短編2
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痛みの壺

これは同僚が曾祖母から聞いた話だそうです。

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これは大正時代の頃の話らしい。

今で言うペインクリニックだっけ?

そういう事をやっていた拝み屋さんみたいな方が居たそうだ。

子供が骨折したので痛みを和らげて欲しい。

末期癌の老人を苦しまない様にして欲しい。

痛みの壺という呪物を使って依頼者の痛みを和らげていたそうだ。

恐らく催眠術みたいなもんだったんだとは思うが。

曾祖母の祖母が病でいよいよという時にこの人が呼ばれた。

曾祖母によると優しそうな顔をしたお婆さんだったらしい。

曾祖母の祖母は涙を流し拝み屋さんに感謝しながら臨終した。

しかし曾祖母の叔母はこの拝み屋さんを全然信じていなかった。

まぁ催眠術とオカルトの境界は当時はまだ曖昧だったからね。

叔母は拝み屋さんへの報酬を渋った。

拝み屋さんは「お気持ちだけで結構ですので・・・」

と言って怒りもせずにそのまま帰ろうとした。

曾祖母が「交通費だけでも・・・」と言おうとした瞬間叔母は

「ふざけんじゃないよこの詐欺師が!こんなもん・・・」

と言って拝み屋さんから痛みの壺を奪い取った。

すると拝み屋さんは血相を変えて

「そ、それに触っちゃなんねんだ!慶長の太閤様の御代からのこの世の痛み辛みがぜんぶ溜まってんだ!あぶねぇんだよ!」

叔母はゲラゲラ笑いながら「どうアブねーってんだい?」と言いながら痛みの壺に左手を突っ込んだ。

その刹那、叔母は痙攣しながら奇声を発して昏倒した。

目の焦点は寄り目になっていて「イエェェェオオオオオゥゥ」と意味不明な言葉を呻きながら口から泡を吹いていた。

叔母には障害が残り生涯正気を取り戻す事は無かったという。

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