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あるところに、怖がったことのない男がいました。
一度でいいから怖がってみたいと思った男は旅に出ましたが、いかつい男たちにすごまれても、幽霊に出会っても、死体を見ても怖いとは思いませんでした。
無謀から来る勇敢さから、男はお城にかけられた魔法を解き、その褒美として王女を嫁にもらいます。
しかし、義父の跡を襲い王となってもなお、男は口癖のように「一度でいいからぞっとしたいもんだ」と言い続けました。
王の口癖に辟易としている王妃を見かねて、側近の侍女が
「私が王様に、ぞっとするということを教えて差し上げましょう」と言いました。
侍女は、小川からどじょうと水を汲んで来て、寝ている王にぶちまけました。
王は冷たさに飛び起きて、
「ああ、ぞっとする。これではじめてわかったよ、ぞっとするということが」と叫びました。
作者退会会員