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中編5
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半裸な女

やあ、ロビンミッシェルだ。

この世で本当に恐ろしいのは、幽霊ではなく人間なんだとよく聞くが、今回は俺の舎弟である龍が実際に体験した恐ろしい実話をここに綴る。初めに言っておくが、龍はとんでもないバカだと言う事を念頭に入れておいてから読み進めて頂きたい。

先週の深夜二時頃、コンビニで煙草を買った帰り道にそいつはいた。

ガリガリの女が一人。下着姿で暗い神社の駐車場に突っ立っている。手にはアイスピックのような物を掴み、その足元には小さな白い塊がいくつも転がっているのが見えた。

龍はバカなので話のネタになるかと思い、遠目から写メをパシャパシャ撮ったり「ばーか!ぶーす!」などと揶揄いはじめた。

すると突然、そいつは奇声をあげて猛然と追いかけて来たと云う。

暗闇からものすごい勢いで走り寄ってくる真っ白でガリガリな半裸女。まさに異様度と共に危険度はレッドゲージを振り切りMAX。

全身に鳥肌が走り、龍は全力で逃げた。

女「うわおああああわあはああおわああああおあああ!!」 ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!!

逃げ足だけなら関西で五本の指に入ると言われる龍が本気の走りを見せても、背後から聞こえるその奇声と足音は一定の距離を保ちながら、一向に離れる様子がない。

女「まあてえええあああわおわああああおあああ!!」 ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた!!

涙と涎。鼻水と糞尿←失礼)を、垂れ流しながら必死で逃げるも、普段の素行の悪さに神が味方してくれないのか、助けてくれる車は愚か、走れども走れども通行人とさえ出会わない。

やむなく龍は雲をも掴む気持ちで、後ろを走る女にこう叫んだ。

「 さっきのはウソ!ウソ!君は可愛い!び、美人だ!色っぽい!スリムで知性を感じる体をしている!君に何があったのかは知らないが、こんな事は今すぐにやめてモデルにでもなった方がいい!そ、そうだ!それがいい!君は… 」

ズザアアア!!!

そこまで言ったところで、ついに龍は足をくの字に捻りすっ転んでしまった。

「 痛えええ!折れた!!!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた…

ぺた!

受け身が取れず、みごと顔面からアスファルトにダイブした龍だったが、すぐ隣りに立っているアイスピック女への恐怖心の方が強く、意識はそちらに向けたまま最終手段「死んだふり」を決め込む事にした。

「 ………… 」

「 ねぇ…ほんと?」

女が話しかけてきた。

「 ………… 」

「 ねぇ… さっき言ってた事って…ほ、ほんとなの?モデルがどうとか…本心なの…?」

「 ………… 」

龍は死んだふりをしている事を忘れて、目を瞑ったままうんうんと頷いた。

「 こんな…私が…美人…?それほ、本気で言ってる…の… 」

龍は死んだふりをしている事を忘れて、下を向いたまま寝言っぽくこう言った。

「 ま、間違いない。き、君は間違いなく美人だ!言うなれば原石。君はまだ自分の魅力に気がついていないだけで、世界は君のような次世代の美人を待っているんだ。大丈夫!君は可愛い!もっと自信を持って!」

「 ほ…ほんと…?私が…美人…ひ…美人、美人、美人… 」

女は信じ始めているようだ。

龍はここがチャンスとばかりに畳み込む事にした。

「 あ、当たり前じゃないか!俺は嘘は言わない!君は絶世の美女だ!君に比べればティラーヌブロンドなんて糞だ!いや生ゴミ以下だよ!あの石原さとみでさえも君には勝てない!す、少なくとも俺は君の様な女性が好きだ!」

龍は意を決して顔を上げた。

「 ………… 」

「わたしが…好き?」

しかし、そこには龍の顔を覗き込む絶世の糞ブスがいた。

近くで見ると見るにたえない顔だった。ハリセンボ◯の細い方が天使に見えるぐらいの糞ブスだ。 前歯は神経が死んでいるのか真っ黒になっている。

そして、その口から発せられた次の言葉に龍の脳は完全に停止してしまった。

「 じゃ、じゃあ…あたしと…付き合ってくれるの…?あたしと… 」

「 ………… 」

「 あ、あなた言ったじゃない…あたしの事…すきだって…」

ブルブルと震える手で鼻先に尽きたてられたアイスピックの先端を見ながら、龍は死を覚悟し、顔を横に振った。

肩を揺すられて目を醒ますと警察官が立っていた。周りを見渡すもあの糞ブスの姿は見当たらない。

「 た、たた、助かったのか?」

とりあえず事情を説明した後、警察官とともに神社の駐車場に戻ってみると、あの女が立っていた場所には白い子猫の死骸がいくつも転がっていた。

龍は吐きそうになりながらも、その亡骸を一つ一つ丁寧に埋めてやったと云う。

龍はグラスビールを一気に飲みほし、深く溜息をついた後、遠い目をしてこう語った。

「 わめきながら追いかけて来るアイツはマジで半端なく怖かったすよ!一歩間違えてたら俺絶対に殺されてましたからね!あんなとんでもねぇブス見たの生まれて初めてだったんすけどなんでか微妙に顔が思い出せないんすよね…

俺夢でも見てたんすかね?もしかして幽霊とか?いや、それはないか!

でもまぁアイツに比べれば幽霊なんて可愛いもんすけどね!」

「 はは、お前ちょっと言い過ぎだろ。いくら精神逝ってる女だからって糞ブス呼ばわりはちょっと酷すぎんぞ、だからお前は女にモテねぇんだよw 」

「 いや、兄貴マジなんですって!」

カラン

鈴の音とともに店の自動ドアが開いた。

「 いらっしゃいませーー!お一人様ですか?カウンター席へどうぞ!」

威勢のいい店主の声が店内に響く。

龍とともに無意識にそちらへと目をやると、サイズの合っていないブカブカのトレンチコートを来た女が一人、入り口付近に突っ立ってこちらを見ている。

前髪パッツンの腰まで伸ばした黒髪。頬は痩けていて、焦点が合っていない。肩が微妙に上下している。震えているのか?なんか笑っているようにも見える。

そしてなぜかその女は店主の誘導を無視して、ゆっくりと此方へと近づいてきた。

「 …あ、兄貴…」

龍が女を見ながら震えている。

ぺた。ぺた。ぺた。

よく見ると女は靴を履いていない。鉛色の血色の無いその顔は喜怒哀楽を無くしたかの様に完全な無表情で、真っ直ぐに龍だけを見つめている。

しかし何よりも一番の驚きは、その顔面が今までの人生で出会った事が無いほどの宇宙規模の糞ブスだという事だった。

ぺた。ぺた。ぺた。

女は固まる龍の両肩にそっと手を置き、耳元に顔を近付けてこう囁いた。

「 ねぇ」

「 あたし。本当に。綺麗? 」

「あ、兄貴〜」

俺は足元に置いてある空のビール瓶をそっと掴んだ。

Concrete
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むうお兄様。最高の褒め言葉をベリー見取り図の漫才最高サンクスです。
やはり、僕にはこの路線が一番あっているのでしょうか?うーむ、実は最近、素晴らしい作家様と出会いまして、なんとか僕もあんな作風を真似したいと思い、現在、猛練習中ですが、たぶん無理だろうなー。

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あんみつお姉様。作中でのロビンは人をブス呼ばわりする最低な人間ですが、リアルロビンはそんな事は致しません。この世の女性の中にブスなど一人もいません。
この世の女性は全て僕の恋人です…ひひひのひ…

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