長編8
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蛇目

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私の名前は凛。

郊外の小さな小学校で教師をしています。

小学校の教師は毎日忙しく、とても大変な仕事だけど、

昔から憧れの仕事だったので、毎日が楽しいです!

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「凛先生!凛先生!大変だ!」

「どうしたの慶太くん?そんなに慌てて。」

「いそいで来てよ!祐希ちゃんが大変なんだ!」

ある日、教え子の慶太くんが放課後、私のところに慌ててやってきたのです。

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その場に駆けつけると、クラスで人気者の美少女、祐希ちゃんが気を失って倒れていたのです!

「祐希ちゃん、どうしたの!?大丈夫!?」

祐希ちゃんに声をかけますが、返事はありません。

「大丈夫、心臓は動いてる。他の先生に呼んで救急車を呼んでもらって!」

「わかった!待ってね!」

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慶太くんが去ると、私は祐希ちゃんが何かを強く握りしめているのに気づきました。

その手を開いてみると…

「ひいいいっ!!!」

私は驚いて、のけぞってしまいました。

祐希ちゃんが握りしめていたのは、大きなヒキガエルでした。

ヒキガエルはまだ生きていて、茂みのむこうに逃げていきました。

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すぐに救急車がかけつけ、祐希ちゃんは病院へと運ばれていきました。

私は付き添うことにし、その間に慶太くんに話を聞いていました。

「祐希ちゃん、ヒキガエルを見た途端、急に飛びついたんだ。僕が何してるの?って聞いたら、食べるのよ。蛇はヒキガエルが大好物なんだとか、訳がわからないことを言うんだ。」

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「僕がやめなよ、かわいそうだよって言ったら、祐希ちゃん正気に戻ったらしくて、そのカエルを見てびっくりして気を失っちゃったんだ」

私は訳がわかりませんでした。

一体、どういう事なの…?

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「特に身体に異常は見られませんね。しばらく安静にしてください」

病院のお医者さんは、そう言ってくれました。

祐希ちゃんは、病院のベッドで眠っています。

でも、一体なぜ祐希ちゃんは急にヒキガエルに襲いかかったりしたんだろう…

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「凛先生、ですよね?」

「あ、はい!」

病室で祐希ちゃんを見守っていたところ、声をかけられて振り向くと、そこには綺麗な若い女性がいました。

「美月です。祐希の母です。祐希がいつもお世話になっております」

「あ、お母さん!あまりにもお若いのでびっくりしました!」

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「ありがとうございます。話は慶太くんから聞いています。それで、祐希の件なんですが…」

「はい…」

「こんな事を言うと笑われるかもしれませんが、それは呪いというやつかもしれません。私、心あたりがあるんです」

「呪い…?」

私は美月さんから、話を聞くことにしました。

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「恥ずかしいお話ですが、私は小さい頃、いわゆるいじめっ子でした」

「あなたが?」

「はい。この地域は土地柄、親の仕事の関係で昔から都心から転校してくる子供が多かったんですが、大体の子はここの学校に馴染めず、孤立してしまうことが多かったんです。

私たち田舎で育った子供たちはそれをいいことに、都会から来た子たちを目の敵にして、陰湿ないじめをしてしまっていました」

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「何でそんなことを?」

「都会の子に対して嫉妬心というか、コンプレックスがあったんです。でもそれぐらいですよ。大した理由なんてありません。子ども特有の残酷さというか、無垢な悪意というか」

「そうですか…」

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「そんなある日、また都会から女の子が転校してくることになったんですが…その子も、またいじめの対象でした。

その子は女の子でしたし、暴力こそ振るいませんでしたが、

私たちのことをいつも鋭い視線で睨んできて…私たちは「蛇目ちゃん」と呼んでいました」

「蛇目ちゃん?」

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「蛇は獲物である蛙を捕食する時、睨みつけて獲物を威圧し、捕食することを知っていますか?何かのゲームの技でも「蛇睨み」という技があったと思います。その子の目が蛇の睨みつける目に見ていたことから、私たちは「蛇目ちゃん」と呼んでいたんです」

「はあ…」

「私たちは蛇目ちゃんをかなり気味悪がっていて、陰湿なイジメをしてしまっていました」

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「蛇目ちゃーん、蛇目ちゃーん?何食べてるの?」

「きっとカエルだよ!蛇はカエルが大好物だからね!」

「どう、カエル美味しい?蛇目ちゃん!」

毎日のように、そんな事を言っていました。

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子供って残酷だな…と私は思っていました。

「しかし、蛇目ちゃんはそんな仕打ちを受けても、学校を休んだりはしませんでした。

きっと休んだり不登校になってしまったら、私たちに負けたということを認めてしまうことになるとか、そう考えていたんじゃないでしょうか。

そしてある日、私たちはついに、してはいけないことをしてしまったんです」

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ゴクリ。私は唾を飲み込みました。

「男の子たちに頼んで、近所の川から大量のカエルたちを捕まえてきて、それを彼女のランドセルに入れて脅かすことにしたんです。私たちのグループの中にはそれはやり過ぎだと止める子もいたんですが、私たちは聞く耳をもたず、決行してしまいました」

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「きゃああああああ!!!」

「休み時間、知らずにランドセルを空けた彼女はカエルの大群に悲鳴を上げ、教室中に逃げ出したカエルたちが飛び跳ねて大変なことになってしまいました。

当然私たちいじめっ子グループは先生からはきつくお灸を据えられ報いを受けましたけど、この事がとどめを刺してしまったのか、彼女は学校に来なくなってしまったんです。

そして、それから数日後の事でした」

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「どうなったんですか?」

「彼女は、自ら道路に飛び込み自殺してしまったんです」

「そんな…」

「それで初めて、私たちは自分たちがした行動の愚かさに気付いたんです。でも気付くのが遅すぎたために、何も悪くないあの子を、死に追いやってしまった…」

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「そういえば、祐希ちゃんは昨日お誕生日…11歳ですよね?」

