕には霊感があり、毎日のように霊体験をしていたからです。だから毎日新しい怖い話ができていました。霊体験は僕にとって怖いもので嫌でした。そこで僕はみんなに体験したことを話すことで怖さを紛らわせていました。

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ですが君が降霊術を始めてみんなに話し始めたことがきっかけで、僕は話を聞いてくれる人たちを失いました。僕は何とかみんなを取り戻そうと思い、何か良いアイデアは無いものかと放課後一人教室に残って考えていました。

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すると、誰かが僕の後ろから「やあ」と声をかけてきました。振り向くと僕と同い年くらいの少年が立っていました。その子は「何か悩みでもあるの?」と聞いてくれたので、僕は悩みを相談しました。Tくんが降霊術をして人気になったことを話すと、その子は「本当の幽霊を連れてくるのはどう?」とアドバイスをしてくれました。

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どうやって連れてくるのかと尋ねたらその少年は「僕だよ」と言いました。僕はびっくりして固まりました。しかし幽霊と言っても見た目が怖くないので少ししたら平気になりました。日頃から幽霊を見ているから慣れていたのかもしれません。幽霊少年にどうやって霊を連れてくるのかと尋ねたら「幽霊と話すことだよ、君は友達と遊ぶ時に話しかけるだろう?それと同じさ」そう言いました。

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既に条件を満たしてしまった僕は幽霊をその少年を連れて学校に行くことにしました。学校でその子と話しているとみんなが集まってくれるかなと思いましたが、反対により孤独になるだけでした。当たり前のことですが、霊感の無い人に幽霊は見えるわけがありませんでした。

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みんなの目には独り言を言っているように見えたのでしょう。クラスのみんなの視線はイタイ人を見るようなものに変わりました。当然、クラスで浮いた存在になります。でも僕は平気でした。幽霊ではあれ友達がいたのだから。

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ただ、僕から居場所を奪ったTくん、あなただけは許すことができません。そこで幽霊少年にTくんに仕返しがしたいと言うと、「彼も僕と同じように幽霊にすれば良いんだよ」そうアドバイスをくれました。

どうするのかと尋ねたら「彼の場合、既にたくさんの霊が憑いているから簡単だね。僕の言う通りに文字を書いて手紙を出せば良いよ」僕は言われた通りにしました。

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幽霊少年が言うには幽霊を視認できる人、会話できる人、幽霊の文字が分かる人、そういった幽霊とコミュニケーションが取れる人は生きていても幽霊の仲間になれるそうです。しかもT君の場合、降霊術の中でも危険な「ひとりかくれんぼ」「コックリさん」などをしているため、あっちの世界に飛ぶのが簡単なようです。

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ちなみに僕はもう既に幽霊少年と一緒で幽霊です。死体は見つかっていないと思うのでまだ「失踪」という扱いになっています。ただ、僕は既にこの世を去っています。Tくんも早くこっちの世界に来られると思います。おそらく君は降霊術をした代償でとても怖いところに行くと思います。もしも同じ場所であったなら友達になりましょう Sより」

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長い手紙を読み終わったTは「おれが幽霊?なわけねーだろ(笑)」とバカにした様子で言った。

しかし内心では怖いとも思ったようで、おれや他のクラスメイトにSからの手紙を見せてきた。

不思議なことに自分も含めT以外には何も書かれていない白紙に見えた。

みんなは「いやー、今日もTの話面白かったわ。怖い話の天才やなー」と言うだけだった。

ただその日以降Tが学校に来ることは無かった。

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