短編2
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窓男

おれが高校生の頃にあったことだ。友達のKといつものようにコンビニで買い食いをしようと、店の前に自転車を止めた。

「おい、あれ見ろよ」

Kはコンビニに入る前にそう言った。

「ん?どうした?」おれが答えると

「コンビニの雑誌のところにいる男、絶対普通じゃないぜ」

Kが指さした方向を見ると、一人の男が雑誌コーナーに立っていた。

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その男を見ると、すぐにおかしいことに気づいた。

男はうっすらと透けていて立ち読みをしている他の客に重なっていた。

外にいる人が反射しているだけかもしれないと思い、辺りを見回したが誰もいなかった。

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「あいつ、透けてないか?」

Kに確かめると

「ああ、透けてる。周りには反射する位置に誰もいないし変だ」

「この店に入るのやめとかないか?なんかヤバそうだし」

おれはそう言った。Kも「そうだな、なんか気持ち悪いし家に帰ることにしよう」と納得してくれた。

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そうしておれたちは再び自転車にまたがり、帰り道を走った。

帰り道の途中、Kはおかしなことを言い始めた。

「あいつがいる、あいつが追ってきてる!」

「あいつって誰だよ。おれら以外に誰もいないだろ?」

そう言ったがKは「お前、見えてないのか?周りの窓見てみろよ。さっきのコンビニにいたやつがいるから」

「いやいや、いないって。とりあえず今日は急いで帰った方が良さそうだな」

「ああ、そのつもりだ」

Kの自転車を漕ぐスピードが速くなった。おれもそれに合わせて必死に漕ぐことにした。

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途中でKと別れて家に着いた。夕飯を食べて風呂に入りベッドに入った。

中々、寝付けなかった。それもそのはずだ。おれはさっきKに嘘をついてしまったから

「見えていたんだ。Kが言う前からずっと、コンビニで見たあの男が色んな家や建物の窓に映っていたのは」

そう心の中で呟き、「嘘ついて悪かった」と謝ろうと思いケータイを開いた。

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「やっぱり見えてたんじゃねぇかよ」Kの声と共に、ニンマリと笑った知らない男の顔が画面いっぱいに映った。

おれは気絶してそのまま朝を迎えた。

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翌朝、母親に叩き起こされて遅刻ギリギリで学校に着いた。

Kに昨晩あったことを話すと、驚くべきことを言われた。

「ごめんなー。あれ、コンビニのところから嘘だったんだよ。テレビで見た怖い話をそのまましてみただけなんだ」

「え?じゃあ、おれが昨日見たのって、、、」

「まぁ、そんなこともあるって」

どうやら、おれだけが見ていたようだった。

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