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これは私が独り暮らしをしていた頃、
当時住んでいたアパートでの話。
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それは夏の終わりの、
蒸し暑い夜のこと。
「ずるずる・・・」
と何かが室内を這いずるような
音と気配に目を覚ましました。
気配の正体を探そうとしましたが、
動くことができませんでした。
金縛りです。
「ずるり・・・ずるり・・・」
音がするたびに
その音は大きく
(近く、ではありません)
気配は濃くなっていくのが
感じられました。
そしてそれに伴い、
「それ」の姿がはっきりとしていきます。
それは長い黒髪の女性でした。
ただしその腹から下は蛇。
人間の胴ほどの太さの蛇体が
延々とのびていて、
その先は半透明に薄れて消えていました。
「彼女」はしばらくそのまま
上体をゆらゆらさせながら
爬虫類そのものの眼差しで
こちらを見ていましたが、
やがてその姿は薄れて消えました。
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5年間生活したその部屋には
度々招かれざる異形が
やってきました。
他の「客」の話は、
またの機会に・・・
作者塵