日常怪談「カップラーメン」

中編3
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日常怪談「カップラーメン」

1.

カップラーメンに湯を注いだ。

3分待って蓋を開けたら空だった。

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2.

昼過ぎに起きた俺はカップラーメンで昼飯を済まそうと考えた。

湯を沸かして、注いで、そして3分後、空腹な俺は夢中になって麺をすすった。

ふと窓の外を見ると、なぜか夜になっていた。

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3.

コロナ禍による夫のリモートワークが、最近は慢性化してきている。

ある日、用事で朝から外に出ていた私は、帰ってくるなり、空になったカップラーメンの容器が机の上に置いてあるのを見た。

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夫が昼食に食べたのだろう。自分で洗って片付けるくらいしてほしい。

そう思いながらも容器に手を伸ばすが、その容器の上には箸が一本しかのっていなかった。

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4.

キッチン上部に取り付けられた棚から、カップラーメンを取り出そうと手を伸ばした。

手に取ったカップラーメンは石のように重たく、驚いた私は床に落としてしまった。

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5.

カップラーメンに湯を注いだ。

3分経ったので確認したら蓋がくっついていた。

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6.

久しぶりにカップラーメンをつくってみた。

味は美味しいが、意外と量が多かった。

こんなにも、多かったっけ?

その後、食べても食べても一向に減らなくて、諦めて放置したら3分で倍の量に増えた。

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7.

ふと、買いだめしていたカップラーメンの存在を思い出した。

今日の昼はそれでいいか。

そして棚の奥から引っ張りだしたその容器には、なぜか手形が滲んでいた。

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湯を入れて3分後、その手形が徐々に消えていくのを見て、「タイマー要らずだな」と俺は思った。

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8.

とある番組の視聴者プレゼントに応募してみたら、見事に当選してカップラーメン1年分が送られてきた。

その数、なんと1100個。

まさか3食ともカップラーメンにしろというのか。

俺は思わず苦笑する。

ダンボールのひとつには、「家族3人で召し上がってください」と書いてあるメモが入っていた。

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なるほど3人分なら、この量にも頷ける。

そう思って安堵したのも束の間、俺は家族構成について、応募のハガキに記入しなかったことを思い出した。

もう一枚入っていたメモには、「娘さんの入園祝いもかねて」と書かれていた。

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9.

もし、ここまでの話をカップラーメンに湯を注いだ待ち時間に読んでくださった皆さま、ご安心ください。次で最後です。

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10.

カップラーメンにまつわるこんな怖い話がある。

というのも、カップラーメンに含まれる塩分量は、一般的に4〜6g、多いもので8gになるという。

ちなみに1日の塩分摂取量の目安は、5g未満である。

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これはWHOが掲げた目標値であり、日本の厚生労働省が指定する数値は少し甘く、成人男性で8g以下らしい。

しかしいずれも、カップラーメン一杯でほとんど1日分の塩分を摂ってしまうことに変わりはない。

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また、塩分の過剰摂取による健康へのリスクとしては、高血圧や動脈硬化、腎臓病や胃がんなんかが挙げられる。

なんでも、生活習慣病が原因で亡くなる方は、日本人の死因の中でも結構な割合を占めているようで…。

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…ごめんなさい。つい長くなってしまいました。

もうとっくに出来上がっていて、早く食べないと、麺が伸びてしまいますよね。

私はここで退散させていただきます。

さあ早く、どうぞ召し上がれ。

Concrete
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