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短編2
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ばあちゃん

私が中学生だった頃。

家族で旅行に行った時の話。

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夜10時頃に兵庫の家を出て、車で石川に向かった。

途中SAで休憩したりなんかして、深夜に出かけるということにすごくワクワクしたのを覚えている。

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途中車内で仮眠を挟んで、観光しつつ旅館に着いたのが15時前。

料理を食べたり卓球したりゲーセンに行ったりで、あっという間に時間が過ぎた。

夜10時頃に皆寝た。

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夜中に目が覚めた。

トイレに行きたいことに気づいて、部屋のトイレに行った。

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トイレの扉を開けた。

一瞬、ばあちゃんの匂いがした。

ばあちゃんの家に遊びに行った時を思い出した。

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トイレの電気をつけた。

一瞬、電球の明滅の隙間に青紫の光が差し、便器に腰掛けた人影を映し出した。

顔は見えなかったが、ばあちゃんだと思った。

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そこからどうしたのか、気づいたら布団の中で目が覚めた。

久しぶりにばあちゃんに会いに行こうと思った。

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家に帰り、母が夕飯の準備を始めた。

今晩はすき焼きだと言った。

父はそれまで祭りを見に行こうと私を誘った。

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道中、父がばあちゃんも連れて行こうと言い出した。

以前ばあちゃんのことで夫婦喧嘩があってから、父はばあちゃんを避けるようになっていたから、意外だと思った。

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アパートの木の階段を登り、部屋のチャイムを鳴らす。

もう一度。

部屋の鍵は開いていたから構わず扉を開ける。

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ばあちゃんの匂いがする。

電気をつける。

ユニットバスの扉に挟まるようにして倒れているばあちゃんを映し出す。

本当に眠っているかのような顔をしていたが、皮膚は青白かった。

ああ、もうだめなんだと子供ながらに思った。

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私はアパートの木の階段に座り込んで泣いていた。

母は泣きながら、ばあちゃんにごめんねごめんねと謝っていた。

父は救急車の人と何か話をしていた。

死後間もないとのことだった。

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救急車の人が私に「びっくりしたね」と声をかけた。

びっくりしたから泣いているんじゃ無い。

昔うちに夕飯を食べに来ていた事、一緒に外食した事、それが二度と出来ない事に泣いているんだ。

私はただ泣いていることしかできなかった。

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あれから10年、ばあちゃんの匂いがすることはない。

きっと、天国に行く前に最後の挨拶をしに来たんだろうと思う。

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