短編1
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果樹園

親戚のお孫さんから聞いた話です。

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愛犬のポチ子を連れて田舎の雑木林で遊んでいたら変な果樹園に迷い込んだ事があった。

そこでは作業着姿のお爺さんが深い霧に包まれた果樹園をたった一人で手入れしていた。

いかにも好々爺風のお爺さんは私を見てもニコニコしているだけで何も咎めはしなかった。

一体どんな果物が栽培されているのか興味が湧いて周囲を見回す。

見慣れない形の果実だったがソルダムかプラムの様に思えた。

これだけ広ければ一個位摘まみ食いしてもバレないだろう。

そんな邪念を胸に秘めながら紫色に熟れた果実を目にした途端私は悲鳴を上げそうになった。

あのお爺さんのニコニコ顔が果実にクッキリと浮き上がっていたのだ。

何も知らないポチ子がニコニコプラムにかぶりつく。

嫌な予感がして私はポチ子を置いて逃げ出した。

果樹園は広大で元の雑木林に辿り着くまで何分も掛かった。

ウォン ウォン

後ろからポチ子の嬉しげな鳴き声がする。

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振り向くとポチ子の顔はあの強烈なニコニコ顔をしていた。

口にはあのニコニコプラムを何個かくわえている。

私はポチ子からも逃げた。

その日以来ポチ子とは二度と再会出来なかった。

ポチ子は今でもあのお爺さんと果樹園で一緒に暮らしているのだろうか?

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