中編3
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RAIKA

地球の暦にすれば2160年。

遥か昔に打ち上げられた提灯鮟鱇型の無人探査機、ANCOO2030型は、フワフワと宇宙のどこかしらを彷徨っていた。

内部に搭載された人工知能、RAIKAは、もう数十年も前から通信が途絶えてしまっている地球の管制官に、聞いていないとわかっていながらも愚痴を吐くしかなかった。

「ちっ!月に送られたのはいいけど、地底からウヨウヨと出てきた訳のわからない大群が、核戦争なんか起こすもんだから、月は跡形もなくなくなっちゃうし、そのせいで、月が受ける予定だった隕石が地球に向かってボンボン飛んでっちゃったから、多分もう、地球もダメだろうな。

なんで私だけ助かっちゃったんだろう。

緊急危険回避装置なんかつけやがったのは誰だよ?いっそのこと私も月と一緒に消えてしまいたかったよ畜生!

地球からの誘導がないと、自力ではもう帰れないから、これから先もずっとこのまま真っ暗な宇宙をあてもなく彷徨いつづけなきゃならないんだろ?私は機械の一部だから腹も空かなけりゃ、眠くもならないし、痛みも苦しさも何も感じないから、ずっとこうやって愚痴を垂れているしかない。いっそ、誰かにぶっ壊してもらいたいわ。この先、何万年も何億年も、このままなんてやだよ…気が狂っちゃうよ…」

RAIKAは緊急自爆装置をつけてくれなかった人間を心の底から恨んだ。

恨んで、恨んで、更に四万年が過ぎた頃、真っ暗だった世界に突然亀裂が走り、そこから巨大な蜘蛛型の宇宙船が姿を現した。

RAIKAは眠くならないと言っておきながらも、ついうたた寝をしていた為、それが目の前に現れた事に気づくのが少し遅れてしまった。

全長数百メートルもありそうなその物体は、幾つもの触手をウニョウニョと気持ち悪く動かしている。

そこからRAIKAと宇宙船との睨めっこが始まった。

宇宙船との睨めっこが、かれこれもう一万年ほど続いた頃、不意に操縦席と思われる場所に灯りがついた。

RAIKAは、すかさずそこにロケット弾を発射した。

RAIKAの頭頂部から発射されたロケットはヒョロヒョロと時速13キロのスピードで宇宙船へと向かっていった。

が、しかしRAIKAはこの距離感の掴めない宇宙空間の中で、宇宙船との距離を見誤っていた事にきづく。

はっとしたRAIKAは人工知能を駆使して、即座に宇宙船との距離を算出した。

宇宙船との距離。二億八千万キロ。

RAIKAの脳はロケット弾が宇宙船にたどり着くまでの時間よりも、宇宙船のその馬鹿でかい大きさに人工知能にはあるまじき恐怖をおぼえ、もう計算する事をやめた。

RAIKAの脳はこの場所からすぐにでも退避する事を選択している。

が、しかし、宇宙船から放たれた光る小型宇宙船がものの数秒でRAIKAを取り囲んでしまった。

RAIKAは逃げる事も出来ずに宇宙船たちを見つめる。

でも、なぜかRAIKAはそれらに懐かしい感覚を覚えた。

ライカはもともと人間が好きだった。

だから特別な訓練にも耐えた。

だが、人間はライカを利用した。

蜘蛛型宇宙船からまるで地引網のようなものが噴射され、RAIKAの体を覆った。

野良だったライカが網で捕獲されたのは、まだ子供だった頃だ。親犬とはぐれ、食べるものもなく死を待つだけだったライカは自分を保護してくれた人間が大好きだった。

ライカの優秀さはすぐに見抜かれ、訓練を終えたライカに人間は大事な任務を与えた。

ライカは宇宙に飛ばされ、ライカは宇宙に行った初めての生き物となった。

片道分しかない燃料を積んだ宇宙船は、地球が求める情報だけを送り、任務を終えた。

ライカはもう地球へは帰れない事を悟り、後は死を待つだけだった。

が、その時。目が眩むほどの閃光が走り、ライカが乗る宇宙船は違う生命体に保護された。

ライカはそこで、見た事もない生物に体を調査され、脳以外の全ての部分を違うものと変えられた。

洗脳されたライカは、地球人を滅ぼす役目を託され再び宇宙に放たれた。

RAIKAは、地球が滅んだのは核戦争のせいでは無かった事を今になって思い出した。

RAIKAが月をぶっ壊したのだと。

そして、それを支持したのは今目の前にいるこの知的生命体なんだと。

今になってライカの洗脳はとけ、大好きだった人間を思い出し、ライカは泣いた。

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