短編2
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黒猿橋

デリバリー配達員の人から聞いた話です。

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夜間配送の時に俺が必ず避ける橋がある。

有名クレーマーの居るエリアとか開かずの踏切・信号。

俺達配達員にとって避けたいものは色々あるがあの橋だけは別格。

必ず避ける。

真夜中の荒川や隅田川に掛かる橋なんだが詳しい場所は特定出来ない。

それは毎回微妙に出現場所が変わるからだ。

通称「黒猿橋」と言われている。

俺はピックアップ依頼者の名前や住所が「黒猿」とか「黒猿橋」だったら必ず配送拒否する。

川の近いエリアではなるべく稼働しない。

ちなみに黒猿橋は正式な住所地名ではない。

と言うかマップアプリでいくら確認してもどこにも存在していない橋だ。

確かに掛かっているのに表示されないこの世に存在しない橋。

しかし新人の中にはSNSで警告が回って来ても単にまだマップに反映されていないだけの表示ミスだと思ってる奴は多い。

俺もそうだった。

「怖ぇぇwこんなとこに橋なんてあったか?まぁいいや得した気分だわw」

そんな事を思いながら橋を渡る。

しかし黒猿橋を渡ると正しい配送目的地まで辿り着けなくなる。

目的地が空き地や廃墟だったとかスマホが延々再起動を繰り返したりしたとかいうのはまだまだ可愛いケースで、俺の場合は墓地だった。

そんなの単なるユーザーのイタズラだろ?

と新人は言う。

俺も怪談の類だと思ってた。

体験してみりゃ分かるよ。

お前らも4日間出口の無い馬鹿デカイ墓地に閉じ込められてみりゃいい。

遠くに見えるビルの所まで何キロ走っても辿り着けない。

よじ登る事を許さないツルツルの断崖絶壁が何キロも続くシュールな光景。

その断崖絶壁の上にも墓地がある。

文字通り配達員の墓場だ。

半分発狂してお供え物を貪り食ってる所をお巡りさんに逮捕されてみりゃ俺の気持ちが分かるよ。

一応その墓地はスマホ撮影したが戻ったら全部真っ黒になってたな。

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