普通に考えたら非現実的な話なんだけどさ、妙にリアルな夢を見たから聞いてほしい。
separator
あれは、先月のある日の夜見てた夢。俺は観光か何かでとある山村の集落に来ていた。そこは、山の中だけあって田んぼとか畑とかばっかりで面白味が無かった。来た理由は、確か独学で民間信仰やあまり伝わってない祭りとかの研究だった気がする。俺の他にも観光客が居てその1人のおっさんと仲良くなった。おっさんは確かルポライターとかで何でもこの村に他の村に無いようなタブーの祭りがあるとかなんとかで。その日は何もなく1日が過ぎていったんだけど、二日目からおかしくなった。
separator
次の日の朝、起きて部屋から出てみるとおっさんがキョロキョロしていた。何かあったのかと聞いてみると、他の観光客の何人かが荷物を置いて忽然と居なくなったらしい。何でも朝起きてトイレに行って帰ってくるときに煩かったイビキが全く聴こえなくなっていた。最初は起きたのかなって思ってたらしいんだけど、異様に静かだったとか。起きたならあくびの声や畳を踏みしめる音、話し声が聴こえてくるはずだろうけどその音すら聴こえず更に玄関のげた箱を見ると靴も起きっぱなし。民宿の中をうろうろしてみたけどその客以外にもその宿の店主すら居なかったとか。
separator
俺が「たまたまでしょ~」って言うけどおっさんは「始まったかもしれない」と深刻そうに言う。で、二人で話し込んで居ると店主が戻ってきてこう言うんだ。
separator
「いや~、君達運が良いねぇ。実は今日さこの村で祭りがあるんだよ。いや~本当に運が良い。是非ともこの祭りに参加していってよ。余所者が居ると大いに喜ばれる。良い思い出にもなると思うよ。さぁ、早く早く」
と言われて誘われた。俺はその時はテンションが上がっていたがおっさんだけ険しい表情をしていたのが気になった。取り敢えず部屋に戻って小さい鞄に財布・携帯・クマ避け用スプレー・地図等を入れて民宿を出た。丁度おっさんも似たような格好をして外に出てきた。民宿の主人が言うには山の上の神社に皆集まってるから早く行きなさいと急かしていた。神社に着くと村の人達や観光客がすでに集まっていた。村長らしき人物が声を張り上げてこう言った。
separator
「よーし、祭りを始めるぞ。今回は観光客が居るから盛大にな。よし、まずこれを食べてもらおう」
と言って妙な肉を差し出してきた。変に形が崩れていて変な臭いがして。村人達は美味しそうにムシャムシャ食べているのだが俺はどうも気が乗らずまたおっさんも手をつけずに食べる降りをして皿に料理を置いていたので俺も真似をして食べる降りをして料理を置いていた。暫くして村長が「逃げ追いをする」と言い出して料理を片付けて観光客と村人を分けた。
separator
で、村長が俺達観光客に「悪いが今から逃げ追いをする。いわば鬼ごっこ的なもんでな。悪いが追われる側になってくれ」と言って白いはちまきを渡してきた。成る程、山の中で鬼ごっこか。これは大変そうだなとおっさんを見るとおっさんの表情が険しい。はちまきを着けて村人側に向き直ると村人達の顔が気味が悪いほど笑顔になっているのに気付く。ただ目が全く笑っていないのが妙にうすら寒く感じるのだった。そして、村長が言う。
separator
「よし、逃げてくれ。五分したら追いかける」と言って開始の合図を告げる。俺は全速力で山の中を駆ける。どこに行けば良いのか分からないが取り敢えず全速力で逃げているとおっさんに呼び止められた。
「坊主、ちょっといいか?」
「なんだよ、おっさん。鬼ごっこの最中だろ?もっと遠くに逃げねぇと行けねぇだろうに」
「逃げるのは賛成だが、もうこの村に近寄るのは辞めような」
「は?どういうことだよ」
「この村は代々食人を行ってきたタブーの村なんだよ。俺は好奇心感覚で来てみたんだが、この村の人間は俺達観光客を食べ物を見るような目で見てきた。そして今日の朝、それが確信に変わった。台所で見掛けなかった人達のバラバラ遺体があったんだ。肉は削ぎ落とされ内臓は血抜きされて置いてあった。それを見ただけで充分だ。この村はヤバい。早く逃げないと俺達もこいつらの餌に成り下がっちまう」
