短編2
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爪でコツコツ

今まさに俺の部屋で起こっている話です。

オチはないけど、住んでいる身としてはかなり怖いので書き込みます。

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この部屋に住み始めたのは一昨年の10月頃。

転勤で広島に越してきて、会社が借り上げているこのアパートに住み始めました。

元々の家賃は4万でしたが、家賃補助のおかげで月1万で住めることになりました。

4階建で1階は駐車場、2〜4階に4部屋ずつあって、俺の部屋は4階の4号室でした。

他の部屋は8畳なのに俺の部屋だけ7畳で、その分幅30 cmくらいの細長いベランダがありました。

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住み始めて一週間経った頃でしょうか。

夜勤が終わり、22時ごろ帰宅してシャワーを済ませ、スーパーで買った惣菜でビールを飲んでいました。

すると、窓の方から「コツコツ」という音が聞こえてきました。

「コッ!コッ!」と一際大きな音で鳴ることもあれば、「ココココココココココ」とまるでフルオートのエアガンで撃っているかのような音で鳴ることもありました。

最初は虫が当たっているのかなと思い、カーテンを開けて窓の外の様子を確認しました。

しかし、少なくとも窓を鳴らせるような大きさの虫はいませんでした。

窓を開けてベランダの様子を見ましたが、ベランダには何も置いていないので、窓に当たるようなものは何も見つけられませんでした。

そこでいよいよ、人のイタズラかという発想に至りました。

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真っ先にエアガンを疑いましたが、音の質からして違うという結論に至りました。

小さい頃の記憶だと、BB弾の音はもっと軽く、「カチ」とか「チン」とかいう音だったはずです。

今目の前で鳴っているこの音はもう少し重く、響かない、音が止んだ時には幻聴だったのではないかと疑うような、空間に染み入るような音でした。

ではこの音は一体、何によって、どのようにして出ているのか。

ふと嫌な予感がして、後頭部に鳥肌が立つのを感じながら、自分の爪で窓を叩いてみました。

「コツコツ」

同じ音がしました。

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この音は昼夜問わず、季節問わず、そしてこれを書いている今もずっと鳴り続けています。

住み始めた当初は枕元に包丁を置いて寝ていましたが、あれから1年半経っても音以外何もないので、取り敢えず住み続けています。

Concrete
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