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短編2
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不気味な牛

数十年前、私は友人とともにとある牧場を訪れた。都会の騒がしさに疲れきっていた私たちは束の間の穏やかな時間を堪能した。私たちが見学したのは乳牛の飼育場だった。

牛たちは賢そうな顔をしていた。その中で一匹の子牛が少し異様なほど、友人に懐いた。子牛は牛の群れから離れてまで、友人についてくるのだ。その子牛をかわいいと思った友人は密かに子牛に名前をつけていた。

竜太郎。

その子牛には竜のような形をした黒い模様がついていたからだ。

友人はその子牛と別れるのを名残惜しそうにしていたが、そこに留まるわけにもいかないので、私は友人と子牛を半ば引き剥がすような形で引っ張った。

その夜、私たちは民宿に泊まった。なんとなく雰囲気のある民宿で私はとても満足していた。お風呂から上がると、友人は先に眠っていた。よほど疲れていたのだろう。女将さんに敷いてもらった布団には入らず、座布団を枕にして横になっていた。そんな固いところで寝ては身体を痛めるだろう。

そう思った私は、友人を揺り起こそうとした。

「……竜太郎。竜太郎」

友人の肩に触れようとしたとき、友人が苦しげに呟いた。

「あぁぁ……!!!首が…!!首が…!!」

友人は自分の首をかきむしった。強く掻いているせいか、皮膚がどんどん赤くなる。

「おい!しっかりしろ!」

私は友人の異様な様子に驚いて肩を強くつかんだ。

「……はっ!竜太郎!」

友人は子牛につけた名前を叫びながら飛び起きた。

友人は、子牛が彼の首を口で掴んで髪を草を啄むようにむしっている夢をみたらしい。

「本当に首が痛くてさ……」

次の日、友人の首には竜のような形の黒いアザが残っていた。

友人は夢の中で、子牛が人の顔をして笑っていたのが心底、不気味だったという。

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