「ええ、彼女がこの世を去ったのも同じ11歳でした。きっと彼女は私たちのことが許せなくて、娘に呪いをかけているんです。でも、どうしたらいいかわからなくて…」

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「美月さん、それなら…お祓いをしてみませんか?」

「お祓い…?ああ、でもお祓いってお高いんじゃ…?」

「探してみましょう!祐希ちゃんを助けなきゃ!」

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私たちは大急ぎで、スマホでお祓いをしてくれる会社や人を探しました。

でも引っかかるものは、何十万も何百万もする高額なものばかり…

「美月さん!これすごいですよ!完全成果報酬、しかもたった5000円!」

「うーん…明らかに胡散臭いですけど…贅沢は言ってられませんね」

私たちは、その業者さんを呼ぶことにしました。

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「お待たせしました!私霊能力者の堀川と申します」

わ…若い…!しかもイケメン…!私は驚愕してしまいました。

「凛先生…?」

「あ!ごめんなさい!イメージと全然違ってびっくりしちゃって」

「ははは、よく言われますよ。でもこれでもちゃんと修行をしていて、腕には自信がありますからご安心ください」

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「うーん…なるほど…」

「どうでしたか?」

堀川さんは祐希ちゃんの額あたりに手をかざし、祐希ちゃんに憑依している霊の正体を読み取ったみたいでした。

「お察しの通り、娘さんには昔あなたがいじめた女の子の霊が取り憑いています。それも、かなり強い怨念です」

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「やはり…それで、娘は助かるんですか!?」

「私が出来ることは、彼女を娘さんの身体から追い出すことです。そのあとは美月さん、貴方次第です」

「私が!?どうすれば…」

「彼女に心から、謝罪の気持ちを伝えて怒りを鎮めるんです。彼女が貴方を許せば、娘さんを解放するはずです」

「なるほど…」

「美月さん、頑張りましょう。私も一緒に伝えてみます」

「わかり…ました」

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「では、初めますよ。宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光…」

堀川さんが念仏を唱え出しました。

すると、部屋の電気が消え、周りのものがガタガタと動き出しました。

「何が起こってるんですか!?」

看護師さんがパニックになり、血相を変えて部屋に入ってきました。

「すみません、すぐ治りますから、少しだけ待ってください!」

堀川さんの念仏が止まらないよう、看護師さんに説明しました。

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そして、しばらくして…

祐希ちゃんの上に、半透明の女の子の姿が徐々に浮かび上がってきました。

間違いない、あの女の子です。

「美月さん!今です!早く!」

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「ごめん、私が悪かった!許して!」

しかし、女の子は怒りの形相で美月さんを睨みつけています。

「私のことをいくら恨んでも構わない!でも娘には罪はないの!私の人生をかけて、この子を絶対にいじめなんかしない優しい子に育ててみせるから!だからお願い!娘を…祐希をもとに戻して!菜緒ちゃん!!!」

その子、菜緒ちゃんっていう名前だったんだ。

初めて美月さんは、彼女の名前を呼びました。

「菜緒ちゃん!美月さんは反省してるよ!だからお願い!美月さんを許して、祐希ちゃんを元に戻して!」

一緒に私も叫びました!

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「ありがとう、やっと名前を呼んでくれたね、美月ちゃん」

怪奇現象はいつのまにかおさまり、私たちの目の前に1人の女の人が立っていました。

「あなた…菜緒ちゃんなの?」

「そうだよ」

さっきの恐ろしい形相とは打って変わって、大人の姿になった菜緒ちゃんは優しい笑顔を浮かべていました。

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「はあ…はあ…はあ…成功したようですね」

「堀川さん、しっかり!」

憔悴し切った堀川さんを、私は支えました。

「菜緒ちゃんって、小さい女の子ですよね?なんで大人に?」

「あれはおそらく、彼女が思い描いていた大人の自分です。霊は感情により、自分が憧れとする姿に自分の姿形を変えることができるのです」

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「菜緒ちゃん、ごめんね…私は内心じゃ、まだあなたを逆恨みしてたのかも…だからずっと、名前を言えなかった…」

「もういいよ、美月ちゃんの気持ち、伝わったから。そのかわり約束だからね。祐希ちゃんを優しい子に育てて。私みたいな子が、もう出ないように」

「うん、約束するよ!」

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そう言うと、菜緒ちゃんの霊はゆっくりと消えていきました。

「ママ、どうしたの?」

正気を取り戻した祐希ちゃんが、目を覚ましました。

「祐希〜!!!本当に良かった!!!」

美月さんは、祐希ちゃんを抱きしめました。

私もとても、幸せな気持ちになりました。

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一安心して、私は病院から自宅に帰ろうとしていました。

その途中、女の子が道にしゃがみこんでいるのを見つけました。

何してるのかな?

私はその子に近つきました。

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「ひいっ!!!」

私は絶句しました。

女の子は、ヒキガエルを口に入れようとしていたのです。

「あ、あなた何してるの!?」

「ヒキガエルを食べるんだよ。蛇はヒキガエルが大好きなんだ」

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ど、どうして…!?呪いは解いたはず…

私は訳がわかりませんでしたが、恐ろしいことに気付きました。

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そ、そうだ…思い出した…

菜緒ちゃんを虐めていたのは、美月さん1人だけじゃなかった…

全員への復讐が終わるまで、この呪いは終わらない…!

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