短編2
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球体

酔っ払った父が語った話だ。

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高校生だった父はある日、仲間数人と共に夜の学校へと肝試しに行った。

予め部室棟の窓の鍵を開けておき、そこから中に入って1階から順に探索していった。

夜の学校は不気味だったが、満月の明かりが強くそれほど恐怖心は感じなかったと言う。

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最上階である4階の探索を済ませ、屋上は封鎖されていたため階段を降りて部室棟まで戻ってきた。

その時ふと窓の外に動く物を感じ、学校の外周の小道に目を向けると、そこに異様な物がいたのだと言う。

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月明かりに照らされていたのは、自分の身長以上はあろうかというまん丸い球体と、それを後ろから小さな槌の様な物で叩きながら歩く小さい子供。

子供が槌で叩くたびに球体の表面におぞましい苦痛に歪んだ顔の様な物が表れては消える。

叩かれる度に顔は声にならない叫びを上げようとするが、音にならずただ空気を激しく振動させ、その場に居た全員の肌を電気のようにビリビリと刺激する。

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それから目を離すことができず唖然と見ていると、父は浮かんだ顔の一つと目があった気がしたのだと言う。

目があった途端、その歪んだ顔がさらに大きく歪み、強烈な悪意、邪気の様な物をこちらに向けてきたのが分かって、足をガクガク振るわせながらその場で立ち尽くすことしか出来なかったそうだ。

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すると、子供がより一層強く球体を叩いた。

その途端、その顔が紙を小さく丸めるかの様にグシャグシャに圧縮され、あっという間に球体の中に沈んでいったそうだ。

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その話を聞いた僕は、その球体の正体は何だったのかと率直に聞いてみた。すると父は、

「あの子供は多分地獄の番人で、罪人に罰を与える鬼の様な存在なんだろう」

「きっとあの球体には生前罪を犯した者達が詰め込まれていて、それらにひたすら激しい苦痛を与え続け、逃げることも叫ぶことさえも出来ない。そう言う罰なんだろう」

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「だからお前は絶対に人の道を外れた様なことするんじゃないぞ」と笑いながら言った。

酔っ払っている父の顔は血の気が引いた様に白く、無理やり笑っている様にしか見えなかった。

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