「さぁ、今日はなににしようかな」
安いアパートの台所は、西日が目に痛いくらい。
でもここは、誰にも邪魔はされない私と彼の愛の巣。彼のために夕飯を作るのが、私の何よりの楽しみなのだ。
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「煮るか焼くか……揚げても美味しいかな?」
突如やってきた大量の食材。ビックリしたし怒りも湧いてきたけれど、「彼のために、いかに美味しく料理するか」を考え始めたら、夢中になってしまった。献立を考えるのも楽しい時間だ。
ふと、リビングから視線を感じた。
そちらを見やると、食材が━━全裸で猿ぐつわをはめた女が、こちらを怯えた目で見つめていた。
私がニコリと微笑みかけると、女は喉の奥で小さな悲鳴をあげる。
彼女はサプライズとかで、彼の帰りをベッドでこっそり待っていたのだ。こんなこと、初めてじゃないんでしょうね。
でも、おあいにくさま。今日、私が半休を取ったこと、知らなかったみたい。
彼女の涙の浮かべた目を見たとき、いいアイデアを思いついた。
「そうそう、ユウくんの大好物を忘れてた!」
包丁をひらめかしながら言うと、浮気女は鼻水まで垂らして顔がグチャグチャ。思わず吹き出しそうになるのを堪え、私はスマホを取り出した。
「あ、もしもしユウくん、今日は早く帰れそう? よかった。今日の夕食は、ユウくんの大好きなポテトサラダにしようと思って。ホクホクに茹でたのを、皮を剥いて丁寧につぶして、あなたの大好きなクリーミーなポテトサラダにしてあげるから。うん、楽しみにしてて。早く帰ってきてね!」
作者カイト
お久しぶりです、カイトです。
私事の忙しさとスランプで、随分ご無沙汰しておりました。
まだ絶賛迷走中ではありますが、このまま放置しておくとパスワードすら忘れかねないと、今回苦し紛れのお目汚しを失礼いたします。