208号室のユカリは一度寝ついたら朝までぐっすり。よほどのことがない限り、夜中に目を覚ますなんてことはない。
でも、今晩はそうじゃなかった。
目が覚めた時には、まだカーテンの外は真っ暗だったのだ。
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別にトイレに行きたいわけでもなくて、ユカリはとりあえず何時なのだろうと時間を確認した。
スマホのホームボタンを押すと、エメラルド色の背景に白の文字で、4:44が浮かびあがった。
ユカリは思わずどきりとした。
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こんな不吉な時間に起きてしまったのは、本当に偶然なのだろうか?
何か、よからぬことが起きたりして。
彼女はしばらくして真っ暗が怖くなり、部屋の電気をつけようとスイッチに手を伸ばした時、
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「ぎゃあああぁぁあ‼︎」
隣の部屋から、女性の大きな叫び声が聞こえた。
やっぱり不吉だ。もう嫌だ。
それから彼女は布団をかぶって、朝までガタガタと震えていた。
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209号室のレイナは少し複雑。
彼女はどんな時間に寝ついても、朝の4:44に自然と目が覚めてしまうのだ。
それだけならよかったのだが、4のゾロ目という不吉な時間にふさわしく、毎日何かしらの心霊現象が起こった。
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その多くは起きてすぐ、もしくは2分以内に訪れた。
棚に置いてあった物が落ちたり、カーテンが揺れて隙間から白い顔が覗いたりと、普通なら怖くてたまらないような出来事こそが、彼女にとっては日常の風景であった。
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しかし、この日は何も起きなかった。
とっくに4:44は過ぎているのに、待っても待っても物音ひとつしなかった。
もしかして電気をつけたら、部屋の中央に何かいたりして。
彼女はそう思ってスイッチを押したが、やはりそこには何もなかった。
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「ぎゃあああぁぁあ‼︎」
何も起こらないということが彼女には怖くて、無意識のうちに、叫んでいた。
作者退会会員