separator
正直に言うと胡散臭い感じだった。食人?バラバラ遺体?どこ映画だと鼻で笑ってやりたかったがこの逃げ追いが始まる前に村人が俺達に向けた視線は明らかにおかしかったのはよく分かる。もし、おっさんの言った通りのならこの村は狂いすぎている。そして、かなりヤバイ所だということだ。そうこうしているうちに右の茂みの奥からけたたましい絶叫が轟く。おっさんと俺は身を低くして近づいて行くとそこには、足を斧で斬られて切断された後に両手を縛られた状態でそのままズルズル引き摺られていく他の観光客の姿が目に止まった。
捕まった人は、両手を斬られ腹を裂かれ内蔵を引き抜かれて巨大なまな板のようなものに置かれて柳包丁で肉を削ぎ落とされ料理されていく。その光景はまさに狂気そのものだった。
separator
一瞬呼吸が止まった。そして、悲鳴が出そうになるとおっさんが口を塞いでくれた。ここで、声を出すのは自殺に近い。おっさんと目を合わせて音を立てずになるべく慎重にその場を離れた。なるべく森の奥深くまで走る。その数百メートル離れているだろうか、うっすらだがまた絶叫が響く。が、それに合わせて「ぐわぁー!!」という声も。気になってチラッと見ると村人を投げ飛ばしてる人や鎌や斧などを奪って斬りつけたりおどしたりする人の姿チラホラ見掛けた。
separator
おっさんは「ほぅ、やるじゃねぇか。やられっぱなしとはいかんな。なぁ、俺達も捕まりかけたらあぁやろう」と微笑を浮かべた。そうこうしてるうちに妙な道祖神っていうのかな、変な地蔵があったんだよ。その地蔵の上に板で鬼が人を追い掛け、捕まえて、料理して食べるという絵が書かれていた。鬼の背丈は人と同じくらいで複数人いる。この状況と似ていて鳥肌がたったがおっさんは道祖神を無視してそのまま奥に逃げようとする。
nextpage
でも、俺は妙な感覚に襲われて咄嗟に「おっさん!!右だ、右に逃げよう」と言って右側に全力で走り出した。おっさんは「はぁ?右?」と言っていたが俺のあとに着いてきた。そのまま全力で数分は走っただろうか。見慣れたアスファルトの道路が遠くに見えてきた。助かったと思ったそのとき、
separator
「…待…あ…て……待…て」というがらがら声のようで人の声じゃない声がして振り向くと村人が鍬やら鎌やらを持って追い掛けてきたのだがその顔がもう人のソレではなかったた。肉は爛れて骨が剥き出しに目は複数あり額に大小様々な角が生えて口はどす黒く見えた。恐怖で息が詰まるがそのままの勢いでアスファルト道路に転がりながらもなんとか道路に出た。息を切らしつつすぐにその場所から離れないといけないと思ったときにバチンと大きな音がなった。
separator
振り向くと奴らは明らかに苦々しいという顔付きでこっちを睨んでいた。そのまま飛び掛かってきそうで尻餅を着いたが奴らは山中から出てこない。おっさんが言う。「あいつら、まさかそこから出られないのか」俺がおっさんをチラッと見る。すると、おっさんは「おそらくもう大丈夫だ。置いてきた荷物は惜しいが命には変えられん。これで良い」と言っていた。村人はその顔のまま森の奥深くに戻っていった。ふと、村人の足下を見ると奇妙な顔をした猿がこちらを凝視していた。が、そのまますぅーと薄くなって消えていった。逃げるときに見た右を指差していた道祖神に似ていた。
nextpage
ふと、近くをワゴン車が通りかかった。俺は手を上げてワゴン車を止めてもらいそのまま街まで送ってもらうことになった。疲れがあってからそのまま眠りについた。
separator
で、目が覚めたら家で寝ていたという落ちだ。汗ビッショリで起きていた。実体験ではなく夢の話だから怖さ半減と思うかも知れないが個人的には結構怖かったのでカキコしてみた話。
作者赤坂の燈籠