中編3
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二人目が生まれたら

内川さんは幼少期の頃、ある男の子に付き纏われていた。その子はKという名前だった。少し変わった子で周囲から煙たがられていた。内川さんは気の優しい女の子で、そんなKにも優しく接していた。彼は余程それが嬉しかったのだろう。気づけば毎日、彼女に付き纏うようになったそうだ。小さな町で、進学する学校も同じだ。それが余計に拍車がかかった。

高校に上がってしばらくの事。

成長した内川さんは、Kの気持ちが自分に対する恋心なのだと勝手に理解していた。しかし好みでもない。好きな男の子も別にいた。だからあまり相手にはしていなかった。

ある日、Kに校舎裏へ呼び出された。

彼女は「ついに告白されるのか」と複雑な気持ちになった。でもここで強く断れば関係を断ち切れる。そんな期待もしたそうだ。放課後、誰もいない校舎裏に向かうとKが笑いながら立っていた。Kは緊張した雰囲気のカケラも見せない。内川さんは「今日は何の用?」と尋ねた。

すると彼は黄ばんだ歯をチラつかせ、「子供の頃から、ずっと君を殺したかったんだ。そろそろ我慢出来ない。だから殺させてよ」と弾ける様な笑顔で話した。

彼女にはそれが本気だと理解していた。

Kは冗談を言う様な人間ではないと、幼い頃から知っていたからだ。内川さんは止めるよう懇願した。すると彼は悲しそうな顔しながら「どうしたら殺させてくれるの?」と力なく話した。「私がいつか好きな人と結婚して子供が二人生まれたら。そうなったら殺していいから!」と思いつきで提案した。この場をとにかく凌ぐため、必死だった。

Kは思いの外、すんなり受け入れてくれた。

「分かった。なら約束だよ」そう呟き、その場を去った。その後、Kは学校に来なくなり、気づけば自主退学していた。クラスメイト達も理由は分からなかった。内川さんは内心ほっとした。誰にも相談出来ず悩む日々がやっと終わると思ったからだ。きっとKもまともな人間だったのだ。あんな事を自分に打ち明け、後悔したのだろう。それからは楽しい人生を過ごした。

好きな男性と結婚し、生活も安定していた。

あの事を思い出したが、時折行われた同窓会に行っても、Kは現れる事もなかった。完全に記憶から彼が消え去った。そんなある日、第一子が生まれた。同級生達と繋がったsnsに、出産の報告をした。すると一番に見知らぬ名前からダイレクトメールが来た。

メールを開いた。そこには「出産おめでとう。あと一人だね。内川さんとの約束を果たせるのを楽しみにしてるね。」というメッセージと、刃物らしきものが机に置かれ、あの頃と同じ黄ばんだ歯をチラつかせたKの写真が貼り付けられていた。内川さんは絶望した。彼は約束を覚えていた。そして自分を殺す事を待ち望んでいる。

子供が二人生まれたら。

誰にもその事を言えず、未だに悩んでいる。

最近、旦那が二人目を作ろうと提案してきた。

二人目が生まれたらKはきっと自分の前に現れるだろう。内川さんは青ざめた唇で私に話した。

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@あんみつ姫
コメントありがとうございます!いつも返信遅れてすみません😂たまにしか確認出来ず。この話を聞かせて頂いた時、言葉にし難い気持ち悪さと恐怖を感じました。それを文章に少しでも表現出来ていたのなら嬉しいです。男の狂気のせいで内川さんの人生の歯車が完全に止まってしまうのもやるせ無い気持ちになります。

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